13年前の罪
次の日、海軍本部のいつもの朝が始まった。
待機兵や帰還している船の兵による朝練。
基本的には参加が義務付けられている。
本部の朝練を久しぶりに見学した甲上は、訓練終えた兵士たちと一緒に朝食のため食堂に向かった。
「やっぱり、料理長の作るご飯は最高ー」
食堂に桜木の声が響き渡っていた。
基本的に中将以上にはどこで会っても敬礼をするが、食堂ではしなくていいことになっている。
食堂内では、階級関係なく過ごすことが許されているのだ。
4年前の事件以降に入軍した兵士たちのほとんどが桜木を見るのが初めてだったためか、つい桜木をじろじろと見ていた。
しかし、甲上にはそれが違和感のある光景には思えなかった。
むしろ、そんな後輩たちを無言や小声で注意する先輩兵たちの姿の方が、正しいとわかっていながらも、違和感を感じずにはいられなかった。
「体動かしてからの方がもっとうまいぞ」
そう言いながら、藍沢は桜木の斜め向かいの席に座った。
食堂の中は基本、自由席。
ただ、中央に位置するそのテーブルだけは、中将以上しか座ることを許されていない。
「大丈夫ですよ。
朝一で走ってきたので」
桜木はニコニコしながら答えた。
藍沢はそういう意味で言ったのではない。
藍沢は呆れていたが、慣れている様子も伺えた。
楽し気で仕事とは全く関係ない話しも飛び交う食堂でも、中央に位置するその一角の様子だけはみんなが気にした。
いつか自分もあそこに。
桜木はどんな人間なのだろう。
そして、藍沢との関係はどうなのだろう。
何の話をしているんだろう。
考えていることは皆違うが、たわいもない会話の合間に、皆がチラチラと見ていた。
「お前が頼んできた資料、用意してある。
あとで、取りに来い」
運ばれてきた食事を食べ始めながら、藍沢が桜木に話す。
「さっすがー、藍沢さん」
桜木はちょうど食べ終えたようだった。
手を合わせ、丁寧に「ご馳走さまでした」と言う。
「もう少し、早く言ってくれると助かるんたがな」
「別に後回しにしてくれたって、いいんですよ」
藍沢が箸を止めた。
「お前の話しは必ず聞く。
お前の頼みは優先的にやる。
そう、あの日から決めたんだ。
13年前に罪を犯した一人として」
「…そうですか」
真剣な藍沢に桜木は素っ気なく返した。
13年前の罪。
甲上にはすぐ思い当たることが無かったし、13年前、桜木はまだ、地位も高くなかったはず。
何かの中心人物にいたとは思えない。
一体どういうことなのか?
食後、甲上は植村を呼び止めた。
しかし、植村は困った。
「あの私、13年前、まだ海兵じゃなかったんですけど…」
甲上はそこまで考えていなかった。
「…ただ…13年前って、当時の元帥が殺された年ですよね?
当時はかなり混乱したって、先輩から聞いたことが有りますけど」
その話しは甲上も聞いたことがある。




