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三題噺②  作者: 如月 恭二
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如月の短編集

このコーナーは『如月恭二』の執筆練習の本棚です。

基本的には三題噺を書き続ける所ですので、宜しくお願いします。

「くっそ……どうしてこうなった」


草原のド真ん中で、汗を滝の様に垂らしながら、青年は独りごちる。

白髪で、緋色の瞳が印象的な中性的な顔立ち。

華奢な身体つきでは有るが、それが逆に引き締められた強靭な体を思わせている。


携剣帯には二振りの長剣、諸手に長大な大剣(クレイモア)を携えており、絵に成る姿勢で構える。


「グォオオオオオオ!!」


突如として、相手が咆哮。

しかし、人では有り得ない体躯と殺意は尋常ならざるものだ。


まず、容姿として体色は黒。

()虫類独特の鱗に、口の間から覗く乱杭歯、そして頭部から後ろに突き出した角。


加えて小さな山と見紛う程の巨躯。


──ドラゴン。

それは時として神に次ぐ存在と称される生物であり、伝説とも言われる。



その様な生き物を相手取るのは、どうみても自殺行為以外に無い。

不運に遭った自身を呪うが、最早後の祭りだった。


「……」


ちらと横を見れば、事切れた自らの愛馬。

無惨にその身を切り裂かれ、自らの血溜まりに沈んでいる。


(可哀想に……。俺の武者修行に着いてきたばかりに……)


慈しみと悲しみの視線を向ける青年。

哀れむ所が少々違う気もするが、今はそれどころではない。

一つ間違わなくても、数分後の自らの末路と重なって見える。


考察もつかの間、殺意の奔流は青年の命を存分に脅かしていた。

──何故なら彼は、今まさに突進の余波で吹き飛ばされている最中なのだから。


(絶望しかねぇ……ハハハ)


かすりもしない一撃でさえこれなのだ。

直撃した場合の威力は想像するに難くない。

泣きたくても泣けないと言うのは、きっとこう言う事なのだろう。


心の中で、乾いた笑いを溢す。

そして、青年の中で何かが吹っ切れる。


(何にしても、消耗戦は確実な死か……)



──ならば、


「捨てたと思ったこの命で抗うまで!!」


(はら)を据えるしかない。

青年は相手に取って不足なしと口角を獰猛に吊り上げる。

正眼に大剣を構えると、猛然と疾駆した。


「ハァア!!」


烈帛(れっぱく)の気合いと共に跳躍。


暴風の如く迫り来る爪牙をいなし、上段から剣を叩きつける。


──しかし、


「……くっ」


鱗の重なった甲殻は大剣の斬り潰しを以てしても、僅かに傷付いた程度である。

寧ろ、こちらの腕に衝撃の余波が伝わって痺れる始末である。


「──うぉっ!?」


緩衝の間も無く、円錐状の尻尾での薙ぎ払いが襲い来る。

唸りを上げて飛来するそれは、死神の大鎌を彷彿とさせる重圧を放っている。


直撃すればまず骨折程度では済まないだろう。

幸いにも、硬革鎧という軽装備である事が功を奏した。

咄嗟の事態にも関わらず回避が可能となったのは、(ひとえ)に防具に依るところも有るのだろう。


(死ぬとこだった……)


他の装備と言えば左上腕に装備した部分装甲程度。

残念ながら、こちらは毛ほどの役にも立ちそうに無かった。


息を吐く暇なんてありゃしないと、ぼやく。

そのまま接近し、前足の鉤爪を掻い潜る。

死地に違いは無かった。

されど、『死地にこそ活路有り』という事実もまた(しか)りだ。


右手に大剣、左手には長剣と言う異様な佇まいを見せると、すぐさま前足を斬り付ける。


「せぇええええい!!」


鱗や甲殻を狙った点は変わり映えが無かった。

しかし、青年の狙いは前足の関節に当たる部位、ただその一点だけである。

青年は腰の力を巧みに操り、剣舞を叩き込む。


関節部分は脆弱(ぜいじゃく)で、肉質は通常の甲殻や鱗に比べれば遥かに劣る。


ドラゴンさえもその例外では無かった。


「ギェエ!?」


(効いてる……!!)


呻き、身体を縮めて怯むドラゴン。

今までとは違う反応に確かな手応えを感じとる。


ただ、この剣舞が有効打かと言えば、そうでもなかった。

例えるなら、急な反撃に面食らっただけの反応に近いからである。

(だが、光明は見えた……)


そして暴力の嵐に対して、一見無謀そうな青年だが、青年は青年で技巧を以てして対峙していた。

爪牙を弾き、ある時は刀身で滑らせ受け流す事により致命傷を避けている。


何よりおそるべくはその集中力に有る。

縦横無尽に振り回される暴力の権化。

その死地に在って尚、目まぐるしく動く対象に対して、的確に斬撃を撃ち込む姿は当然の様にすら映る。


しかし、高い技術に裏打ちされていることを、克明に物語るものでも有った。


「ゴァアアアアアアア!?」


「さぁて、ここからが本番か。行くぜ、化け物ちゃん!!」


ドラゴンの咆哮が、殺気の様にビリビリと肌を刺す。

常人なら卒倒しかねない重圧を前にして、気合いでそれを克服し、軽口を叩く。

口ほどに余裕は無い。

装備もずだ袋さながらの惨状。

生傷や裂傷は十や二十ではきかない数を負った。


片やドラゴンは、煩わしさによる怒りに打ち震え、動きも前にも増して鋭く、凶暴なものとなる。


「ガッ!?……ヤバい、かもな」


青年の背を、鉤爪が擦過。

次いで、創部からドクドクと赤黒い血が溢れ出した。

口を突いて出たのは、久々の弱音。

血液の様子から(かんが)みるに思いの外、深傷(ふかで)である。

多少の弱音が溢れるのも無理からぬ事だった。


戦いはまだ始まりに過ぎない。

そう告げられた気がして、青年は剣を持つ手が(しら)む程に、剣を強く強く握り締めた。


「いくぜぇ!!」


大喝一声の後、放たれた矢のごとく、青年は再び死地へと躍り出た。


さて、今回のお話しですが、三題噺です。

草原、馬、ドラゴン。

ファンタジーにして、カオスな文面ですが、何とかお話しになりました(笑)


一騎討ちみたいな戦闘描写になりました。

正直巧く出来ていないのではないかと、不安ですが、宜しければ添削をお願いします。


感想、ご意見等ありましたらどうぞお申し付け下さい。

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