表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

キリンののぞみ

作者: 風鳥 紀乃

「ふぁー」


のぞみは食べている木を見つめました。いつも同じことの繰り返し。強いものからは逃げ、ご飯を食べ、新鮮な葉を求めて移動します。


「なにか面白いことないかな」


のぞみが呟いたその時です。


「ここはどこじゃ? ……ひぇー、山もないじゃねぇいか。いぬっ子追いかけていたのに、なんで、こげんとこに」


突然、足元から声がしました。

踏んでしまったら大変です。のぞみは慌てて、声の主から足を遠ざけました。


「うぉっ!? なんだなんだ!? この黄色い動くのは」

「驚かせてごめんね」


のぞみはそっと顔を下ろしました。


「私の名前はのぞみ。あなたは?」

「おらは、桐丸。日本からきた」


聞いたことのない場所です。それに、今まで、このような動物と話したことがありません。

これは、なにか面白いことがありそうです。


「きりまる? 珍しい名前ね」

「そうか? よくある名前だぞ」


 それから、桐丸は住んでいる場所について話してくれました。

 ものを教えてもらう場所。たくさんの仲間、それにいろんな種類の食べ物。


「へぇー、いいなぁー。毎日が楽しそうだね」

「ここはどうなのじゃ?」

「うーん、葉っぱを食べて、新しい葉っぱを探して歩くの」

「お散歩がいっぱいなんじゃな」


お散歩。なんと言う素敵な響きなのでしょう。ただの移動が楽しそうに聞こえるではありませんか。

のぞみの目の前に光が差しました。


「桐丸、一緒にお散歩に行かない? 私の背中にお上がりよ」

「いいのかい?」

「うん!」


桐丸は木を使い、そっとのぞみの背中に乗りました。


「うぉー、ずいぶん高いんじゃな」

「ふふふ、大丈夫? 怖くない?」

「ふむ、怖かない。あっ、あの地面を走っている生き物はなんじゃ?」


 桐丸が見つけたのは、離れたところを走っている生き物でした。


「リスとウサギだよ。近くにいってみる?」

「うむ、ここではリスは地面を走るんじゃな。興味があるのじゃ」


 驚かせないように近づくようにしました。

 二匹は楽しげに話しています。


「こ、こんにちは」

「あら、こんにちは。きりんさんから話しかけてくるなんて、珍しいわね。どうしたの?」


自分と違う動物に話しかけることは、滅多にありません。


「あの、私のお友だちを紹介したくて」

「いったい誰だい?きりんさんは君しかいないみたいだけど」


リスの子が言いました。

桐丸は背中から滑り降りて、のぞみの横にたちます。


「おら、桐丸。よろしくなのじゃ」

「人間の子ね。私はウサギのはるです。よろしくね」

「ぼくはリスのみさ。よろしく」


はるとみさは、いつも一緒に遊んでいるようです。


「それで、きりんさん、あなたの名前は?」

「私は、のぞみよ。よろしくね」


誰かと話すことは、どうしてこんなにも楽しいのでしょう。


「じゃあ、のぞみ、桐丸、これから一緒に遊ばない?」

「そうだよ、一緒に遊ぼう」

「うん!」


はるとみさは、草で編み物をしています。

のぞみと桐丸も腰を下ろし、やってみることにしました。


「どうするの?」

「ここをこうやって……次にこうして……」

「ふむふむ」


桐丸はすぐにコツを掴みすぐにできるようになりました。しかし、のぞみは、上手くできません。手が滑ってしまいます。


「うーん、桐丸はどうしてそんなにうまくできるの? どうしたら良い?」

「ここを押さえているからこの間に通すのじゃ」


のぞみが作ったものはボロボロでしたが、桐丸と作るとうまくできました。


「できたわ! 桐丸、ありがとう」

「おう!」


はるとみさも完成したようです。できたものは小さな籠でした。


「ねぇ、一緒にお散歩に行かない? 野イチゴを取りに行くの」

「うわぉー、野イチゴ! 行きましょう!」


のぞみは、元気に立ち上がりました。


「それで、どこにあるの?」

「ここから、向こうに歩いたところよ」


はるが指した方は、しばらく草原が続いています。野イチゴがありそうなのは遠くの方でした。


「えー、あそこまで行くのか? 遠いいじゃんか」

「あら、でもせっかく仲良くなれたんだもの。美味しいものを食べに行きましょう」

「まあ、確かにそうだけど、家に帰るの遅くなるよ」


確かに、二匹の足だと時間がかかるでしょう。


「のぞみ、乗せてあげたらどうだ? 背が高いからすぐにつくじゃろ?」

「けど、私の背中だと滑りやすいでしょ? 落ちないかな」


大きい分、振動が響きます。もし、小さい二匹が落ちたら大変です。


「おらが、抱っこするから大丈夫じゃろ」


桐丸の案で、のぞみがみんなを乗せて、野イチゴ畑まで行くことになりました。


「うわぁー! 高い!」

「のぞみ、ありがとう!」


のぞみは、みんなを乗せて歩きます。


「あっ、あったよ。いっぱいある!」


着いたところは、赤い絨毯のようになっていました。野イチゴがいっぱいあります。


「この籠にお土産もいれていきましょ」


みんなは、食べながら、さっき作った籠にたくさん入れていきました。


「おいしいね」

「こんな美味しい野イチゴ、初めて食べたのじゃ!」

「来てよかった」


次々に口にも放り込んでいきます。


「ふぁー、お腹いっぱい」


みんな、大満足。

辺りも、暗くなってきました。


「そろそろ、家族が心配しちゃうわね。帰りましょうか」

「また、私の背中にのって」

「ありがと、のぞみ」


桐丸がまた、二匹を抱えて乗ります。のぞみは歩き出しました。

日は既に沈み、闇が舞い降りてきます。空気も冷たくなってきました。


「のぞみ、ありがとう。ここで大丈夫だよ」

「うん、分かった」


お別れです。楽しかった分、悲しさが溢れてきます。


「今日は楽しかった、のぞみ、また僕たちと遊ぼうね」


みさが言いました。

そうです。また、会うことができるのです。


「うん!」


のぞみは大きな声で返事をしました。


「またね~!」

「バイバイ」


月明かりが差す中、のぞみはいつも過ごしている場所に歩いていきました。


「あっ」


ふと、背中が軽くなります。


「のぞみ、おら、迎えが来たみたいなのじゃ」

「え?」


桐丸の姿が薄くなっていきます。


「のぞみ、ありがとう。楽しかったのじゃ。みさとはるとこれからも仲良く遊ぶんじゃぞ」

「桐丸……ありがとう、元気でね」


のぞみは、笑顔で送り出しました。

雲一つない空には、一つ明るく輝く月が昇っていました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ