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ハンチントンの国際関係論にかんするあれやこれや

「エコノミストの発言力が強い日本の知的社会では、経済人を中心にバランスを失した『グローバリズム』論によって歪んだ世界観に陥っている日本人が多い現状を考えれば、『文明の衝突』論は、きわめて健全なバランス効果をもつはずである」(中西「解題」、S.ハンチントン『文明の衝突と21世紀の日本』集英社新書、2000年)。


 たしかに、国際貿易理論の初歩では、国際貿易で世界の効用最大化を図ることができる万歳!という結論に行き着くように仕組まれている(上級レベルでは、現実のさまざまな問題が検討されており、一概には諸手をあげて万歳!といかないことが示されることもある)。

 また、なかには本気でグローバリゼーション万歳一辺倒(まあ昨今の新自由主義ないし市場原理主義信奉者の如く)の人がいて、希望的観測ばかり並べていたことも事実として存在しよう。

 が、それのみを以って「歪んだ」とするのは、やはり早計である。

 経済人は、外需依存の日本の現状をもって、グローバリズムにのっからなければ日本はやっていけない背景事情を指していたからだ。

 ちなみにハンチントン教授の、我が国にたいする考察は非常に面白い。

 しかしわが国の、中国との接近予測については、矢張り悲観的な見解を述べざるをえないところだ。

 事実として、我が国企業は、昨今、中国から工場を撤退させている。

 また、人材のグローバル化が図られている某大手商社は、知的財産権侵害の検知から、中国人との契約を控えていることを明らかにした(直截私が聞いた話)。

 また、中国は移行期特性に基づき莫大な利益を上げられ、かつ「市場経済」により、これまでのところ、円滑に機能しているようにみえる。

 この漸進的移行は、ボトムアップのメカニズムによってもたらされた補完機能によって、ソフトランディング的に行われている。

 しかし、ボトムアップのメカニズムにも限界がある。


「ボトムアップのいかなるメカニズムによっても代替できない制度は、財産権の保護である 。腐敗が経済をおかしくしてしまう可能性があるからである。財産権保護はボトムアップの方法では実現できない。そこで必要なのは、上にいる人々に対して制約を課すことだからである」


「大企業は市場制度の支援を必要とする。複雑な取引上の紛争の裁定には洗練された法システムが必要であるが、これは国家だけが提供できるものである。すなわち、経済が発展するためには、トップダウンのルールがいずれ必要となる。それにもかかわらず、移行の初期段階で取引をサポートするという点では、ボトムアップメカニズムが驚くほどうまく機能する」。

(J,マクミラン著、瀧澤・木村訳『市場を創る』)


 しかし、暫定的なボトムアップメカニズムのまま成長させた結果、いまになって弊害が出てきている。それこそが、知的財産権問題であり、そしてまた、地域間格差である。

 こうした側面にかんがみれば、資源と人口を背景に成長する現状から、これら問題を克服しないかぎり、中国は大国の地位を持続的に維持できぬだろう。

 とはいえ、この著作が2000年のものであることに鑑みると、教授の先見の明に畏れ入らざるをえまい。さすがである。

 そんなわけで、実質属国である我が国がとりえるのは……いわずもがな。

 まあ、資源弱小国である以上、どこかとの連携はせねばならない。たとえ産業立国だの技術立国だといっても、やれT企業だのC企業だのが、外貨を稼いで国内産業を牽引する構図は、現状変えられないのだし(円高への過剰反応は、この構図のせい。TだのCだのに足を向けて寝られないから優遇せざるをえない)。

初出:2009年02月04日

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