序
前回の連載よりより良いものを作れたら、と思いますので、温かい目で読んで頂ければ幸いです。
────────遠く鐘の音がする。
この闇は何だ……窮屈だ……………
鐘の音………だけじゃない、何だこの音…いや、声だ。
父なる地下神に血を捧げよ 不遜の者を今こそ捧げよ
溶岩の影より来たれよ 愚かなる我々を救い給え
何だこの不協和音は…頭が痛い………此処は何処だ
頭が痛いのはこの闇が揺れているからか…?
父なる地下神に肉を捧げよ 不遜の者に今こそ罰を
火口の淵より来たれよ 愚かなる我々を救い給え
自分は…箱の中にいるのか……?細長い…。
ふかふかの底…………思わず眠ってしまいそうだ………
いや、待てよ……
これは……もしや……?
必死で周りを触ったりした。
この構造は……匂いは…………棺桶……っ?!
『と、止めろっ!!だっ、出せっ!!おい!!』
俺が抵抗すればする程呪文のような不協和音は響いていく。
父なる地下神に血を捧げよ 不遜の者に直ちに罰を
我々地上の愚人に救いを 愚人に救いを与え給え
一体どうしてこうなったのか、全く見当も付かない。
これからどうなってしまうのだろう、全く見当が付かない。
そうだ、これからどうなるんだ。
生き埋めされるのか?
そもそも命の保証は?
殺されるのか?
何かに食べられる?
厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ厭だ…………。
生きていたい、俺が何をしたって言うんだ。
涙が止まらなくなった。
突然の出来事だ。棺桶と思われる箱に詰められ、カルト教団的な奴らが居るのだろうか、多分推測でいえば『生贄』になるのだろう。
棺桶は俺一人の力では到底開かなかった。
何度も叩いたが、呪文のような不協和音ばかりが聴こえてくるばかりで、助けなどないようだ。
最後の足掻きの様に俺は中で転がったり、駄々っ子の様に手足をばたつかせた。
その足掻きが効いたのだろうか、ふわっと浮いたような感覚の後、衝撃を体全体に受けた。そして、扉がガタン、と偶然開いてしまった。そこで俺は落ちたとき以上の衝撃を受ける風景を見た。
黒服の背の高い男たちが此方をじいっと見つめている。
全員の白目は赤く燃えるような色をして、黒目は黄色く真ん中で泳ぐように其処に在った。そして、皆同じような顔で居た。
俺が呆然としていると、突然、一人が常人以上に口を開けて、
『いぎゃああぁぁあはぁあああああひぃいいいいっっ!!!!』
と奇声を上げた。それに続け、と言わんばかりに周りの奴等も奇声を上げ始めた。それで俺は我に返った。
そして、奇声を上げる男達から逃げるように、何処とも知らぬ真白な下りの階を降りていった。
これが俺の運の尽きになることに成ろうとは、誰も予想だにしなかったろう。