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竜と共に。  作者: MIO
7/8

第六話 夜戦

夜棲獣(ガウル)の豪腕が容赦なく俺に向かって振り下ろされる。

「おゎっぶね!?」

ギリギリで後ろに下がり、奇跡的に回避に成功する。

「危ねぇなぁ……」

俺一人でこいつらを相手出来るとは到底思えない…ヴェガか誰かが助けに来てくれりゃぁな…ま、そこまで耐久しろって話か…いいぜ、やってやるよ!

さっきの夜棲獣が唸る。躱されたのを相当根に持ってんのか、さっきよりも酷い殺気を放っている

その時、俺の目に奇怪な光景が映し出される

夜棲獣の輪郭が絶え間なく映し出されているのだ

どういう事だよ!って思ってるはずだから説明するが、夜棲獣の輪郭が左右に(うね)ってから上へ飛び、俺の首筋に噛み付く。そこに至るまでの動きが綺麗に映し出されている。そんな感じだ

な、なんだ…?これ?…なんか気持ち悪…

少しすると、夜棲獣が動き出す。その動きは輪郭が示している動きと全く同じだった。綺麗にハマっていき、飛び上がる所までもが完璧だった

あっ…てことは……

左にスっと移動すると夜棲獣の噛みつきは外れ、地面に激突する

なるほど…やっぱりか。さっきのよく分からんやつは夜棲獣(コイツ)の行動を示唆する物。なんで急にこんなんが見えるようになったのかは分からんけど…こいつは便利だ

にしても、相手が単数なのはありがたい。なんか奥にいる夜棲獣共は微動だにしないし、このボスっぽいやつは動きが見れるから回避は足が遅れない限り余裕。恐らくヴェガの言動的にコイツらは夜か暗いところでしか動けないのだろう。ヴェガ以外からの助けは望めない。もしかしたらヴェガも来ないかもしれない。ただまぁ、大丈夫だろう

来る攻撃を次から次へと躱し続ける。瞬発力は元々ある方だったから楽な作業だ。ただまぁ…

「あでっ…!?」

少しのミスが命取りになるんだよなぁ…

俺は赤く染った右腕をチラッと見る。胸とか腹に当たらなかっただけマシだろうか。実際動きに鈍りは無いし。

しばらく躱し続けると、後方に居た夜棲獣共がぞろぞろと動き始める

おっとぉ〜?ちょっと流れ変わったぞ?今までは1体だから何とかなってた感あったけど複数になったら俺は終いだぞ?

一気に6体分の動きが俺の目に映し出される

え、えっと?1体は奥に回って…

1体を追うだけで手一杯だった。既に全員が動き出しており、まさに絶体絶命な状況

その時、誰かの声が──────

する訳ねぇだろクソッタレがぁ!!そんなありがちに見えて奇跡的な展開がピンポイントで起きるわけねぇだろ!!

「───チィッ!!」

出来る限り輪郭線が無いところに体を寄せるも、何処かは必然的に噛まれる。右腕を完全に持ってかれ、腰部辺りも噛みちぎられた

「ぁ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!!!」

尋常じゃないくらい痛かった。死んだ方がマシな位には。滝のようにドバドバと流れてくる赤い液体。気付けば、さっきまで見えた金色の輪郭線も今となっては見えなくなっていた。こんな物に力を使ってられないと体が叫んでいるのが分かる。

さっきまで遅かった夜棲獣共が今見てみれば音よりも速く感じる。俺の血液に反応したのか奴らは涎を垂らし、より凶暴な目つきになっている

や、嫌だぜ…?こんな所で俺死にたくねぇぞ…?………もっと生きていてぇよ…?

ハ、ハハ…何驕り高ぶっていたんだ俺は…そうだよ…最初から勝てっこねぇんだよ……ただ相手の少し先の行動を見れるだけだったんだ…この世界での俺は雑魚同然。それなのに何か身体的な能力の向上なんてもんは無い…

唯一の武器であった木の短剣(ショートソード)も右腕が持ってかれたと同時に取られちまった。

「い、嫌だ嫌だ嫌だ!!死にたくない!!まだ、俺はまだ死にたくねぇんだよぉ!!誰が、こんな所で、死ぬかって…話だ!!嫌だっ!嫌だぁぁぁ!!!」

涙混じりの情けない声を出しながら全力で背中を向けて奴らから逃げる。走る度、動く度に腰がズキズキと痛む。ただその痛みも今じゃアドレナリンで緩和されて大した痛みにはならなかった

闇雲に走り続けた。後ろの気配は知らぬ間に無くなっていた

逃げきれた……のか…?

俺はその場に力なく崩れ落ちる。もう体が限界を迎えていたのだ。どうしようもないほどに力が入らず、眠かった。ただ寝たら死ぬことくらい分かっていた

その時、前方からズサズサという足音が聞こえる

だ……誰だ…?

闇から現れたのは1頭の虎だった。ただ、普通の虎ではなく、体のおおよそは真っ白な毛で覆われており、規則的な紫の直線が体の端々に見える

…ハァ…?……ハアァァァ…?

絶望と諦めが俺の体を支配する。

なんなんだよ…ハハハ……本当になんなんだよ……

目の前の虎は俺を見るやいなや俺を無視して歩いて行く。そして少し経つと後ろから夜棲獣の鳴き声が聞こえてくる

ぇ…?…なんだ…?戦ってんのか?

夜棲獣と戦ってるのならアイツは良い奴だ!

なんてなるわけない。野生なら獲物を取り合うのは自然の事だと思う。元の世界でも給食の時間にたった一つの揚げパンを取るために死闘が繰り広げられるんだ。野生でその争いが起きないはずがない。どうせ夜棲獣共を追い払ったら俺を食う気なのだろう

「誰かぁ……たずげでぐれよぉ……ヴェガ………エルディオール………セジェド…誰でもいい…助けてくれ…」

とりあえず頭の中にあった名前を絞り出す。このか細い声が届くかは分からない。ただ、今俺にできるのは名前を呼ぶことだけだった。ヴェガ以外は知らんやつだ。顔も何もかも分からない奴だ。

ただ、それでも、助けてくれるかもしれない

『やれやれ……しょうがない』

……?なんだ?今の…

『君の願いは届いた。それだけの話さ』

その声が耳に入った時、雷が目の前に降ってくる。ただ、感電等はしない。その雷は()()()()()()物だった。そして誰かの足が眼前に出てくる。あぁ、これがセジェドって奴なのか?。まさか本当に助けが来るなんてな……

セジェドと思わしき者は来るやいなや俺の方を向く

「酷い傷だ…よく耐えてくれた。後は私に任せて」

そういうと、セジェド?は俺の体に手を当て、《治癒(ヒーリング)》と口に出す。すると、さっきまで感覚がなかった右腕に感覚が戻り、痛みは嘘のように無くなった

「ここは危ない。私の家に転移してもらうよ」

「え?いやちょ─────」

瞬間移動(テレポート)

そうセジェドが発した瞬間、よく分からん場所のベッドに俺は横たわっていた。白と水色を基調とした部屋。部屋の中央には謎の地図。棚には小物がいくつか置いてあった

「ここは…あ、あの人の家か」

にしてもセジェドって奴……いやほんとにセジェドか?エルディオールって可能性も……いやまぁセジェドかぁ?雰囲気的にもそれっぽかったし(?)セジェドってことにしよう。それにしてもあいつ知り合ってもない奴を家に入れんのか…ちょいと怖いな…俺なら無理だわ。知らんやつ家に入れるの。というか基本誰でも無理だろ

…にしてもこのベッドふっかふかだな……良いね。しばらく寛がせて貰おう


◇◇◇


「…無事に移動出来たみたいだね」

俺が家に移動出来たかを確認後、目の前の白虎の方に目を向ける

「やぁ。ごめんね。せっかくの獲物を貰っちゃって」

『許さん……我が獲物を奪った代償はデカイぞ?』

「そうかい…ただ私も、善竜なのでね。困っている人は助けなきゃいけないのさ」

セジェドの挑発的な言い草に腹を立てたのか白虎はセジェドに向かってがむしゃらに走り出す。

セジェドはなんとも言えない笑顔を作る

地槍(グランドランス)

そう言い地面に杖をトンッと突くと地面から1本の槍が創り出され、白虎の首を貫く

「ハハッ、お見通しさ」

そうセジェドは笑うと、もう一度地面に杖を突く。今度は真後ろに槍が生成され、ドシュッ…という音が鳴ると同時に白虎が呻く。

「やれやれ…幻惑虎獣(ファントムタイガー)は一撃で仕留められないのが面倒臭いね…」

項垂れ、生気が無くなった幻惑虎獣を見て呟く

(さて、戻ろうとしようか。さっきの人の事も少し気になるしね)

もう一度、セジェドは杖を突くと俺が寝っ転がっているベッドの真横に転移する

「ピギャァァァァァ!?!?!?」

真横に人が転移して奇声を上げる俺と、少し驚くセジェドであった

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