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海の守り人~私は私のやり方でこの海を守る~  作者: アオサマ
最初の事件編
18/86

不思議な関係性

一度は神矢に渡したお酒を持って、桜木は笠原に抱きついた。

「おい、それ俺の…」

「りょうちゃん、あ~ん…」

桜木が飲ませようとしたため、笠原はグラスを奪い取り、一気に飲み干した。真横で桜木が「つまんないの~」とでも言いたそうな顔をしていたが、笠原は袖で口元を拭い

「毒でも入れといてくださいよ」

と吐いた。

このやり取りの意味に気づいた人間は笠原に対して「うまいな」と思った。

なぜなら、目上の人間が酒を飲んでいないなかで飲み干すというのはそもそも無礼に当たり、さらにそれは元々神矢に渡された酒だった。つまり、神矢への裏切りと桜木への服従を意味する。しかし、最後に付け加えられた言葉により、桜木を完全に信用しているわけではないということと、神矢が飲むはずだった酒の毒味をしたという意味合いになり、笠原は桜木・神矢どちらのものでも有り、どちらのものでもないと、この流れだけで言ったも同然だったのだ。

「まあ、いいや」

桜木はそう言い捨てると、神矢には新しいグラスに酒を、笠原には紙の山を渡した。

「これは?」

「書類にしろって怒られちゃったからさ~。

本部に行くならきーき(桐生)に渡しといて」

笠原は頷くと鞄に書類をしまった。

「てか、お前、何回燃やされれば気が済むんだ?」

「燃やされたのはまだ2回目です」

桜木がふてくされる。

「他、破かれたのと、ナイフを突き立てられたのが1回ずつ、投げ捨てられたのが3回と記憶しております」

冷静に話す笠原。

桜木が今度は正面から「せーかい!」と言いながら抱きつくが、笠原はまた無表情のままだった。

初めてじゃないこと、誰がそんなことをしてきたのかなど、周囲にとっては突っ込みどころ満載だった。

「まーた、藍沢さんが心配してるかもなぁ」

神矢の言葉に桜木は「あー、藍沢さん」と呟きながら、少しだけ真面目な顔になった。

藍沢中将は、来年定年を迎え、現在は主に内勤業務を担当している。

内勤業務は各船・支部に情報を送ったり、反対に情報を取り寄せてほしいと依頼が来たり、書類整理をしたりと多くの業務を限られた人数で行っているため多忙で、そのトップを任されている藍沢は優先順位を決めて、それを崩すことはない。しかし、桜木の頼みだけは、安請け合いするとは昔から有名なのだ。

「あんまり、藍沢さんに苦労かけんなよ。

もう、若くねぇんだから」

「藍沢さんが勝手に心配するんだもん」

「仕方ねぇだろ。昔のことがあんだから」

“昔のこと”その言葉に甲上は引っ掛かった。

「お前は楽しんでるんだろうが、こっちはその余裕がなくなってきた。

ちゃっちゃと片付けてくれ」

「だってさ~」

と笠原を見る桜木。

軽く頭を下げる笠原。

「仰せのままに」


翌日、笠原は勾留された。

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