3. 邪神様のからかい
――困ったことになった。
別に自分に何かあったわけではない。
それでもまだ16程の、それも俗にいう美少女が目の前で漏らしてしまったら、それなりにまともな神経を持っている者なら多少は困るのではないだろうか?
「其方、名を何という」
「ヒッ―――」
「もう一度問おう、其方――いや、お前の名前はなんていう」
「ハッ、ハイ。な、名前ですね。リエル ロット A H アストレアと申します」
「アストレア......ねぇ」
「はい、アストレアですがどうかなされましたか?なんだか口調まで変わっていますが?」
「いやなに、知り合いに同じ名前の奴がいたからな。それより、年頃の女がいつまでも漏らしたまま話すのはどうかと思うんだが」
そう指摘してやると、耳まで真っ赤にして俯いてしまう。
ちなみに先ほど口調が変わったとリエルが言っていたが、ある程度の力を持っている神々なら先程の様な口調だと、自分の実力から観て数段格下の相手を威圧してしまうので多少品格が落ちたとしても先ほどの口調に変えたのだった。
「可愛いな」
「……はぃ?」
「俺は人型だからな、美形の女が恥じらう姿は何か来るものがある」
「……失礼ですが、人としてそれはどうなんですか?」
「俺は邪神だ」
「いえ、そういう訳ではないんですが……」
「俺としては漏らしたまま話す方がどうかと思うぞ」
「ーーすみません。」
そういうとまた顔を俯かせて黙ってしまう。
やっぱり可愛い。
特に、涙目になりながら時折こちらの様子を伺って来るところとか。
こうして見続けでもいいが、これ以上醜態を晒すのは彼女にとって酷といいものだろう。
なら多少はイターー、えー親切心を見せても許されるだろう。
口の端が歪んでしまっているが構わずリエルに近づく。
リエルのすぐ目の前まで来ると、ヘタレ混んでいる彼女に視線を合わせる。
ちょうどしゃがみこむような形になると彼女の顔が引きつっているのに気がつく。
それに答えるように俺も笑みを深くする。
「な、何をなさるおつもりで」
「どうした?顔が引きつっているぞ」
「いえ、そんな。引きつっていませんよ」
「なら良かった、今から俺のする事にも驚かないな」
「え?いや、その理屈はおかーーはゎ、なッチョと待って」
リエルが何か言おうとしていたがそれを遮るように、ぞくにいうお姫様抱っこの形で彼女を抱き上げる。
腕の中で表情をこらころ変える様は、愛玩動物をふっとうさせる。
《転移 上空》
「ハッハッハッ、空の旅に招待してやる」
「そんなアバウトな転移受け入れられる訳が、え、嘘?本当に空を飛んで」
「空を飛ぶのが初めてなら下は向かないほうがいいぞ」