勇者のジョブチェンジ
かつて魔王と呼ばれた悪党がいました。多くの血が流れ、あるとき一人の若者が現れたのです。みんなの希望を一身に背負った彼は勇者と呼ばれました。そして、この世全ての悪逆の限りを尽くした魔王は人々の希望である勇者によって倒され、世界は平和になりました。
「おい、何をする!?」
勇者は魔王を倒してから魔王の居城である魔王城に住んでいました。しかしながら、今日役人たちが突然押しかけてきたのです。
「勇者様、あなたが悪いのですよ」
「俺は世界を救ったんだぞ、どこが悪いんだ!」
勇者だけが悪いということではありません。ただしかたがないことなのです。平和になった世界は今まで抑えてきた問題も噴出してきました。
「聖剣の料金です。あれはもともと国のもの。借り物なのですから借りた分の料金が発生します」
「だから! もう聖剣は返しただろう!?」
「いいえ、それとは別に延滞料金が発生しています」
勇者が国から授けられた、魔王を倒すための聖なる剣。その価値は国家予算に匹敵するため、延滞料金だけでも莫大な金額になります。
「それから、貴族の令嬢でハーレムを作った慰謝料、魔王軍との戦闘で破壊された建築物の復興費、魔王城の土地代および固定資産税などなど・・・・・・」
結局、勇者は魔王を倒して手に入れた財産を全て国に没収されました。
一文無しになった勇者は田舎に帰り、勇者から農家にジョブチェンジしました。