残りの海兵人生
本部に戻る前、桜木のわがままで第一支部に行くことになった。
向かう間、桜木は故意に甲上から距離を取っている様子が伺えた。
それを察してか、甲上も桜木に話しかけることはなかった。
第一支部に着くと、薪少将が待っていた。
「シンさん、大切な話があります」
桜木の真面目なスタートに一瞬で空気は変わった。
支部の中に入るとその緊張感は更に増した。
「薪少将、あなたには中将になって頂く。
中将になって本部で後輩たちの育成をしてください。
藍沢中将がいなくなる来年から、本部の育成力は確実に落ちる。
あなたなら、それを埋められる。
だから…」
「お断りします」
桜木は顔をしかめたが、薪の言い分を聞く気はある様子だった。
「残りの海兵人生、私は私のやりたいことに使う」
「やりたいこと?」
「あなたを支えることです。
あなたのことだから、もう大将昇進の話に承諾したんでしょう?
誰も助けてくれない中でも生き残ってきたあなたにずっと興味があった。
本部に戻ることを決めたのは、あなたを支えてみたかったからだ。
私はあなたを支える。
どうかじじいのわがままを聞き入れてください」
桜木は何も言わなかった。
それでもきっと、嬉しいのだろうと甲上は推察した。
その後、引き継ぎのため城島少将率いる一行が強鷲号にやってきた。
「中将の前ではあまり言いたくないが、女が船長なんてやるから、海賊の一人の居場所も見つけられないんじゃないのか?
女はこれだから…」
それは明らかに、もう国外へ逃亡した可能性の高い海賊を追うと任務を任された八つ当たりだった。
それでも植村は反応してしまった。
それを笑顔で止める桜木。
城島少将が一旦、自分の船に戻っている間、桜木は植村を宥めた。
「上司相手に突っ掛かっちゃダメだよ、一華~」
「バカにされたんだよ。
あんたみたいに、ふざけててオドケタ人間が女性初の中将になんてなるから、女海兵がバカにされるんだよ!」
怒りのあまり、思ってもないことを口にしてしまった。
「一華みたいに、真面目に男に対抗意識燃やす人間がいるから、女はって、比べれるんだよ」
桜木は笑顔で返した。
植村の怒りはその言葉で冷めてしまった。




