表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三題噺②  作者: 如月 恭二
4/4

在る男の日常

三題。

灰色、妻、馬の三つ。

よくこんな怪文書を書いたなと思いました(笑)

そして、Twitterで言いましたこの三題噺の投稿ですが、すっかり忘れていました(汗)


ごめんくださ──いや、すいません(泣)

面倒とかじゃなく、忘れていましたorz

天然なので、本当にすいません(泣)

 寂れた町がある。王都から離れること百里あまり場所で、肥沃な土地柄以外は取り立てて見所のない町だ。そこには古びてこそいるものの、小ぶりながらも立派で周りの風景とは不似合いな厩舎(きゅうしゃ)があった。それは一軒屋に隣接しており、その家の主のものだと分かる。

 一番鶏が泣くより前に、家の主が扉を開き外へ出る。彼は白髪混じりの褐色の髪を丁寧に撫で付けている、初老の男だ。物々しい板金鎧を装着している様子が、驚くほど様になっている。同年輩の人間が彼と同じ格好ならばさぞや滑稽に映るだろう。

 白髪混じりの髪は、短く切っており不潔感を感じることすらない。それどころか、香油の類を使用した恩恵で色艶が美しく感じられる。男は兜を被ることが苦手であり、たとえ板金鎧を(まと)おうと、革鎧であろうともそれは揺るがない。

 ──兜の有っては、周りが見えん。

 それが持論だ。現に板金鎧を着けるよりも普段の一張羅か、革鎧の方がましだと思っている。腕や脇が阻害される出で立ちは宜しくない──それが信条だからだ。

 男は大きく伸びをすると、「よし」と呟き顔を軽く(はた)いた。その手には大剣が一振り握られている。装飾は一切ない。何よりも刃は潰されているようで、“剣として”というよりは訓練用と言った方が正確なようだ。


 「──ふっ‼」


 自然体から鋭い呼気と共に、大剣が振るわれる。老体でありながら、その剣閃は呼気同様に鋭く(はや)い。剣の心得がなくば、彼の得物が消えたように見えることだろう。

 それほどまでに、技の冴えが垣間見える型だ。型から型への移りは流れるように自然だ。型に特有の流れだけではない。それは剣を振るうべく最適化された、効率的で身体への負担が少ない振り方だ。

 ──そして同時に、人を斬るのに最適とされる剣でもある。

 如何な研鑽(けんさん)がここまでさせるのか──余人の知るところではない。


 「──つぁ‼」


 真一文字に振り、血振りするように振るうと鞘へと戻す。その挙動でさえも淀みなく、清澄で荘厳な印象を漂わせる。(つば)鳴りの僅かな音が浮いて感じられるほどだ。

 深く息を吐く。呼吸を整える意味合いだが、彼の呼吸はそれほど乱れては居なかった。ある種の儀式的なものだ。

 ──と、そこへ青年が通りかかる。

 いつも周りへ愛想を振り撒く、牛飼いの好青年である。


 「おじいさん、おはよう。 今日も精が出るね」


 「ああ、おはよう。 君も早いな、壮健で何よりだ」


 青年の挨拶に、男は爽やかな笑みを浮かべて応じる。

 牛飼いの朝は早い。青年と男のやり取りは、最早日課だ。顔を合わせる度、こうして世間話に花を咲かせる。

 今日の素振りは何度だとか、牛が産気付いたとか益体もない話だが、彼とは友人のような間柄でもあるため男は退屈なぞ感じない。

 一番鶏が泣く。


 「──あ、もう時間だ。 じゃあおじいさん、またね‼」


 「うむ。 身体は大事に、な」


 一時(ひととき)の楽しみが終わる。少しばかり名残惜しいがそう言ってなどいられない。することはまだあるし、引き留めることは邪魔をすることと同義だ。


 愛馬のいる厩舎へと足を進める。果たしてそこには、年老いた馬がいた。齢十六にもなる老馬だ。駿馬(しゅんめ)と呼ばれ誉れ高かった頃の面影が残っている。

 主人の到来を知ったのか、短く啼いた。


 「おお、分かるか。 はは、よせよせ」


 ──馬は利口だ、人間のことがよくわかっている。

 昔、馬のいろはを叩き込んでくれた人間の言葉が去来する。じゃれついてくる愛馬をなだめながら思い起こす。そう言えば彼は今も壮健だろうか。

 名前も思い出せぬ彼に思いを馳せながら、馴れた手付きで身体を磨く。

 

 一通り終えると、触れ合いもそこそこに厩舎を後にする。愛馬の目は二度と光を映すことはない。利口な動物とは言え、老いには勝てぬのだ。それは三月前(みつきまえ)に虚空を眺め始めたことが発端であった。

 最初は小さな違和感だったが、鼻先をひどく打ち付けたところを目の当たりにした時、それは確信へ至る。


 だが、主人には変わらず接してきた。うれしくも悲しいものだ。主人冥利に尽きれども、長い付き合いで育まれた情が「無理をするな」と思わせる。

 利口だから、だろうか。それとも野生の動物が弱点を(さら)すまいとやせ我慢をしているのか、男には分かりかねた。

 

 (良いこと無しじゃな……まったく嘆かわしい)


 内心強がりを言う。数年前であれば軽口を交わせる人間がいたのだが、今となっては無い物ねだりだ。気兼ねなく話せたその人物とは、数年前に死んだ男の妻である。

 病に苦しんで──ということではなかった。

 彼より十ほど年が上の彼女の死は唐突に訪れた。──老衰だった。身体が弱かったということでもない。ひとえに運が悪いとしか思えない死因だった。


 無論悲しみはした。

 だが、どこかで──


 ──ああ、次は儂の番か。


 そんな諦観じみた思いがあったのは間違いなかった。そして冷めた人間だと自己嫌悪に陥り、呑みもしない酒に(おぼ)れたこともある。そんなやや自堕落な生活を経て今に至る。

 しかし、きっかけとは本当に些細なものだ。

 町の人々は誰も彼もが本物の家族のように気にかけてくれたのだ。誰もが彼を気遣い、支えた。その優しさに押されて漸く、立ち直ることが叶ったのだ。

 


 男は静かに、自宅へと戻る。その間際に、薄暗い地面を怪訝に思い空を見上げる。

 灰色の雲が流れていく。いつの間にか時間が経っているようだ。雲行きは徐々にだが確実に悪化している。

 

 「やれやれ、雨か。 畑の手伝いに行かねばならんというのに……」


 思わずぼやく。隣に聞く人間がいた頃の癖が抜けきれていないらしい。


 ──まあ、貴方ったら。


 笑みと共にそんな言葉を掛けられることを、望んでいるのかも知れない。寝室に飾る妻の肖像画をみやり、そう考える。


 「──死した者の魂は消えることはありません。 魂とは不滅のものなのです。 視認することこそ叶いませんが、彼らは常に私たちと共に在るのです」


 ──ならば。ならば、死ぬことが叶えば妻に会うことが叶うのか。


 男はそう思わずには居られなかった。神父の言葉が甘美な死の誘いに聞こえなくもなかったのである。

 息子達の行方も知れない。特に長子とは喧嘩別れをしたきりだ。二男、三男も家を出たきり便りひとつ寄越さず、安否も知れない。


 昔、剣の腕を讃えられ、持てはやされた栄光も遠い過去に思える。そもそもそんなことはなく、思うこと全て夢のように現実味が感じられなかった。

 だが、少なくとも剣を握っているときだけは活力を感じる。そう、少なくともそれだけは。


 「まるで昔の栄華にすがる破落戸(ごろつき)よな」


 この剣が、今一度誰かの為成らん。そんな叶いもせぬ夢想と滑稽な自嘲に男は思わず呵々(かか)と大笑する。

 それが本心からの笑みだということに、男はついぞ気付くことはなかった。

 

狙ってやりました、反省も後悔もしていない。だが──やり過ぎた(泣)

暗い、暗すぎる……。

なにやってんだあたしゃ(汗)!?

楽しい雰囲気が何処にもねぇ‼


いや、やり易いからこうしてるのもありますが、流石にこれは……。

まだ試行錯誤が要りますね(泣)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ