軍服の色
あれから、桜木は戦闘訓練の内容やそれぞれの業務に口出すことが増えた。
結果、戦闘訓練の内容はレベルが上がり、それぞれの意識も変わっていったのだった。
特に、兵士一人一人の力を分析した分析力には、話し合いに参加していたメンバー全員が驚愕した。
夕飯時。
「やっぱり渚は中将だったかー
しかも、来年は大将。
ますます雲の上の存在って感じ」
植村がため息混じりに言った。
「まだ、決まったわけじゃないけどね」
淡々と答える桜木。
「正直にさ、嬉しい?
ねぇ、嬉しい?」
「嬉しくはないよ」
「なんで?」
中将でさえ憧れなのに、大将なんて言ったら更に憧れだ。
そんな地位に立つのに嬉しくないなんて、みなには不思議で仕方なかった。
「“なんで?”って、本当に聞いてる?
一華、大将船出身だよね?」
桜木は大真面目に聞き返した。
「うん、桐生さん…」
「まっ、話さないか…」
桜木は食事を再開した。
「えっ、ちょっと待ってよ。話してよ」
「いいよ、知らなくて」
「教えてください!」
指宿も食いついた。
「なんで、大将服が黒だか知ってる?」
桜木は仕方なく話し始めた。
「知らない」
「知りません」
「既に死んだ命。
死んでも海軍のために働き続けろって意味」
リアンでは黒は死者が身につける色だった。
「ついでに言うと、大将服が黒で中将服が臙脂なのは、血の色を目立たせなくするため。
大将・中将の戦死率は他の階級より高い。
でも、無様な死に様は見せられない。
だから、血の色が目立たない色を採用した。
ちなみに、元々は一律白かった軍服が臙脂や黒に染まるまで悪人たちを殺し続けたからという説もある。
中将や大将になりたくて頑張るのはいいことだと思うけど、なるには相応の覚悟が求められる。
まっ、あくまで昔話だけどね」
みな言葉を失っていた。
「知っちゃったついでに、もう一つ怖い話聞く?」
桜木はニヤッと笑った。
「いえ…結構です」
植村の顔はひきつっていた。
「知りたいです!」
甲上が手を挙げた。
純粋に興味があったのだ。
桜木は甲上に近づき、他のみなには聞こえないように耳元で話し始めた。
「昔は負けどころか引き分けでも帰ってくることが許されなかった。
よって、中将昇進時に自決ようの銃がお祝いとして渡されたそうです」
だから桜木は、あの時、中将に昇進した時から覚悟はできてると言ったのだ。
「ねぇ、その話って他にもあるの?」
植村が一応聞いてみた。
「あるよ。
でも、これ以上は食事にならなくなる内容だから、やめとくよ」
桜木が笑顔で答えた。
「そう…なんだ…」
「この話しは中将以上には有名な話なのですか?」
甲上が聞く。
「中将以上じゃなくても知ってる人は知ってるんじゃないかな?
りょうちゃんもシンさんも知ってるし…」
桜木があまい考えや、ふざけた考えで中将の地位にいるわけではないことが甲上にわかった話であった。




