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海の守り人~私は私のやり方でこの海を守る~  作者: アオサマ
ドーナツエンドの事件編
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いいよ

「わかった!真面目にやる」

と桜木はどこかに電話をし始める。

全員の頭の上にはてなマークがいくつも浮かんでいた。

「…もしもし?桜木だけど船長いる?

あっ、ミドリンおひさー

これから強鷲号、任務の関係で激戦区に入るんだ。

だから、“私たちもいるよ”っていうお知らせと、あと、なんかないかな~と思って。

あっ、ちょっと待って、船長に替わるから」

と言って桜木は受話器を植村に渡した。

全く流れをつかめず、混乱する植村。

「えっ?誰?」

「ミドリンだよ」

桜木は当たり前のように言った。

「み…ミドリン?

まさかだけど…緑川中将のこと?」

「他に誰がいるの?」

緑川中将。

長年、リジュームからケイセイ区域を担当している。

桜木のつけたあだ名とは全く別の印象の人間で、良くも悪くも船員・部下と必要以上の関わりをしない。沈着冷静。海兵にいる男連中の中で珍しい、丁寧な話し方と後ろで束ねられるほど長い髪が印象的な人。

桜木との接点は、1年間だけ緑川船にいた記録があるというのと、緑川も宗谷派の人間で、そこでの関係も予想できる。

植村は緑川との話を終え、電話を切ると大きく息を吐いた。

「ミドリンなんて?」

「現状教えて下さって、あと、何かあれば連絡下さるそうです」

植村は疲弊した様子で椅子に座った。

心の準備なく中将と話せば、一般的にはこうなる。

「良かったね。

これで、すぐにミドリンと連絡取り合えるね」

そこまで言うと桜木は笑顔のまま甲上を見た。

「ね、真面目でしょ?」

甲上含めみんなが呆気に取られていた。


午後。

指宿はあることを試したくなった。

桐生の話していた“練習相手になって下さい”と言えば、練習に付き合ってもらえるということ。

桜木は強鷲号に来てから指導どころか、参加すらしていない。

近くでは見ていることはよくあるが…。

指宿は「やだ」「却下」などの言葉が返ってくると思っていた。そして、それは大半の人間の予想でも有った。

しかし、桜木はいつも笑顔で

「いいよ!

ちょうど良かった。

私も激戦区に入る前にウォーミングアップしたいと思ってたんだよね」

と返した。

木刀での練習。

これが普段の桜木の戦闘方法では無いことはわかっていたが、それでも、指宿がウォーミングアップの相手にすらならないくらい弱く見えた。

普段の言動には似つかわしくない、基本を元にした動き。

指宿の行動を把握・予測する力。

スピード。

数分の練習を終え、指宿は汗だくだったが、桜木は気持ち良さそうだった。

「よし、これで準備万端!」

「あっ、あの…自分とまた…戦って頂けますか?」

アドバイスを求めても、するようなタイプじゃないと思い、とっさに出た言葉がそれだった。

「いいよ」

桜木は優しい笑みで返した。


夜、見張り台から降りてきた平木が途中で立ち止まる姿が見えた。

甲上は、それが桜木がいつも居る方を見ていることに気づいた。

「桜木中将が気になりますか?」

「…別に…そういうわけでは…」

「よく、桜木中将のこと見てますよね?」

甲上は平木がよく桜木のことをチラチラと見ていることに気づいていた。

「…実は憧れていたんです」

「桜木中将にですか?」

「はい。

私、男兄弟ばっかりの家に育って、しかもみんな頭もよくて運動神経も抜群で…

私だけ浮いてるっていうか除け者みたいで…

でも、ある日知ったんです。

海軍に男性よりも優秀な中将が居るって。

その日から桜木中将は私の憧れになりました。

だから、海兵になりました。

でも、4年前は失望しました。

それでも私バカだから、認めてもらいたくて…」

4年前そう感じた人はいったい何人いたのだろう?

ただでさえ、大勢の人間を把握しなければならない船長という役目は大変だ。

だが、下の人間としては上司に認めてもらいたいと思うのもまた当然だ。


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