刹那
走り出した大男はそのままの勢いで握手会会場の手荷物検査所を強引に突破し、京月ナナのレーンに一目散に向かっていった。
初めは何が起こっているか分からずに立ち尽くしていたが、自分の中の第六感がこのままでは大変な事が起こることを察した
《ナナが危ない・・!》
そこから僕は人生で初めてとも言えるほどの猛ダッシュでファンの行列をくぐり抜けながら、ナナの握手会レーンに到着し、大男まであと数mのところまで追いついた。
ここまで来るとさすがにレーンにいるスタッフも異変に気付き、猛スピードで近づいてくる男を通すまいと二人がかりで立ち塞がる。
しかし大男は待ち構えていたスタッフに、隠し持っていた刃物を振り回しながら向かっていったため
スタッフは慌てて逃げ出してしまい、結局何の足止めもできないまま大男は京月ナナまでたどり着いてしまった
このままでは間に合わないと悟った僕はとっさに持っていたペッドボトルを大男に向かって投げ
意識を僕に向けようと試みた
しかしペッドボトルは無情にもヒットせず、大男は持っていた刃物をそのままナナに突き立てた
『やめろー‼』
叫びも虚しく刃物はナナの躰を貫いた。