気を付けろ
甲上は志摩にそれぞれの謎な関係性、自分を見張っていた伊竜について報告した。
そして、志摩もたまたま桜木と笠原の会話を聞いてしまったという。内容からして、甲上が藍沢と笠原と書庫でやり取りをした後と推察できた。
“「藍沢さんが?」
「だいぶ、13年前のことを甲上監査官に…」
真剣な笠原の横で、桜木は聞く耳をあまり持っていない様子で資料を確認していた。
「その様子だと藍沢中将が話してしまわれること、わかってたんですね?」
「まあね。
13年前のこととなると藍沢さん、ちょっと冷静さなくしちゃうし、あの人、結構素直だから…。
それに何を誰が誰に話そうが、別にいいんじゃない?
あの事じゃなければ…」”
「あの事?」
それは志摩にも全く見当がつかなかった。
陸軍、その他キャリア体制に向けた動きが始まっているところでも、今回の海軍のような解答盗難などの馬鹿馬鹿しい事件が起こっている。
また、反対派による暴力沙汰も有り、キャリア体制の内容の見直しを見当するよう各本部からも打診された。
その改革の必要性をわかっていても、改革という言葉には憧れていても、実際は変化を好まない、苦手と感じてしまうのは仕方がないこと。無理に急いで改革を推し進めれば、もっと重大な事件が起きる可能性もある。
海軍内でも反対派の数は少いとは言え、彼らを無視して推し進めていくのは危険。また、推進派や反対はしていない者たちの中にも、部外者である監査本部が介入していることに抵抗を感じている者は多い。
「それでも、この改革を進めなければならない。この国の未来のために…」
「あの、内容の変更はできないのでしょうか?」
甲上の心は揺れていた。
「それは、私も検討しているところだ。
それでも、不適格な人材は排除しなければならない」
「はい」
甲上は改めて覚悟し直さなければいけないと思った。
「たが、桜木中将のことも、すぐに追い出すことは不可能だろう。絡み合った関係性を知らないまま突っ込むのはリスクが高い。
気を付けろ。
我々は、ここにいることを望まれた存在では無いのだからな」




