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第弐話:殺すのに戸惑いを覚えたら負けかなと思っている

草木も眠る丑三つ時。アプルスはその時間に起きてしまった。

ピトフーイが何処かへ出かけたからである。

彼はこの世界に召喚されて、まだ1日もたっていない。なのに何処へ出かけるのか、アプルスはそれを疑問に思った。

だが、アプルスは以外にも暗い場所が苦手だった。

なので寝る時は炎の魔法石(魔法石とは、魔術の力が封じ込められている石で、自然石と人工石がある。その説明はまた、いずれするとしよう)を起動させていた。

そのせいか、この部屋だけは凄く明るいのだ。


「気になるが、出かけて幽霊とか出たらどうしよう…。

いや、でも今回を逃したら、アイツが何をしようとしてるか分かるだろうし、何よりもう目が覚めてしまった。こうなったら行くしかない!」


アプルスは心の中で、「幽霊なんかいない、幽霊なんかいない」と繰り返し、呪文のように唱えた。

そして炎の魔法石の入ったランタンを右手に持ち、その部屋を出た。


廊下は昼間見た時と違い、まるで死んだように静かだ。

勿論それは、全員が寝ているからなのだが…。

彼もそれを良くわかっている。だが頭で理解しても、もしかしたら幽霊に襲われて…と考えてしまっていた。


そしてアプルスは、ピトフーイを見つけた。どうやら森の方へ向かっているようだ。


「怖くない、怖くない。お化けなんて迷信だ…」


彼はその言葉を、繰り返し、繰り返し唱えた。

勿論それでもし、幽霊が居たとしても効き目は無いだろうが…。



「ハロー、スパイさ~ん?なぁ~にしてるのかなァ~?

おやおや、逃げるのかい?そっちは危ないよ~」


彼、ピトフーイは偶然見つけたスパイを楽しみながら剣でそこらを適当に切った。

スパイには当たらないよう、細心の注意を払って…。

彼がスパイを見つけたのは、森で毒を持つ生物を採取していた時だ。

何か巨大な生物の足音の様なのが聞こえたので、聞こえた方に向かって行った。ただそれだけだ。

そして彼の剣には、貧乳の幼女に見える女性…アテナに頼み、自分が趣味で集めていた毒を調合し、もっとも毒性の強い毒を創りだしたのだ。

それを寝る前に、剣に塗っているので、切られたら最後、命は無い。


効き目は折り紙つきで、試しに襲ってきたオークの腕に少し切り口を入れると、たちまちそこから炎症を起こし、骨が砂のように崩れ泡を吹き、死に至らしめてしまう。

譬え助かったとしても、何か小さな毒、例えばキノコ類を食べた瞬間、体の内部にてアナフィラキシーショックが起こり、死に至らしめる。

それが彼の創りだした毒である。


そして彼は見せしめに、目の前で偶然そこへ居たウルフェン(オオカミの妖怪と人間を混ぜたような生物。基本的に人間に害を及ぼさない)を切り、死ぬさまを見せつけた。


「ひ、た、助け━━━」


「聞いたところによると、君の国とこの国とでの戦争が今、行われてるらしいね。そんな楽しいイベントをやってくれた敵国に、何かプレゼントを渡さなくては…。

さて、何が良い?君の首?それとも腕?まあ、胴体とか箱にしても面白そうだけど━━━━」


「おい、何してんだ!」


彼がスパイを切り殺そうと、剣を振り下ろす刹那、彼の剣が弾き飛ばされた。

ピトフーイは一瞬、何が起こったのか理解できなかった。

それはそうだろう。アプルスがスパイを守ったなんて、理解できない。


「何をする。そいつは敵だぞ?」


「例え敵だったとしても、むやみやたらに命を奪って良いという事にはならない!」


ピトフーイは少し考え、こう言い放った。


「そうだな、毒の実験はもう済んだ。ならこいつは…とりあえず捕虜として捕まえるとするか」


ピトフーイは呆れたように息を吐きつつ、そう結論を口にした。


「さて、そろそろ寝るか。アプルス、お前が決めたんだ、こいつはお前が連行しろ」


「…仕方ない、行くぞ」


「あ、ありがとうございます」


そしてこの時、アプルスは思いもよらなかっただろう。

この捕虜が、ピトフーイが行おうとしていた事よりもっと悲惨な結末を迎えてしまう事を……。

ピトフーイはその事に気づかないアプルスに対し、軽蔑の意味を込めて笑った。

だが、彼がそれに気づく事無く、彼等はしばしの微睡みに身を委ねた。



次の日。と言っても彼が再び寝たのは朝3:34分だったので、実際は次の日ではないのだが…。

まあそれは今関係無い。

今の時刻は朝4時。兵士の朝は早い。


そして彼等の部屋、そこには寝ぼけ眼のアプルスと、何故か元気いっぱいのピトフーイが居た。


「……何故、お前はそんなに元気なんだ?全く寝てないってのに…」


「慣れてるからな。うし、かつを食いに行くか!」


「朝からそれは重いな」


ピトフーイは「そうか?」といった顔をし、アプルスを連れて豚かつを食べに行った。

道中、アレースも連れてかつを食いに行き、支払いを彼らに任せ、ピトフーイは逃げたのはまた、別の話。



「と、言う事ですね。あ、ギルドにでも入ったらどうですか?」


「面倒なのでパス。つか姫様、俺あんたの名前知らんぞ」


「あ、そういえば名乗ってなかったですね。私の名前はエルフ、エルフ=ゾロアスターと申します

あ、そうだ、デウス王国の英雄が持つといわれる聖剣が欲しいです。手に入る機会があったら盗ってきてください」


「へー、そうなんだ。そういや、俺も名乗ってなかったな。ピトフーイ、ピトフーイ=テトラクロロエチレンだ。聖剣の件については…考えとく。さてアテナ殿、魔導書を読みたいのだが」


それを聞き、アテナは待ってましたとでも言わんばかりの勢いで椅子を立ち、ピトフーイの手を握り、まるで遊園地に来て燥ぐ子供のように、魔導書の保管されてるところへ案内した。



そこは、彼が好むようなジメジメとした、だがどこか乾いた感じのする場所だった。

彼はとりあえず、錬金術と書かれた本を手に取った。

題名は、不死の能力と奴隷を創る道具…。

その本を見、アテナは何故か慌て、その本を奪い取った。


「何をする」


「こ、これは危ない錬金術ですよ!なんでこんな本を持ってくるんですか!奥の方にしまっといたのに!」


「……ドラゴン○ールの棚の隣にあったぞ」


それを聞き、アテナは一つの事を思い出した。

そう、庭の方から猫が居るという声が聞こえたので、とりあえず読んでいた本をそこへしまったのを…。


「ま、とりあえず読ませてもらうぞ。なんかギルド専用とか書いてあるが…」


「あ、それはギルドの人しか読めないんですよ。あー、慌てて損したー」


それを聞きピトフーイはすぐにある事を決めた。


「そうだ、ギルド入ろう」


「え、いやえっ?軽いなオイ」


そう言われ、彼は何故か照れ臭そうに笑った。

それを見、アテナはこうツッコんだ。


「褒めてない、褒めてないからね」


彼は五冊くらいの本を鞄に詰め、ギルドへと足を急がせた。


「清々しいほど大っぴらに盗むのね。というか、このカードに書いてくれないt「あっはは、とりあえず俺はギルドへ行くぜ!」聞いてるー!?」


勿論聞いてない。なんせ彼は楽しい事に首を突っ込みまくる人間だからだ。

それを見アテナは、諦めたような顔で彼の後を追った。



「此処がギルド、デカいな」


「まあ、この国が管理してますからね。まずギルドの証明書を発行しなきゃいけないですよ」


「発酵?俺梅干しとキムチしかつけた事無いぞ?」


「違います、発酵じゃなくて発行です。というか、ややこしいな」


青い旗の付いた、大きなテントのような場所。

アテナを連れ、ギルドの中へと入って行った。


そこは酒とたばこ、そして火薬の臭いが充満している場所だった。

此処が本当に、国が管理しているギルドとは到底思えなかった。

だが此処は、彼好みの臭いが充満している…どうやら気に入ったようだ。


「えーっと、初めての方、ですよね?ギルドの証明書発行をご希望ですか?

なら発行金としてまず17万パニヒダを支払ってもらいます」


「つう事でアテナ、よろしく~」


「はぁ、仕方ないですね。はい、17万。そういえば、なんで17万なんていう中途半端な値段なんですかね?」


「今年はダニアース買いすぎて金欠で…」


何故ダニアースを…と、ギルドに居る人はみんなそう考えた。

そして少し考えた後、考えても分からないという結論に至った。


しかし彼、ピトフーイは他の事を考えていた。

パニヒダと言う名前の通貨…聞いた事のある名前。

もっとも、彼はすぐにどうでもいいという結論に至ったが…。


「では、ようこそジェノサイド王国のギルド、レクイエムへ!

あ、ギルドの説明をさせてもらいます。

ギルドでは基本、三人のパーティーでクエストを受けてもらいます。

あと、命の保証は致しかねますので…そこんとこ、適当によろしくお願いします」


「適当って、此処結構適当だな。大丈夫かこのギルド」


「大丈夫ですよ。なんせ今まで問題が起こった事なんて数回しか無いですから」


数回あるんだ、とピトフーイは思った。



「んじゃ、早速チームを…」


「ほー、新入りかい?どうだボウズ、俺と組まないか?

なあフォース?」


「……人数合わせか、パイロ」


「火ッ火ッ火ッ火、んな訳ねーよ。数合わせならもっとマシな奴を連れて行くさ」


声のした方を向くと、黒い帽子に赤の服、そしてズボンの右のポケットに、煙草を入れた。赤い瞳をした火薬の臭いのする人間と、尖った耳が特徴の、青い帽子と青い服といった青い瞳の、海のような臭いのする青年が立っていた。

どうやらピトフーイをパーティーに誘っているようだ。

そして、彼が断わる理由が無い。勿論彼は即答で、「ああ」と言った。


周辺からは「あいつ等と組むとか、命が惜しくないのか新入りの野郎」「あーあー、ご愁傷様だなこりゃ。もう明日から来なくなるぞ」と聞こえた。


「さて、早速だがクエストだな新入り。まずは軽くオークでも…」


「ショボイな、俺は新しく作った毒の力を試したい。こいつでも殺ろうぜ、先輩」


ピトフーイはパイロの選んだクエストを即答で断り、より難度の高いクエスト…デウス王国の英雄、デウス・エクス・マーキナーに勝つ、と言ったクエストだ。

勿論勝利方法にこれと言った制限は無い。だがそのクエストの難易はA級。下手すれば最高ランクのS級をも凌駕する敵が居たりするのだ。


「おいおい、流石にこいつァ…」


「あっはは!先輩、大抵の英雄は正々堂々でないと勝てない、つまりただの馬鹿なんすよ。

奴を倒すのは簡単っすよ。あれ、もしかしてビビってます?」


ピトフーイが挑発的に聞くと、半ば喧嘩腰にパイロはそのクエストを受けた。

若干受付の人が涙目になっていたが、ピトフーイは彼女に心の中で少し同情しつつ、目的地へ向かった。


「んじゃアテナ、俺ちょっと殺ってくるわ。姫様に晩飯はいらんって言っといて」


「はいはい。あ、そうだピトフーイ、デウス王国周辺には美味しい果実が実るって言うので、それ取ってきてください」


アテナの願いに対し、手で返しつつ彼等はデウス王国へ向かう為、馬と鳥を足して2で割った感じの生物が引く、馬車へと乗った。

ピトフーイは、腰に奇妙な紫の粉を持って…。


「ボウズ、足引っ張るなよ?」


「ボウズじゃねえ、俺の名前はピトフーイ、ピトフーイ=テトラクロロエチレンだ」


「……毒鳥の名前か、良き名前ではないな」


「気にすんな、この国だってそんなに縁起のいい名前ではないんだからな!火ッ火ッ火ッ火ッ!」


ピトフーイは、剣に毒を塗りつつ彼らに自己紹介を行った。


「火ッ火ッ火ッ火、俺の名前はパイロ=フロギスだ。よろしくなポイズンバード君」


「……私の名前は、フォース=ポンリング」


「ポンデリング?」


「ポンリング!!」


「あ、そう。さて、着いたぞ。……デカいな」


大きな家が立ち並ぶ城下町が見えてきた。

あたりにオークやらオオカミと人間を合体させたような生物が見える。

ピトフーイは試し切りとして、オオカミと人間を合体させたような生物を真っ二つにした。


「…これ、なんていう生物だ?」


「たしか…ウルフェンだったな。焼いたら美味いぞ」


ピトフーイは生のまま、ウルフェンの頭にかぶりついた。

彼の口の中に、血なまぐさい臭いと新鮮な生肉の味が広がる。


「美味いな。さてパイロよ。今日はこの辺で寝るぞ」


「野宿かい!」


「一度やってみたかったんだ、野宿」


「というか、すぐそこに町が有んだからそこで寝たらよくないですか?」


フォースの提案に、「ああ!」と言った顔で反応するピトフーイ。

その時、パイロはこんな事を考えていた。


こいつ、本当は馬鹿なんじゃないか?と。


もっとも、この後ピトフーイの策略によって、いともたやすくデウスに勝つのだが…。

そう、最も卑怯で、最も勝率のある。普通の人間ならこれだけで容易く勝てるという戦法。しかし、その手は卑怯すぎて、誰も行わなかったのを。


「さて、明日は奴の家を探すぞ。クックククク……」


「火ッ火ッ火、頼りにしてるぜ」


「…嫌な、予感が…」


その晩、彼の笑い声が城下町の宿に響いた。

その声は、まるで悪魔のようなと、宿の主は言った。

どうも。シオンタウンの曲が大好きなナムです。

今回は少し詰め込み過ぎたと自分でも思っておりますが、まあそこは気にしない方向で…。


さて、次回は外道すぎる方法で敵を殺します。

理由?金以外に何がありますか?ふっふっふ…。

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