いったい誰が…
こんなにも真面目な話し方ができたのかと思うほど、桜木は落ち着いた口調だった。
「監査官主体で捜査が行われる中、犯人をでっち上げられるポジションにいる人物。
そして、陸軍との内通者であるりょうちゃんを恨んでいる人物」
内通者への恨み、怒りはみんなあるだろう。
笠原少将という犯人を作り出すには、笠原少将より上か近い立場じゃないと無理。
そして、捜査に口を挟める立場…
そんなことを呟きながら考える植村。
「それって、中将以上の中に犯人が…」
伊竜はそこまで言ってやめ、桜木から目を反らした。
中将を目の前にして、ぶん殴られるどころじゃすまない発言。
ただ桜木は呆れながらも優しい顔をしていた。
「証拠は出せないけど、私じゃないよ。
私だったらこんな話、してない」
桜木はみんなから離れ、酒をついで飲み始める。
桜木が出す音だけが響く十数秒間。
その間に、周りの心拍数は自然に上がった。
「それに海兵とは限らない。
りょうちゃんが、蜂須賀さんが流した情報を受け取っていたという理由で、陸軍側に恨んでいる人間がいるかも知れない。
それに言ったでしょ?
この件の捜査主体は監査官だって」
「それはどういう意…」
甲上が詰め寄る前に、桜木は資料の一部を指差した。
そこには8年前も海賊と山賊が手を組み、一つの島を襲った事件が記載されていた。
この案件は、元々陸軍のみの担当だったが、海賊が関わっていることが内通によって判明し、合同になった。そして、海賊が関わっていることを隠していた陸軍側の担当者は、その後辞めているという。
「担当者の欄を見てください。
海軍側の担当者は宗谷さん。
そして、陸軍側は…」
そこには甲上もよく知る人物の名前があった。




