第七話 智竜「セジェド」
「おや?驚いたのかい?」
「驚いたに決まってんだろ!!急に人が横に出てきて驚かない奴が居たら連れてきてもらいてぇわ!」
「ハハッ、そうか。驚かせてしまったのならすまない」
「まぁ、俺はアンタに救って貰った立場だ。変に文句を言うつもりはねぇさ」
「あ、そうだ。少し、話でもどうだい?私も君のことが少し気になるものでね。」
「えぇ?あぁ…まぁすることないし…いいけど…」
そう言うと、セジェドはふふっと笑い、キッチンの方に向かう
「何か、飲み物は居るかい?この世界の物ならなんでも作れるから気を遣わずに言ってくれ」
「えぇ?飲みたいもの…まぁ特にないからそっちのセンスで頼む」
「分かった。」
その後、少しの沈黙が続き、香ばしい匂いが部屋に広がり始める
なんだ?この匂い…コーヒーによく似てるな……ただこの世界にコーヒーってあんのか?
「お待たせ」
「お、さんきゅ」
その声と共に置かれたものはまさにコーヒーだった。これをコーヒーと呼ばなきゃ何と呼ぶってくらいにはコーヒーしていた(?)
「おや?もしかして苦いのは苦手だったかい?」
「えっ?あぁ、いや。そんなんじゃなくて……なぁ、セジェド」
「うん?」
「この飲み物の名前ってなんだ?」
「あぁ、それかい?それはコーヒーだよ」
コーヒーなのかよ!?いや?何となく分かってたけど?最初から俺は知ってましたよ?ただちょっと予想が当たってると思わなくてびっくりしただけで……
「…もしかして、君はコーヒーを知っているのかい?」
「え?あぁ、まぁ…」
「わかった。回答に感謝するよ」
「そういえば、自己紹介がまだだったね?私の名前は「セジェド=バレンタイン」バレンタイン一族の当主で、世間一般からは智竜と呼ばれている。この世界の事なら何でも知ってるさ。何でも答えると言ったら嘘になるけど、まぁ答えられる範疇で答えるさ。よろしく」
「おぅ、よろしく」
今俺の目の前に居るやつはセジェドで間違いないようだ。碧緑色の髪色&手入れが少し大変そうな長さをしている髪は白銀の眼も相まって少し幻想的な感じがする。そして何よりも全体像は見えないものの首や頬にあるタトゥーというか紋章がメロい。
「なぁ、セジェド。お前の首にある紋章?はなんなんだ?」
「ん?あぁ、これの事か。これはバレンタイン一族である証…かな?厳密に言えばちょっと違うんだけど」
「へぇ〜…俺もバレンタイン一族になろうかな…」
「死んで運が良けりゃなれるかもね」
「ハハハハハ…サラッと怖ぇ事言うなお前。」
「フフッ…冗談だよ。」
「…さて、本題に入ろうか」
「お、おうぅ…」
セジェドはさっきまでニコニコしていた顔は最初から無かったかのようにキリッと顔を変える。少しの無駄のない威圧が俺の体を襲う。
「私が君に提供したコーヒーと言うのはとある異世界人から貰った物なんだ」
「うぇっ!?そうなの!?」
異世界人…まぁほぼ100地球人だよな……俺以外にも転生者が居たとは…
「コーヒーはこの世界では知られていない飲み物だ。君は…異世界人だね?」
「あ、あぁ…正解だよ」
「そしてもう1つ、私は気になる点があった」
「君から竜の匂いがする。それも死竜の匂いだ」
「…ほう」
「純人間は竜への適応能力は無いに等しい。それなのに君は竜の匂いがプンプンするんだ。君は何者だ?私に出会う前にどんな竜と出会った?」
「っはは…怖ぇよ。アンタ。俺はヴェガルって名前の死竜に出会った。随分と優しいやつだったよ。アイツのお陰でアンタの名前も知れたし、アイツが居なけりゃ俺はとうに死んでたね」
そう答えると、少しセジェドの顔が険しくなる。が、すぐに笑顔に戻った
「そうか。ヴェガルと会ったのか。ありがとう。私が聞きたいことは以上だ」
「お、おぅ。そうか。じゃあちょいと俺の自己紹介と質問を聞いてくれ。相手もしたのならこちらもしなければ無作法ってね」
「あぁ、思う存分話してくれ」
「えー…俺の名前は葛城 悠。セジェドが言ったように、異世界人で、ヴェガと共に過ごしている。まぁそんなところかな?後は雑魚いってくらいだな」
「そうか。ユウ。これから宜しく」
「おう。よろしく。ってか、葛城呼びじゃないんだな?」
「あぁ、私は既に君のような名前の人と出会ったことがあるからね。その時に教えてもらったのさ」
「あぁ、なるほど…」
そういえば…セジェドは異世界人と会ったことあるのか…異世界のことも知ってるなら確かに智竜って呼ばれるわな
「それで、俺からも質問がある」
「なんだい?」
「俺がヴェガから聞いた情報だと善竜、死竜、邪竜。それ以外は属性+竜って呼び名しか無いらしいけど…セジェド、お前は智竜って言ったよな?智属性ってのがあんのか?」
「いや、それは恐らくヴェガルの説明が少し雑だっただけで、私みたいなが例外なんだ。
まずⅤの竜には、それぞれ善竜・死竜・邪竜という称号が与えられる。
彼らは基本的に竜人へ変じることができて、人類と関わる個体もいるし、そもそも滅多に姿を見せない存在だからね。
だから一目でⅤだと分かるように──その象徴として、あの称号が与えられているんだと思う」
「そして、ⅠからⅤまで共通なのが属性+竜の称号だね。私は属性を持ってない。全てを操るから属性+竜の称号ではないんだよ。代わりに他の特徴を絞り出したら智竜って称号になったってわけさ」
「なるほどな…」
「それじゃあ…もう1つの質問だ。俺が夜棲獣と戦ってた時、変な輪郭が見えて、その輪郭の通りに行動する…みたいな現象があったんだ。あれはなんかの能力か?」
そう言うと少しセジェドは難しい顔をする
「そうだね…聞いた事もない能力だ…恐らく個性権能だと思うんだけど…」
「個性権能?あぁあれか。そいつオリジナルの権能ですよ〜的な?」
「そうそう。説明が省けて助かるよ。ところで、話は変わるけど、悠は服を着ないのかい?」
「え───」
言われてみれば、俺はこの世界に来てから上裸だった。人間慣れが1番怖いって言うもんだ
「そういえばそうだったな…転移する時に服まで持ってきてくれなかったんだよ」
自分でも正直何言ってるかわかんなかったけどまぁいいだろう。
「そうか。じゃあこれを君に渡そうか」
そう言いセジェドが取り出したのは真っ白な無印の服だった。見た感じ新品っぽい
「おぉ、服か?ありがたいけどどうしてこんな物を?」
「異世界人がくれたのさ。ただ着る機会が無かったから君に譲ろうかと」
「おぅ…そうか。まぁ貰っておくわ。サンキューな」
服を受け取り、ササッと着る
───すると
「…ん?」
着た瞬間に体が軽くなったような…そんな感じがした。気のせいではないだろう。確実に
「…?どうかしたかい?」
俺の反応を見てセジェドが少し不思議そうに見てくる
「あぁいや…気にしないでくれ」
まぁ別にデバフって訳じゃあないしいっか。
「っつーか。そろそろヴェガの所に帰りたいんだけど…どうやってここから出るんだ?」
「分かった。それなら私が送っていこうか」
「お、まじか!そりゃあ助かる」
こういうのがデキる男って物なのか…俺とはどこかが違うんだな…確かにこりゃ善竜って呼ばれるよなぁ
「瞬間移動」
聞いた事のある声が耳に入ると同時に見慣れた光景が広がる。そう、ヴェガの家だ
「おぉ…」
1度体験したものとはいえやっぱり少しビビッと来るものがある。同じジェットコースターを何回も乗るみたいな物なのだろうか?いやちょっと違うか?
ちらっと外を覗くと、まだ夜だった。体感8時間くらい経過してたのだけど…
家の端っこにはヴェガがだらしない体勢で眠っていた。
にしても…俺を置いて帰るなんてひでぇ奴だな!寝てても起こしてくれりゃ良かったのに…危うく死にかけたんだぞ!
…はぁ、ま、良いか。セジェドと会えたし。服も貰えたし
今日は朝から特訓、そして帰りにゃ戦闘。随分と濃い1日だった。疲れも相まってかなんだかすごく眠い。まだ夜は明けなさそうだし、寝るとしますかね
適当な岩を背中に置き、その日は眠りにつくのだった




