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取引デート

「はっはっは。可愛いと思ったら面白いなお前」

「うるさい、笑うな」

「わかった、わかった。早く変身しろよ」

「ぐっ……、馬鹿にして」


 とは言っても変身しないと武器がないからまともに戦えない。一見腕時計にも見える、腕に填めた変身道具を構えて変身を発動した。


「なっ……」

「ほら捕まえた」

「く、卑怯だ」


 変身を始めて隙のあるところを狙われた。ガシッと左腕つかまれる。


「あ……」

「悪いな。さすがに変身されると面倒なんでこいつは俺が預かってやる」


 あっさりと変身道具を取られてしまう。あれがないと変身が出来ないのに。


「返せ」

「今は駄目だ。ちゃんと付き合ってくれたら返してやるよ」

「くっ」


 腕を伸ばしてもひらりと避わされる。ただでさえ身体能力に差があるのに、変身できないんじゃ余計に何も出来なくなる。


「じゃあ行くか」

「絶対に行かない」

「ご、強情な奴だな」


 どっちが強情なんだか。変身道具は適合した人物、つまり私しか使えないし、美佳さんに頼めばまた作ってくれることは聞いている。


「とにかく、絶対に行かないから」


 今回は見逃して、また改めて倒せばいい。道具も作ってもらわないと。ロードを相手にすることなく、きびすを返して歩き出したところ、不吉な言葉が聞こえてきた。


「んじゃあ、正体をばらすって言ったらどうする? 相川桜ちゃん?」

「……!?」


 本当の名前というか、正体の名前で呼ばれる。本当にばらすと脅しているのだとすぐに察知した。もったいないけど道具は諦めてもいい。だけど、正体は? それだけは絶対に駄目だ。


「さぁ、どうするんだ?」


 見ればロードは、にやにやと笑っている。私から奪った道具をくるくると回しながら。


「この、卑怯者」

「いやいや。だって俺、悪の幹部だし」


 笑って返してきた。むむむ……。せめてもの罵倒をふりかけたが、全く効果がなかった。納得など出来る筈もないけど、大人しくついて行くしか、私には選択肢がないようだ。





「………」

「おいおい何でそんなにむすっとしてんだよ」


 嫌だからに決まっている。しかも、街を歩いているだけなのに何故手を繋いだままなんだ。


「いい加減手を離してよ」

「繋ぎたいから嫌だ。正体ばらすぞ」


 めちゃめちゃ良い笑顔で答える。だけど言ってることは脅迫に他ならなくて、まさに悪だ。


「あ、金なら気にすんな。けっこう持ってるから」

「誰が気にするか」

「おぉう……。なんて迫力だ。正義の味方なんてやらないでこっち側に来ないか?」

「行かない!」

「まぁいいや。あそこ入ろうぜ」

「ちょっ……」


 話の流れも関係なく、手を引かれる。戦ってきた敵なだけあって力が強くてそのままついていくしかなかった。


「とりあえず制服もいいけど、何か好きなのに着替えろ」


 服屋に入ったかと思うと、そんなことを言ってロードは私のすぐ後ろに立つ。私が少し右に動くとロードも右に動く。かなり大移動してみると、ロードもそのままついてきた。監視されているというか、監視する気だ。


「ひ、一人で選べるから」

「いやお前見てなかったら逃げるだろ」


 うっ……。完全に読まれている。これだけついてこられてたら逃げ出す隙がない。


「お、これでいいじゃん」

「えぇ?」


 選べと言ったくせに、いきなり自分が選んだものを押し付ける。そしてグイグイと試着室へと押し込まれた。


「早く着替えないと俺が着替えさせてやるからな」


 な、何を言ってんの?

 ぅ~。これじゃあ着替えるしかない。まぁ着替えるだけだし、買ってくれるみたいだから別に…………。

「こ、これって」


 渡された服を広げる。こ、こんな服が着れるわけがない。ロードが押し付けた服は、胸元がかなり開ききっていて、下はかなり短いスカートだ。


「お、着替え終わったのか。って何だまだ着替えてないじゃないか。もしかして着替えさせてほしいから来たのか?」

「こんな服が着れるかぁ!」

「ぐはっ」


 射抜くように鋭い拳をロードの顎に向けて放つ。見事打ち当ててやった。


「う~……」


 とはいえ、正体をばらされるという、最大の弱味を握られているのだから勝てるわけがなかった。結局今まで着たことがないような服を着る羽目になる。


「あのな。可愛くなったんだから堂々としろって」

「……!?」


 少しうつ向き気味に歩いていたところ、いきなり顔に手を沿えられてそんなことを言われてしまう。


「う、うるさい。関係ないでしょ」


 間近で見ても整った顔立ちのロードの顔がまともに見れなくなって顔を背けた。


「んじゃ次はそうだな。映画でも見るか」

「まだやるの?」

「バッカ。これからだろ」


 正直既にクタクタだ。さっきからちょっと周りからの目線が気になるし。早く家に帰りたい。


「で? これを見るの?」

「あぁそうだ」


 映画館に着いてみれば、まぁいくつか候補がある。最近特に見たいと思うものはなかった。乗り気にはなれなるはずもない。そしてロードが選択したのは、戦隊ものだった。実際に自分が似たようなものなのに、それを映画で見るというのは複雑だ。てか、悪の幹部がこんなもの見るのか。

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