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序幕

初投稿です。

素人が頑張って書いているだけです。面白くない可能性が非常に高いです。

また、新しい話がなかなかできないこともあります。

これらのことを理解してお読みください。

※この物語はフィクションです。作中に登場する人物・組織・団体その他もろもろは、現実とは一切関係の無いものです。

 私の名前は『嶌村利賢(しまむらりけん)』。

 世間では『岡本健一(おかもとけんいち)』という名で有名だ。

 というのも私はライトノベル作家で、岡本健一はペンネームである。

 当初、本名がかなりめずらしい名だと思ったので自分の名前をペンネームにしようとした。

 だが、友人や身内に知られたくなかったので結局『岡本健一』にすることに。

 今はこの名前をなかなか気に入っている。理由は特にないが。

 結果的に友人や身内には知られていないようなのでよかったとは思っている。

 私が現在執筆している『日本近未来史』。SFとミステリーを融合させた作品で、自分で言うのもなんだが、なんとバカ売れしている。

 この本のあらすじは、おおまかに述べると『一人の主人公とその仲間たちが近未来の日本に出現した犯罪組織に立ち向かう』、という単純なもの。

 自分でもこんなに売れるとは思っていなかった。

 私は推理小説が好きなので、その趣味を全開に出して書いた本なのだが、世間にはこれがウケたらしい。

 過去に何冊か小説を書いてはいたのだが、どれも売れた、とは言い難いもの。

 すべて私のもてる力を総動員し、真剣に書き上げていたのだが、売れなかった。

 もう27歳になるので、そろそろ「売れなければ小説家をやめてちゃんとした職につこう」と思い、最後に自分の好きなように物語を書いてやめよう、と心に決めたのだった。

 それだけに、今回の小説が売れたのは正直、複雑な気持ちだ。

 まあ、堅苦しい文章より、わかりやすくて読みやすい文章のほうが受け入れられやすいからなのだろう。

 ただ、好きなことを続けられるのは不幸中(?)の幸いである。

「先生、どうしたんですか」

 突然声をかけられる。そうだ。私は今仕事中だった。

「なんでもないよ。ちょっと疲れただけさ」

 軽く返事をする。

 今の声の主は『天井輝行(あまいてるゆき)』。小説の挿絵を描いてくれている。

 彼はなんと16歳。世間から『天才高校生イラストレーター』と呼ばれ、私以外の作品も担当していると聞いている。仕事では『SWEET(スウィート)』という名前だ。

 画力は確かで、描くスピードも速い。私の小説が売れたのも彼の力が背景にあるからだと思っている。

 彼は普段私のことを「先生」と呼び、私は彼のことを「(あま)ちゃん」と呼んでいる。

 余談だが、私も執筆速度が速いほうなので、彼にはけっこう負担をかけてしまっている。だが、それでも彼は私の要求に忠実に応えてくれる。

 さっきはたぶん、いつもは執筆の手が止まらない私がぼーっとしていたのを不思議に思ったからだろう。

 彼は本当にまじめで、思いやりのある青年だ。とても高校生とは思えない。驚異的なほどに。

 私にとってこんなに心強いサポートはないと言ってもいい。

 さらに、担当者も『野村三司(のむらさんじ)』さんという、DG(ドラゴン)文庫でも有名な作家を多数輩出している担当。ちなみにDG文庫とは、有名な出版社のひとつで、私の本を出版してくれているところだ。

 こんなふうに私の周りはとても恵まれている。これは本当に運がよかったと言えよう。

 とにかく、周りの人の多大な力で私が売れたことをわかっていただけただろうか。

 ――いかんいかん、仕事に戻らねば。今日の予定は…っと。

 午前中は天ちゃんとともに執筆。午後からは大峰書店でサイン会だ。

 基本、執筆作業はひとりでおこなっているのだが、今日は無理を承知で特別に仕事をさせてもらっている。どうしても天ちゃんと描きたいシーンがあったからだ。

 今は主人公が新たな犯罪組織に立ち向かっていくシーンを書いている。

 すると突然、張りつめた空気の中で間の抜けた音が響く。

「すみません、お腹鳴っちゃいました」

 天ちゃんが照れながら笑う。

「今日の朝食が早かったもので……少しお腹がすいてしまって」

「いや、いいんだ。無理を言っているのはこっちだから」

 彼は彼なりに忙しいのだろう。今日は9時から来てもらっていたのだが、どうやら別の仕事が入っていたらしい。

 時計の針を見ると11時をすこし過ぎたころだ。

「大丈夫か?なんだったら早めに食事を――」

「大丈夫です。予定通り進めてください」

「そ、そうか」

 あまりの即答に気後れしてしまう。

 本当に彼は真面目だ。

「あんまり根つめすぎて体壊さないようにな」

 私からの最低限の気配り。

「わかってますよ」

 天ちゃんはそう返すと、黙々と仕事を続けはじめた。

 こういうところは私も見習わなければならない。いや、見習うところしかないだろうな……。

 ――さて、もうひと踏ん張りと行きますか。

 私は再びパソコンに向かい、自分の思う通りに文字を踊らせた。

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