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三題噺②  作者: 如月 恭二
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最強の殺し屋

久方ぶりの、三題噺です。

三題噺って面白いですよね。最初は「魔女」「悪魔」「少女」の取り合わせで書いてて、

(あ、いや……こうした方が自然だよね)

……と思った結果がこれです。

「最強」「殺し屋」「親子」の三題です。

あからさまにこの単語入れるのって、どうだろうとか思った結果がまたこれですorz

意見あると嬉しいです‼

昼下がり、何も無い壁を見つめて取り留めのない、思った事を口に出そうと思い立つ。無論、思う事なぞ一つ。

「あ~、たりぃわ~」

唐突に愚痴る、青年。

しかし、その場所は廃墟となった教会で所々は焼け落ちている有り様だ。

日常の只中ただなかに有って、一際異彩を放つそれは戦火の残り香の様だ。

紺色の短髪をもてあそび、ひび割れた丸椅子を所在無さげに、それも危なっかしく揺り動かす。

「父さん、仕事は入らないの?」

父に似ても似つかない、黒髪を短く切った少年が何とはなしとばかりにいてきた。

「いやなに、ただ面倒くさくなったのよ……仕事。 入ってもイヤだなぁ……」

「……」

またか、と少年──ラパスは思った。

生活能力皆無。炊事洗濯は、頼んだそばから逃げ出すし、高給取りだが、浪費家で宵越しの金を持たぬ様な『人生は太く短く』を地で行く男。

「そう面白い顔すんな、笑い死ぬ」

全く悪びれもせず、かつ心底面白く無さそうに茶化す父に、思わずため息。

「良いか、人間働いたら駄目だと思うんだ……。 もっとこう……楽してまるっと儲けられる話が欲しいんだよな、うん」

「そして、それに当てはまるこの間の仕事が罠だったんですが、それは……」

怠ける事こそ、この世の理と言わんばかりに真顔でそんな事を言われ、ラパスは呆れる。

つい先日、此方をよく思わぬ商売敵からの仕事……もとい罠を仕掛けられた事を思い出す。結果だけ言えば、蟻一匹逃さぬ様に囲まれてしまった。

もしも人選を間違えていれば今こうして話せなかったであろう。

ラパスにしてみれば、今思い出してもぞっとしない話だ。

「なぁに、雑兵なんざ束に成ってもこの俺は斬れんよ」

「……確かに、人間離れしてますもんね、父さんは」

横合いからおい、と抗議された気もするが、ラパスは軽く流すに留めた。

冗談等では無く、血路を開いたのは紛れもなく父親たる彼だ。

そして前述の通り、何もかも面倒がる彼にも特筆すべき点が有る。

──戦闘技術である。

あらゆる武器を使いこなし、手足の様に扱う様は熟練の傭兵も真っ青になりそうな程、堂に入ったものだった。

──それにしたって、二十数人相手に大立ち回りとはどれ程の力量が有れば可能なのか、ラパスには見当も付かなかった。

「まぁいい……。 “アレ”は何処いった?」

「エクレールの事?」

「そう、ソレ」

「酷い言い草だね……。 確か、水汲みに行ってくれてる筈だよ」

「ふぅん、そう……」

エクレールとは、この場に居ない少女の事だ。

尚、青年や少年との間に血縁関係はなく、まったく赤の他人である。

青年としては、拾っておいて勝手な話だがあまり関わりたくない相手だった。

(匂うんだよなぁ……それも、濃密な血の臭い)

何処と無く、自分と同じ臭いのモノに同族嫌悪したのかもしれない。

それでも拾った。

──拾ってしまった。

敢えてその時の感情を表すのなら……何だろう、もやもやとした気分になる。考えるのは、此処までで切り上げよう。

──と、そこで扉が耳障りな音と共に開かれる。

青年にとっては見慣れた少年だ。

「どうも、マルディです。 キャファ──」

「シガール、だろ?」

言うが早いか、さえぎって低音で訂正を促す。

「……失礼しました、シガールさん。 ちょっとお耳を貸して頂けますか?」

無言で耳を寄せる。

ラパスには聞こえないだろうが、キャファールには充分すぎる程の声量だ。

「ウム、内容は把握した。 待ち合わせ場所は?」

「向かいながら話します」

「父さん、何事か有りましたか?」

蚊帳の外だったラパスが尋ねてくる。からかってやろうと思い立つ。

「いいや、マルディとちょっと言えない様な事をしに行くんだ、言わせんな恥ずかしい」

言うが否や、二人して苦虫を噛み潰した様な渋面になる。年頃の美少年が揃いも揃って顔を歪ませる様は最早顔芸である。

「……置いていきますよ?」

「マルディさん、ちょっとこの人にはキツいお灸が必要な様ですので、少々お待ちを……」

「……冗談だ。 だから冗談だって、剣下ろせ馬鹿!」

お堅い事で……。

冗談が通じない事に、キャファールは内心嘆息する。

「後、俺は準備ならもう良いぞ? 身一つの方が気楽で良い」

「身一つ……ハッ!? つまり俺を──」

「……それ以上茶化すとマルディ、首の骨をへし折るぞ。 ラパスも乗っかろうとすんな」

「はい……」

マルディとラパスを黙らせ、扉に手を掛ける。

後を慌ててマルディがやってくる。

「さーて、一丁いきますか」

──面倒だけど、ね。

我等は死神──〈ラ・モール〉。

今日はどんな獲物だろう。


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