最初の事件2
犯行に使った鍵がどうやって入手したのか。
その問題だけが最後に残った。
元帥室。
「予備の鍵が使われたわけでないのなら、間違えなく、大佐以上の中に共犯がいるということでしょう。
昔なら2人に拷問して聞いたところだが、そういうわけにもいかない」
去年、元帥になったとは思えないほど、落ち着いていて、既に元帥としての風格がある桐生。
「我々は、疑わしいのは事件の日にいた3人の大佐うちの誰かか、笠原少将と考えています。
もう1人の少将はキャリア組で、キャリア体制反対派でもないはず。疑わしいとは思えない」
と監査主任。
元から落ち着いた人ではあるが、若干桐生に対抗しているように甲上には見えた。
監査主任は昔は陸軍の兵士だった。
兵士を取り締まる監査官の数が少ないことを知り、監査本部に転職。
厳格で、監査官としての心構えや仕事を甲上は教わった。
中将以上の3人が無実だという確たる証拠は無かったが、昇進試験の解答を盗むことなんかに荷担していたら、海軍は終わりだ。
ましてや、この3人は中将以上の中でも“厳格”で有名。共犯とは考えにくかった。
残ったのは、
笠原少将
卯月大佐
松本大佐
植村一華大佐
の4人。
甲上を含めた4人の監査官がそれぞれの船に配属され、調査することになった。
もちろん、本人たちには告げられず…
こうして、甲上は植村大佐が船長を務める『強鷲号』に配属されることなった。