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宿敵現る

 ただでさえ緊急要請でモモレンジャーとして駆り出される為、出席が少し心配になる。授業だって復習を続けても、ついてけてるか分からない。途中からでも学校に行って授業に参加したというのに、全然頭に入らなかった。うぅ、どうしよう。


「絶対あいつのせいだ」


 原因は分かっている。どう考えてもあれしかない。私のファーストキスを奪っておいてへらへらしてた黒甲冑のせいだ。今度会ったら絶対に叩きのめしてやると決意する。具体的にどんな目に合わしてやろうかなんて考えながら帰路を辿った。

 私が今帰る場所は、私達正義の機関の隠れ家だ。親には、こんな危ないことは内緒にしている。美佳さんが一時的に保護者になってもらうことで、親とは離れて暮らしている状態だ。具体的にはどんな取り決めがあったのかは知らない。以前尋ねたところ、何やら危険を匂わす話が出かかったので聞かないことにした。

 そういえば私がこんな正義の味方なんてことをやるようになったのも、わりと無理矢理、強制的に入れられたんだっけ。

 う~ん、あの時のことは思い出すのは止めよう。親ともちゃんと連絡を取り合っているし、特に険悪でもなく、良好な関係だ。というか、前に実家まで帰ったとき、何故か車は三台になっていた。えらい豪勢な食事は出てくるし、家の中の物はけっこう新しいものでいっぱいだったような。

 や、止めよう。今はそんなことより、ロードに対する復讐だ。


「よぉ」

「ふぇ?」


 誰かを呼ぶ声が聞こえた。その声に反応して顔を上げると、見知らぬ男がいるだけだ。おそらく私のことではないだろうと、私はまたロードとの戦いのイメージトレーニングを行いながら歩き出す。


「おい。待て待て。何で無視するんだよ」

「……?」


 ちょうど、さっき確認出来た男とすれ違って行く時に言われたので、一応振り向いてみる。

 すると、男も私の方を向いていた。キョロキョロと周りを確認し、自分なのかなと指を差して尋ねた。


「当たり前だろうが。お前以外に用があるわけないだろ」

「はぁ……」


 何だかよく分からないが、男は私に用があるらしい。私は全くお会いした覚えがないのだけど。しかし、何だか初対面なのに、いや、仮に初対面じゃなかったとしてもだ。随分と偉そうに物を喋る人だなぁと言う印象を受けた。


「何だ。思ったより普通だな。てっきり大分落ち込んでるか、怒ってるかと思ってたんだが。もしかしてそんなに嫌じゃなかったのか?」

「???」


 ますますもって分からない。いったい何を話しているのだろう。私としてはまず誰なのか知りたいところだ。


「あの、すいません。以前何処かでお会いしましたでしょうか?」


 出来るだけ勘に触らないように努めた言い方をした。男はどうしたのか、目を見開いて驚いている風に見える。


「あ~~、あ~~。何だよ、お前分かってなかったのか。ちょっと待っとけよ」


 そう言って、何やら肩から提げた鞄を探っている。よく分からない私は待ってみた。


「どうだ? これで分かるか?」

「ん?……あ……あぁっ!」


 男が取り出したのは兜だ。ちょうど目と鼻あたりを隠すものだ。その上からは赤い髪が撥ねる。黒い甲冑の代わりに、随分とラフな一般人と同じ服を着ているが、間違いない。こいつ、ロードだ。


「よ、よ、よよよく、よくもまぁ、私の前にのこのこと出てきて……」

「お前に会うためだよ」

「……え?」


 な、な、なな何言ってんのこいつ。いきなりそんなわけの分からないことなんか言って。臆面もなく、よくそんな恥ずかしい台詞が言えたものだ。


「今日俺もうオフなんだ。どっかに行かないか?」

「はぁ?」


 えと、つまりはどういうことなんだろう。悪の組織の幹部のくせに、オフとか存在していたのか。じゃなくて、どっかに行こうってことは遊びに行かないかって誘っているわけで、つまりこれはデー……ト?


「な、なな何ワケわかんないこと言ってんの。あんたは悪の組織で、それで私は正義の味方。私とあんたは敵同士なの。てきどうし」

「関係ねぇだろ」


 えぇ~! 何これ。

 敵同士って普通、そんな一緒に遊びに行くわけないし、ましてやで、ででデー……トになんか行くわけない。


「か、関係なくない。そ、それに私は行かないし」

「あっそ。まぁそれも関係ねぇけどな」

「は?」

「勝手に連れてくし」

「くっ……」


 腕を掴まれそうになったので身を翻して避けた。


「む、俺に歯向かう気か」

「あ、当たり前でしょ。誰が言うとおりになんか。それにさっきの件もあるし、あんたは此処で倒す」

「さっきの件ってキスのことか?」

「わぁ~~! 言うな言うなぁ!」

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