表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

正義の味方採用面接

「へぇ、それで正義の味方になると?」

「はい……」


 あれから私はどうしたらいいのか分からなかった。ロードは正義の味方になると言い切ってしまい、私達の基地にまでついて来てしまった。せっかくの秘密基地が、悪の幹部に二度も訪問されるという始末だ。


「う~ん、そうねぇ」

「そういうことだ」


 美佳さんも困ったように頭を悩ませる。一方ロードは堂々とした態度である。

 いくら正義の味方になると言っても、元悪の幹部だ。はいじゃあ今から正義の味方でとはいかない。


「一応面接してみようか」

「ん? ああ、問題ないな」


 そんなものあるんだ。私は面接なんかした覚えはないですけど。初耳だった私は言葉を挟む。けれど美佳さんはしれっと答えた。


「ああ。桜ちゃんは、いわゆる裏入学みたいなもんだから」

「全然意味が分からないです」


 そんな抗議もあっさり無視され、ロードの面接が始まった。とは言ってても、少し間取りを片付けただけで面識という雰囲気は全くない。


「じゃあ、まず志望動機は?」


 って、何で私が面接官なんだろう。ぱぱっとセッティングされると、私は面接官の位置で渡された紙に書かれた項目通りに質問した。


「桜と一緒にいたいからだ」

「………」


 うぅ、何でそんなにはっきり言うかな。少しは恥じらえばいいのに。真剣な表情で言うから、こっちのほうが恥ずかしくなる。やっぱり美佳さん変わってくれないかな。

 ヘルプを求めたのだが、美佳さんは何やらにやにやしてこっちを見ている。

 ……助ける気がないどころか、絶対に楽しんでますね。


「コホン、えと、では、あなたの得意なことを教えてください」


 私は気を取り直して渡された紙の次に書かれた文字を読む。


「敵を殺すことだな」

「駄目!」

「な、何故だ?」

「あくまで敵は倒すだけ。そのあとに和解するんだから」

「和解なんかするより、てっとり早いんだが」

「それでも……あ」


 美佳さんが「いいから次」と横から指令を出している。仕方なく私は、次に読み進める。


「えと、あなたは正義の味方になって何がしたいですか」

「ふ、もちろん、桜をこの手で白昼歩けないくらいに手込めにするに決まっている」

「ぶっ!?」

「あ、桜ちゃん……?」


 な、な、何をするつもりなんだこいつは。冗談じゃない。


「不合格です!」

「何故だ」


 本気か。真顔で訊いてくるあたり、意外に馬鹿なのかもしれない。これで合格にするはずがない。


「桜ちゃん、まだ聞いてないことが……」

「聞かなくていいです。絶対不合格です。何が何でも不合格です」

「待て待て、まだ俺は……」

「問答無用! 不合格!」


 ロードがショックを受ける。ガ~ンとでも効果音がぴったりなくらいだ。けど知ったことじゃない。仮に正義の味方になるようなら、私の貞操が危なくなる。


「く、なら仕方ない。取引しようぜ」

「む?」


 すると引き下がらないロードはそんなことを口にする。いったい何だというのか。


「分かってないようだから言ってやるが、俺は幹部だぞ?」

「それが?」

「つまりだ。組織の内部事情はかなり網羅してるというわけだ」


 そ、それは確かに。それが分かれば戦いはかなり有利になって、早くに私もこんな戦いとの二重生活からおさらば出来る。というか多分……あ、やっぱり美佳さんが瞳を輝かせてこの話に飛びつきそうだ。


「桜ちゃん」

「……はい」


 嫌な予感しかしない。とにかくロードには聞こえないように部屋の隅に呼ぶので、素直についていく。口元に手をやってこっそりと耳打ちされる。


「桜ちゃんお願い」

「な、何がお願いですか」

「分かるでしょ。私も早くこの戦いを終わらせてしゅっ……あ、いや平和な街を取り戻したいの」


 しゅっ……って何ですか。明らかに言い直した美佳さんに疑いの眼差しを送る。まさか出世とか言おうとしたのではないか。そんな追求をしようとするのだが、美佳さんはスルーして頼み込む。


「桜ちゃんも早く普通の学生になりたいでしょ」

「うぅ……」


 それはそうなのだが。さっきの面接で了承出来るわけもない。既に初めてのキスも奪われたのに。


「お、そうだ」


 と、姿勢を崩して行儀悪く椅子に座るロードが私達を呼ぶ。何事かと思えば、ロードはこれから正義の味方になろうとするどころか、悪の幹部らしすぎる言葉を吐いた。


「入れてくれないなら、このアジトのこと話しちまうかもなぁ」


 赤髪をかき上げながらニヤニヤと憎たらしく笑う。お得意の脅迫らしい。そんなの選べるわけがない。


「桜ちゃん。せめて新しいアジトが出来るまで何とか」

「ぅ……は、はい」


 何でこうなるんだろう。私は何も悪いことしてないのに。


「よっし。いやぁこれから楽しくなりそうだなぁ桜」


 人の気も知らないでロードは気安く近付いてきた。


「うるさいっ! このっ!」

「おっ、おっ」


 腹いせにせめて殴ってやろうと思ったのに、ロードは全部避わしてしまう。やはり戦闘力は雲泥の差だ。余計惨めな気分になる。


「ぅ……わぁぁ~ん」


 泣きそうになってしまい、そんなところを見られたくない私は身を翻して逃げてしまった。


「お、おい?……なぁ今の俺が悪いか?」

「うーんまぁ、桜ちゃんの立場を考えると、難しいわね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ