真実を見つめる
桜木が渡してきた2枚綴りの紙は、笠原と陸軍が内通した案件と、その担当者の一覧だった。
「なんで、こんな資料があるんですか?」
「笠原少将と陸軍の内通は、元帥に公認の元、行われていることだからです」
「公認ってことは、さっき監査官がおっしゃった動機に当てはまりませんよね?」
伊竜は冷静だった。
反対に甲上は冷静ではなかった。
「ちょ、ちょっと待ってください。
それは陸軍でもですか?
そうでなければ、事件には関係なくても問題です」
「公認もなにも、陸軍元帥の蜂須賀さんが内通の相手です」
「へっ?」
一旦思考が停止する。
「おっ…お二人はどういう関係なんですか?」
この質問には桜木にも迷いが有った。
「どういう関係なんですか?」
なかなか答えない桜木に、思わず大きな声が出てしまう。
「…りょうちゃんは、蜂須賀さんの子どもです」
驚いた。
桜木曰く、蜂須賀陸軍元帥がかつて交際していた女性との間にできた子どもだったが、良矢の存在は当初は知らなかったという。
後から知り、家族もあり、既に陸軍で立場のある地位にいたことから認知はできなかった。ただ、できないながらも、お金の援助、時折会うことはしていた。成長して、就職してからも会っていた結果が内通という形になってしまったということだった。
しかし、今、問題なのはそこではない。
誰が犯人なのか?
「笠原少将よりもアリバイの無い人間がいますよね?」
「塩谷少将と植村船長…」
指宿が呟く。
「一華に関しては私がアリバイの証人です」
事件が起きた頃、植村は隣のキャンバリ島で桜木と飲んでおり、朝練ギリギリに戻ってきたとのこと。桜木が特任業務の合間だったことから、口止めしていたのだ。更に他の証人が必要なら店主も証言してくれるだろうとのこで、植村のアリバイは成立した。
残るは塩谷少将。
「彼はキャリア組ですが、キャリア体制反対派です」
おかしな話だ。
キャリア組にとって、今までの体制の方が納得できないことが多かったはず。身につけてきた知識を蔑ろにされたことだって有っただろう。
「彼は私たち同期の中で、私と同じぐらい浮いていました。
唯一のキャリア組だったから…。
でも、相馬とは仲が良かった。
相馬は昇進しても努力を惜しまず、上級官位に教えを乞うようなタイプです。
そんな姿を見てきて感化されたんでしょう。
相馬のような人間がキャリア体制になって軽視されることを彼は嫌うようになった。
ただし、今回の事件の主犯は彼ではない。
彼を言いくるめ、共犯にした主犯がいる」
「それは…誰ですか?」
甲上は恐る恐る聞いた。
「監査官主体で捜査が行われる中、犯人をでっち上げられるポジションにいる人物。
そして、陸軍との内通者であるりょうちゃんを恨んでいる人物」




