ガラス球の中の妖精
昔、腕のいいガラス職人がいた。
ある日、彼は海色のガラス球を作った。
それは人々の手に渡り、小さな少女の手に渡った。
宝石よりも美しい海色のガラス細工。
少女が光に透かしてそれを見ていると、気づいてしまった。
その美しいガラス球の中に、妖精が閉じ込められていることを。
そのガラス球は、いつの間にか人外の者をひきつける力を持っていた。
それに引かれて妖精が遊んでいると、その中に囚われてしまったのだ。
それを少女は聞くと、そのガラス球を壊そうとした。
しかし、妖精は壊さないでと哀願した。
なんで? これをこわせば、きっとおそとにでられるよ?
でも、美しい宝石が壊れてしまう!
だから、壊さないで。
どこにも行けない妖精に、少女はガラス球ごと一緒に連れていった。
独りぼっちの妖精に、少女は毎日話しかけた。
いつの間にか妖精と少女は仲良くなっていた。
ある時、商人がその妖精が捕まってしまったガラス球の存在を知り、それを欲した。
もちろん少女はそれを嫌がったが、意地の悪い商人は姦計をもってそのガラス球を手に入れたのだ。
妖精が閉じ込められたガラス球。
それは、とても面白い見世物。
しかし、ガラス球は意地汚い客によって割られてしまった。
妖精と共に。
少女はそれを知ってそのわれてしまったガラス球を取りかえして、一生懸命直そうとした。
どうにか元通りになったガラス球。
でも、そこにもう妖精はもういなかった。
ばらばらになったガラス球。
何処までも綺麗に直しても、壊れたことは変わらない。
どこか歪で歪んだ硝子玉に、妖精はもういない。
直したところで、もういない。
妖精は逃げてしまったのだろうか。
それとも、消えてしまったのだろうか。
ぼろぼろ泣きだした少女に近づく影がありました。
優しい子。泣かないで、私の友達。
それは、小さなあの妖精。
少女と妖精のその後のことはきっと誰でもわかると思うから、ここでは語りません。
きっと、笑顔で暮らしたのでしょうね。
おしまい