最強の力が大暴れ
「ダークインフェルノ号だけはお兄様が搭乗される前にやっつけなさい」
マイクの大音量でネオンの指示が響く。せっかくロードのダー何とかが来たのに、このままではやられてしまう。新たに現れた砲門が狙いを定める。その時、攻撃準備に入る砲門に再びレーザーが襲う。
「させねえよ」
「今のうちに乗り移れ」
幸樹さんと優斗さんがそれぞれ援護して時間を稼いでくれていた。
「ナイス。じゃあ今のうちにそうさせてもらうか。行くぞ桜」
「う、うん」
二人が俊敏な動きでネオンたちを撹乱する。その間に、私とロードは変形を済ませたダー何とかに乗り移る準備を行う。
「あぁ、もう。ハエみたいにうっとうしいですわね。何を手間取っているの。早く撃ち落すのよ」
ネオンの気が逸れている間に、ロボへと姿を変えたダー何とかの傍に機体を寄せる。絶妙な運転捌きで、ロードはロボの胸元あたりで、機体の空中静止を維持させた。そのまま私とロードは、何とか機体を乗り移る。
「よし。やっぱりこれがしっくり来るな」
正直私には、さっきの操縦席と何が違うのか見分けが付かない。それは、ロードが充分に乗りこなしていたからだと思う。そして、しっくり来ると口にするあたり、ロードはおもむろにこのダー何とかも巧みに操り始めた。
「行くぜネオン」
「お、お兄様がダークインフェルノ号に。く、構いません。このままやっつけて……」
マイクから発せられるネオンの声は途切れてしまう。ネオンが指示を出す合間に、ダー何とかの胸部から射出された超特大ビームが、敵の一体を焼き焦がしてしまったのだ。赤く光る特大の光線である。
「撃破!」
「く、なんてチートなんですの! せっかくの特殊合金が全く意味ないですわ」
焼き焦げた機体はヨロヨロと宙を漂う。そして、力尽きたように、チュドーンと落下してしまった。
「さぁ、覚悟しろよ」
「く、あの『死ね死ねビーム』に気を付けなさい」
「わははははっ!」
何て酷いネーミングだ。そして、まるで水を得た魚のように、ロードは高笑いして暴れ始める。
「魚雷ミサイル!」
「デッドオブヘッドパッド!」
「ダークネスバスター!」
「ガトリング百烈拳!」
背中から大量に射出されたドクロマークのミサイルで一機を撃破。
執拗に追いかけたあと、二度、三度の頭突きで一機撃破。
明らかに無理がある構図だが、何故か飛行艇型の機体に掴み上げると、地面に向かって落下した。というか、これ。まさかスタイナー・スクリュー・ドライバーのつもりか。おじいちゃんの影響で私も覚えてしまったが、何故今プロレスの技を。全く意味があると思わないが撃破してしまう。
さらに、最後の一体は目に止まらぬほどの連続パンチを繰り出して一体撃破した。って、いつの間にか腕が四本になってるんだけど。もう何でもありである。
止める間もなく、かなり大暴れした甲斐あって、ネオンの機体を全て撃墜してしまった。
「こんなのズルいですわ。チートですわ!」
パラシュートで脱出出来ているあたり、ロードの妹だけあって流石である。
「倒してくれたのはありがたいけど、いくら何でもやりすぎ!」
ネオンがチートと悔しがるのも少し分かる気がしてしまう。街はボロボロだが、何とか戦いは終わった。
このまま復興作業も手伝ってくれないかと思うところである。
「さ、もういいでしょ。早く下ろして」
とりあえず皆の無事を確認しないといけない。そう思って、前のロードに声を掛ける。だけど、ロードはまだまだ暴れ足りないようだ。
「いや、まだだ。このまま乗り込む」
「は?」
一体何を言い出すのか。
「カルマもネオンも親父の差し向けだ。このままじゃ他の兄弟もやって来るに違いねぇ。こんなのいちいち相手してられねぇからな。このまま直接親父のところに乗り込む。んで桜との結婚を認めてもらうしかねぇ」
「ふ、ふざけないで! 誰があんたなんかと……わわっ!」
急に動き出したので私はバランスを崩してしまう。思いっきり否定したかったのだが中途半端になってしまった。そもそも付き合うなんて言ってないのに、な、何で結婚なんて話に……。
「俺と桜の仲は邪魔させないぜ」
「下ろせー! 人の話を聞けー!」
シートベルトが外れなくて、私はまるで拘束されてるかのように動けないでいた。これどうやって外すんだ。付けるときはあっさりだったのに。ガチャガチャと力任せに外そうするけど、ビクともしない。
全く人の話を聞かないロードは、意気揚々と機体を動かす。ガシャガシャと音を立てながら、何処にいるのかも分からない魔王の元へと乗り込んでいく。いや、私にとっては誘拐に等しい。
「わはははは!」
「うわーん! 助けてー!」
そのうち助走をつけたダー何とかは、シュバッとジャンプすると、何とロボの状態のまま空を飛んでいた。
「魔王様。ロード様がこちらにやってきます」
「ふん。さすが我が息子だ。カルマやネオンでは倒せなかったようだな。だが、大勢の部下を配置し、たくさんの罠を張り巡らしたこの魔王城を攻略して、私を倒すなど不可能だ。いつでも……」
空飛ぶ魔王城に向かって特大光線を撃つと、魔王城はあっけなく海へと落ちてしまった。
「わはは、どうだ。思い知ったか」
「え、こんなあっさりでいいの?」




