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妖物語  作者: 飯綱 華火
因縁奇譚
2/11

憑き物


 一夜明けた正午過ぎ、漸く奇里と宗次郎は山を抜けた。

 頭上からは陽光が注ぐ。そのあまりの眩しさに長い睫毛が震える。

 奇里は額に手をあて目を細めた。


「あれかい宗次郎、お前の村は」


 麓から見下ろす先に村があった。

 遠目からでは人の存在は見て取れず、その村は閑散とした雰囲気を漂わせている。


「うん……」


 ぎゅっ、と宗次郎は奇里の手を握る。その顔はどこか暗い。

 繋がれた手と手。昨夜から片時も宗次郎はそれを離そうとしない。


「行こうか」


 もう片方の手で奇里は宗次郎の頭をくしゃり、となでる。


「うん」


 ほんの少し、宗次郎の顔に笑顔が浮かんだ。



〇〇〇



 風が大地を撫でていく。乾いた土埃が宙を舞い、カラカラと桶が転がる。

 そこは寂れた村だった。麓から人の姿を見て取れなかったのも当然だろう。

 この村には人の気配というものがまるでない。しかし、ほんの数日前までは人がいたかのような、そんな奇妙な生活感が漂っている。

 それに、奇里は首をかしげた。


「宗次郎、みんなどこに行ったかわかる?」

「わかんない。もうすぐお祭りだから、きっとみんなで準備してるんだよ」

「お祭り……?」

「うん。村のお祭り。花火師さんに頼んでね、こーんなにおっきな花火もあげるんだよ」


 身振り手振りを交えて話す宗次郎の表情は明るい。

 村についたことでやっと山中での恐怖が拭えたのだろう。

 だがそれもまた暗く曇ってしまうのかと思うと奇里の心は重くなる。

 奇里は薄く目を閉じ、感覚を研ぎ澄ます。

 そうすればまだ微かに漂っている、べっとりと張り付いてくるような不快な気配を感じ取る。


 それは―――妖気。


 (あやかし)という異形の輩の発する気配。それを彼女の並々ならぬ霊感が感知する。


「……宗次郎、この村にお寺はある?」

「あるよ。ちょっと村から離れちゃってるけどね」

「ん。じゃあ、そこまで案内してくれる?」

「うんっ」


 連れ立って二人は歩きだす。


 ――おそらくまだ人がいるとしたらお寺かな。


 内心で、奇里は一人ごちる。

 村に妖の気配があるということは奴らが来たということになる。

 気配の密度からしてその数は多く、山で出くわした狒々の様子からしてまず素通りはあり得ない。ならばこの村の有様からして村人がどうなったのかは明らか……。

 そこまでわかっていて、しかし奇里は何も言わない。

 遅かれ早かれいずれ分かってしまう時が来ると知っていても、まだ幼い宗次郎にそれを伝える気にはなれなかった。

 故に今は、ただただ無垢な少年の歩くに任せ共に歩を進める。

 と、不意にその足が止まった。


「お姉ちゃん……」


 怯えた宗次郎の声。恐怖に染まっていく無垢な瞳。

 その瞳が見据える先。

 ガチャガチャと音をたて、ぬぅっと姿を表したのは野武士。

 それぞれが皆その身に鎧を纏い、太刀に槍にと思い思いの武器を携える。


「………」


 チラリ、と奇里は後方を伺い敵がいないことを確かめる。


「宗次郎、私の後ろに隠れてて」


 宗次郎を背で隠すようにしながら太刀を抜く。

 対峙する敵は四人。

 奇妙なことに、彼女を囲む彼らの足元はフラフラとどこか覚束ない。

 しかし、彼らから発せられるただならぬ気配を彼女の霊感は敏感に感じ取る。


「人に取り憑いたか、妖め」 


 忌々しげに吐き捨て、でも、とその口元が笑う。

 野武士を見据える瞳はまるでその奥底までをも見透かすかのよう。 


「私と会ったのが運の尽きさ」 


 爛、と奇里の瞳が輝いた。

 すぅ、と深く息を吸い、太刀を構える。

 その構えは正眼。剣術における基本中の基本であり、同時に最強の構えと言われている。

 四人の野武士は呼応するようにそれぞれの武器を構える。

 ジリッ、ジリッ、と四人は囲むように奇里へと間合いを詰める。

 それに対し奇里は動かない。

 固くならずあくまで柔らかく、何時如何なる場合にも応じれるよう構え、その視線は一つに定めることなく全体を俯瞰するように見据える。

 不意に、一人が動いた。

 銀線が奇里の胸元めがけて繰り出される。奇里の前方、槍を構えた男が刺突を放つ。


「ふっ――」


 奇里は一歩前へと踏み出し下から槍を切り上げ、そのまま左側より切り込んできた太刀をその槍で受けとめた。


「はっ――っ」


 たたらを踏んだ槍持ちの懐へと潜り込み蹴り飛ばす。

 体勢を崩したところで真っ二つに胴を薙ぎ、右から切り掛かってくる一人の胴も薙ぎ払う。


 ―――残す二人。


 両脇を挟むように囲まれる。相対することはできず、どちらかへ向いた瞬間に背を斬られる状況下。

 奇里は右側の男に太刀を投げつけた。


「ぁ……」


 すっ、と吸い込まれるようにして太刀は男の喉へと突き刺さる。

 どぉっ、という倒れる音を背中で聞き流し奇里は最後の一人へと走り寄る。

 迎え打たんと振り下ろされる銀線。その懐へと奇里は飛び込む。


「はあぁぁぁああ!」


 紙一重の交錯。

 男の手首を捕り奇里が投げ飛ばす。同時に太刀を奪い、彼女は男を両断した。


「………」


 束の間の静寂。

 すっと降ろされた奇里の腕。

 その手に握る太刀は、刀身が根元からボロボロに朽ちていた。

 一瞬にして朽ちたそれを無感情に長め奇里は男の太刀を捨てる。

 自分の太刀を男の喉元から引き抜く。すっと蒼い残滓を零しながらそれは、妖しげな銀光を月明かりに反射する。


「お姉……ちゃん……?」


 背後でふるえる声がする。


「もう大丈夫だよ、宗次郎」


 太刀を戻し、宗次郎に微笑みかける。


「お姉ちゃん、これ……」


 そこから先の言葉が続かない。怯えた瞳で倒れている男たちを見つめ、その視線が「死んじゃってるの?」と奇里へと投げ掛ける。 


「安心していいよ。私が斬る奴は一人だけだから」 


 そう言ってくしゃり、と宗次郎の頭を撫でる。それでも、宗次郎は頭を上げない。


「―――。さぁ宗次郎、お寺に案内してくれるかな」

「……うん」


 ふわり、と優しく宗次郎を抱き上げる。まるで奇里の温もりを確かめるように、ぎゅうっと宗次郎は抱きついた。

 後に残ったのは倒れ伏す男たち。

 血は一滴も流れていなかった。



「ねぇ、お姉ちゃん」


 宗次郎の案内で寺へ向かう道すがら、不思議そうな顔つきで宗次郎は奇里を見る。


「さっきの青いのなに?」

「青いの?」

「うん。さっきお姉ちゃんがお侍さんと戦ってるとき、体が青く光ってたよ。あれってなんなの?」

「宗……あれが視えたの……?」


 驚く奇里に宗次郎は不思議そうな顔で「うん」と頷いた。


「山の中でお化けから助けてくれたときもそうだったよね。最後のほうでお化けは紫色に光ってたけど」


 あの時の恐怖を思い出したのか、ぶるっと宗次郎の体がふるえる。それを和らげるように奇里はポンポンと頭を撫でた。


「あれが視えるなんてね。じゃあ宗次郎は凄いんだ」

「え、僕ってすごいの?」

「そうだよ。いい、宗次郎。あれは『霊力』っていってね、妖や幽霊なんかを視たり触れたりできる力なんだよ。それは誰もが皆持ってる力なんだけど、力が弱い人はその力を視ることができない。だから私の力を視て取れた宗次郎は凄いんだよ」


 さらに霊力は自らの身体機能を高める働きもあり、山中で狒々と戦ったときにみせた奇里の超人的な動きはこれに寄るもの。

 この霊力を使う者のことを霊能力者といい、この力で怪異現象や妖から人々を護る者のことを『退魔師』と呼ぶが、まだこの時代そう呼ぶものは少ない。

 また宗次郎が視て取ったように視覚化される場合、霊力は青色に、妖などの発する妖力は紫色に、そして特定の人間が発する妖力は赤色になる。

 だがこれ以上言えば宗次郎が混乱すると思い奇里は黙っていた。

 しばらく宗次郎は「う~ん」と唸った後で、


「じゃあお姉ちゃんはもっとすごいんだね」

「私?」

「うんっ。だってお姉ちゃんはその力が使えるんだもん。それに、お姉ちゃんさっきは体だけじゃなくて目も青かったよね」

「………っ!?」


 奇里は息を呑む。

 先程は『妖憑き』相手だからああなったとはいえそれでも宗次郎に気取られぬよう注意はしていたのだ。

 それに宗次郎は気付いたという。何と聡い子だ、と奇里は驚いた。


「まさかあれまで見られちゃうとはね。本当に宗次郎は凄いよ」

「へへー」


 奇里に誉められて嬉しそうに笑う。

 と、不意に宗次郎の足が止まる。

 不思議そうにきょろきょろと辺りを見回す。


「あれ? もう着くはずなんだけど……」


 不安気に宗次郎は呟く。しかし景色は同じような木々ばかりで変化はない。

 むしろその景色こそがどこかおかしく、 


「結界、か……」


 周囲を見回して、やれやれというふうに奇里は呟いた。


「―――」


 静かに目を閉じ、息を吐く。そしてまた開く。


「わぁ――」


 宗次郎は感嘆の声をあげる。

 見開かれた双眸に宿るのは黒曜の輝きではなく、どこまでも広がるような蒼穹。

 その、果てしなく深く澄んだ輝きが爛、と灯る。

 それに宗次郎は魅入った。


「さて……」


 しかし奇里はそれに構わず辺りを見回す。すぐにその瞳が怪異現象の根幹を見つけだす。


「ここ、か……」


 腰元の太刀に手をやり鯉口を切る。

 シュッ、という呼吸音に、チンッという一瞬の鍔鳴り。

 ひらり、と真っ二つに斬られた札が宙を舞う。


 瞬間、風景が一変した。


 周りを覆っていた雑木林は無くなり、明らかに人間の手の入った草木が姿を表す。

 そして目の前に開く一本道。


「この先かな、宗次郎」

「う、うんっ」


 突然風景が変わったことに驚いていた宗次郎も返事だけは返し、前へと進んでいく奇里をあわてて追い掛ける。

 それを、奇里は手で制した。


「お姉ちゃん?」

「そこにいて、宗次郎。まずは誤解を解かないと」


 そう言った奇里の目の前。

 三間(約5メートル)ほど距離の開いた先。

 黒衣に袈裟をまとい、頭には深編笠、手には六角柱の錫杖を持った男が立っていた。


「結界を張ったお坊様かい?」


 奇里の呼び掛けに、しかし男は答えない。

 それでも微かに首肯したのを奇里は見逃さなかった。


「いきなり結界を斬ってこういうのも変だけど、その警戒を解いてもらえないかな。お寺に行きたかったんだけど、あれしか方法を知らなくて」


 困ったように言う奇里に対し、男は一歩前に出て深編笠を取った。


「良い。妖憑きならそこまで流暢に話せぬし、人に化けていたとしても俺の結界を斬れるほどのモノはここにはいないからな」

「余程の自信だね。でも、笠を取るってことは信じてもらえたのかな?」

「うむ。先程は失礼をした。もう人はおるまいと思っていた故、警戒をした。拙僧の名は安慶(あんけい)。ここで村の者を匿っている」

「え、じゃあ村の人はまだいるの?」

「うむ。数名ではあるがな……」

「そう……。でも良かった。私は奇里。この子は宗次郎。ここの村の子よ」


 ほら、と奇里は宗次郎を促す。

 宗次郎は奇里の背に隠れたまま少しだけ顔を出して、ぺこりと頭を下げた。


「ごめんなさい。この子、山の中で一度妖に襲われてるから……」

「かまわぬ。それよりも休息を取ったほうが良いだろう。このすぐ先が寺だ。そこならば多少の安全は保証しよう」


 そう言って安慶は歩きだす。それに奇里は宗次郎の手を取ってついていく。


「あ、あのっ……」

「ん?」 

「……ありがと、おじちゃん」


 小さく、宗次郎は礼を言った。



      〇〇〇



 そこは古ぼけたお堂だった。

 寺として機能しうる必要最低限のみを有した場所。

 管理する者はおらず、たまに村の者が掃除をする程度。

 野犬や武芸者が一時の寝床として使用するような、そんな場所に村人はいた。


「見てわかる通り元々管理主がいない寺でな。そこに最近まで比叡山から派遣されてきた坊主がいた所らしい。一時の仮宿、というやつだ。もっとも今は俺の仮宿だが」


 安慶は寺の目の前まで来ると一度錫杖の石突で地を突いた。

 シャーンと鈴が鳴り、ほんの一瞬だけ空気が揺らぐ。


「へぇ、二重結界か」

「うむ。用心するにこしたことはないのでな。もっとも、先の結界と違いここのは直接的な防御陣を組んでいるがな。

 おい、俺だ。人を連れてきた」


 襖を開けて安慶は中へと入っていく。

 言ったとおり中には数名の村人が身を寄せ会うようにして隠れていた。

 と。


「おじちゃん!!」

「宗次郎っ!?」


 奇里の後ろに隠れていた宗次郎が駆け出す。

 同じように一人の男が寺の中から駆けてきて宗次郎を抱き止めた。


「おじちゃん、おじちゃんっ」

「宗次郎、おめぇ生きてたかぁ。良がったなぁ、ほんに良がった」


 おじちゃん、と呼ばれた男は泣いて喜ぶ宗次郎を同じくらい嬉しそうに笑いながら抱きしめる。

 その光景に目をほころばせながら、奇里は中に入らず寺の縁側に腰かけた。


「良いのか?」

「ええ。感動の再会に邪魔は無粋だから。

 ちょっと頼みたいんだけど、中の人には私のことお坊様から紹介しといてもらえない?」

「ふむ、了解した。それと、俺はこのような身なりだが坊主ではない」

「そうなの?」

「ああ。正しくは元坊主だ。とうの昔に比叡のお山から破門されている」

「それにしては徳がありそうに見えるけど」

「破門されたからといって仏門を捨てたわけではない。修験者として一人修行しているうちにないつの間にかな。破門されて後に伸びしろがくるとは皮肉だ」


 やれやれと安慶は肩をすくめる。それを奇里は可笑しそうに笑った。


「ああそれから、このことは村の者には黙っておいてくれ。そのほうが都合が良いのでな」

「いいけど、どうして私に話したの?」

「ん? 何、お主には俺と近しいものを感じたのでな」


 ニヤリ、と笑う安慶。それは一般の坊主が浮かべるようなものでなく、奇里は安慶が相当数の修羅場をくぐり抜けてきていると直感した。


「お姉ちゃん!」


 とことこと嬉しそうに宗次郎がやってくる。


「では俺はお主に斬り払われた外の結界張りと見回りに行ってくる」


 入れ替わるように安慶はその場を後にした。


「お姉ちゃん」


 宗次郎は先程の男を連れてやってきた。


「あのね、この人は典明(のりあき)おじちゃんだよ。僕のおじちゃん」


 典明という男は笑ってぺこりと頭を下げた。

 農夫なのであろう黒く陽に焼けた肌に手入れのされていないボサボサの髪、頭は少し禿げていて作務衣のような薄汚れた服を着ている。


「宗次郎から聞きやした。何でも、山の中で助けてくれたそうで。ほんにありがとうごぜぇやす」


 宗次郎の頭を撫でてもう一度頭を下げる。


「それでね、この人は奇里お姉ちゃんだよ」


 奇里は笑顔を浮かべて頭を下げ、それに典明はニカッと笑う。

 宗次郎のように無垢な笑顔をする人だと奇里は思った。


「あのねおじちゃん、お姉ちゃんはすっごく強いんだよ。お化けもお侍さんもあっという間にやっつけちゃうんだ」

「ほぉ、それはすげぇですな。あのお坊様と同じなんでごぜぇやすか?」

「あれだよねっ。え~と、れいのうりょくしゃ?」 

「うん。そうだね宗次郎。私は安慶和尚と違って徳はないですけど、同じように妖からあなた方を護る者です」

「それはありがてぇ。いやぁ、わしらあのお坊様がいなかったら皆死んでやした」


 典明の言葉に周りにいる村の者も頷いた。


「あのお坊様はほんに強ぇお人だ。化け物どもに囲まれてもうだめだと諦めたときにやって来られてあっちゅう間に退治なされた。そんで今はあの人のおかげで化け物もやってこねぇ。感謝してもしきれねぇだ」

「じゃあお姉ちゃんもいるしもう安全だね」

「そうだなぁ。しかしあん時おめぇをお使いに行かせてほんに良がったで」

「お使い? そういえばどうしてあの時宗次郎は山に?」

「あっ。そうだおじちゃん、はいこれ」


 思い出したように宗次郎は懐から紙を取り出した。


「花火師さんがね、またいっぱい花火作ってくれるって言ってたよ」

「お、おぉ。ありがとな、宗次郎」


 頭を撫でながら典明は紙を受け取る。


「もうすぐ村の祭りがありやして、その時に打ち上げる花火の注文書を渡すように宗次郎に頼んだんでさぁ。それで下の村まで使いに。化け物に襲われたのはその日の夜だったんですだ」

「そう、ですか……」


 二人の顔が暗くなる。宗次郎だけは状況がわからないのか、不思議そうな顔をしている。


「あの、一つ伺いたいことがあるんですが……」


 奇里が言い掛けた時、茂みでガサッという音がした。三人の視線がそこにいく。

 そこから表れたのは安慶でなく、


「お、お姉ちゃん……」


 ガチャガチャという鎧の擦れる音。宗次郎が奇里にすがりつく。

 表れたのは奇里が斬ったはずの野武士たちだった。


「お姉ちゃん、あの人たち……」


 奇里に抱きつく体はふるえ、その瞳は恐怖に染まる。それを奇里は優しく抱き包む。


「大丈夫、大丈夫。宗には私がついてるでしょ」


 宗次郎を抱きしめながら奇里は野武士に目を向ける。


「貴方たち、体はもう平気なの?」

「―――ッ!?」


 まるで悪戯を仕掛けた子供のような瞳が驚きに口を開ける彼らを見つめた。


「やはりお主の仕業だったか」

「えぇ。それが私の『力』だもの」


 やってきた安慶に奇里は妖しく微笑んだ。



                                                                               憑き物/了



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