副船長の役目
南国境警備隊より、植村が重症でシルキナウス国から帰ってきたため、保護していると連絡が入った。
その連絡で誰よりも驚愕したのが、桜木だった。
「なんで…?
…重症って、意識は?」
「ギリギリあるそうです」
指宿が答える。
その言葉で桜木は落ち着きを取り戻した。
「なぜ…なぜ、そのようなことになったのか教えてください」
しかし、甲上含め、船員たちは取り乱していた。
「それは出来ない」
桜木は冷静に答えた。
「お願いします、教えてください」
今度、頭を下げたのは伊竜だった。
それでも、頑として譲らない桜木に食い下がる伊竜。
最後には土下座までしてしまった。
こんな伊竜を見るのは誰もが初めてだった。
「いつも、冷静な君らしくないね。
どうしちゃたの?」
からかうよに言う桜木。
瞬時に言葉が出てこない伊竜。
間に入ろうとした甲上を桜木は睨み付けた。
「自分は…自分は正直、副船長でいることにずっと戸惑ってきました。
優秀だと言われても、自信もない。
実際、船長不在の兵の士気を維持することも出来ない。
それでも、植村船長に何かあるのだけは、副船長として嫌なんです。
副船長の役目なんてわかりません。
ですが、船長だけは守りたいんです。
だから、教えてください。
お願い致します」
伊竜の涙で床が濡れていた。
桜木は近づき、ゆっくりしゃがんだ。
「なら、代わりに命、かけてみるか?」
桜木の低い声が響く。
伊竜は驚いた。
「…はい」
それでもなんとか返事をした。
「やっとお前が副船長に見えたよ」
そう言って立ち上がると桜木は話を続けた。
桜木は今回の植村の特任業務は南国境警備隊への聞き込みだけだと思っていたらしい。
しかし、シルキナウス国に行っていたということは、そこの裏町で捜索・聞き込みを行うことも業務で、理由は不明だが攻撃されたのだろうとのことだった。
「伊竜、お前間違ってるからね。
副船長は船長が機能不全に陥った時に、代わりに船長にならなきゃいけない。
お前まで命かけてどうすんの?」
桜木はニヤッと笑い、伊竜の額にデコピンした。
すごい音がした。
「いった!…すいません…」
この会話で少し、みなも和んだ様子だった。
南国境警備局へ向かうと、医務室で包帯姿で眠っている植村がいた。
起きるのを待って話を聞くと、聞き込みをしていたところ、急に後ろから複数名に襲われたという。
顔を見ているが誰だかわからないとのことだった。
国境警備隊の方々へのお礼を済ませ、強鷲号に乗り込む。
誰よりも安心した顔をしていたのは伊竜だった。
その横で、複雑な顔をしている桜木を甲上は見ていた。




