第五話 夜襲
その時、奴らは見ていた。巣から出ていく2人の姿を。その時、奴らは気付いた。1人は人間であるということを。
その時、奴らは企んだ。今夜─────────
◇◇◇
「ハァ…ハァ……しんど……」
「10km走った程度でバテてんじゃねぇよ……アタシまだ汗ひとつかいてねぇぞ?」
「それは……お前がヤバいだけだ……寧ろ…ペース落とさずに走っただけ…凄いと思えよ…ハァ…ハァ」
現在、俺は酸欠になりかけている。こんなハイペースで走ったら流石に死ぬ……ヴェガは本当に何者だよ…
「…つーか……ここ何処だよ…」
「ぁん?…そうだな…アタシの家が西にあって、真っ直ぐ走ってたからラグナスがあと30km先にあるくらいじゃねぇか?」
「よく分かんねぇな……ただまぁ、ラグナスに近付いてんのね」
そういや…ヴェガは死竜?らしいけど…国に近付いて大丈夫なのか?普通に狙われそうな気もするが。ま、竜人になってりゃ大丈夫なのかな?
……ん?視線?いや気のせいか
「…そーいや、お前ってナイフとか使えんのか?」
「え?あー…ナイフ……食材切る時とか?あ、それは包丁か…まぁ、使わない…かなぁ」
「そうか。じゃあアタシが教えてやるよ。お前も自己防衛くらいは出来るようになんなきゃな」
「お、そりゃ助かる。ちょうどそういうの気になってたんだよ」
「うし、じゃあ軽いナイフでも作るか」
「え?今から?」
「え?お前ナイフ持ってんの?」
「いや持ってないけど…」
「じゃあ作るっきゃねぇだろ」
「てっきり持ってるものかと…」
「んなもん持ってねーよ。んじゃ、お前立て」
「ほぇ?なんで立たなきゃいけねーんだ?」
「良いからいいから。この木を使うんだよ」
ヴェガに催促され、 頭に?が浮かんだままとりあえず立ち上がる。一体何すんだ?
「──ふんッ!」
俺が立ち上がったのを確認したらヴェガは思いっきり木にタイキックをお見舞いする。すると、その木は蹴られたところから綺麗にバキバキと折れる
「…ぇ…」
「この木使ってナイフ作るぞ」
そう言うと尻尾の先端で木を適当な大きさに切り、加工を始める
コイツに痛覚と言うものは無いのだろうか。脛も普通に当たってたように見えるが。俺の気のせいなのだろうか。なんなら木を蹴り1つで折ってるの普通におかしいんだよな
そういや尻尾ってどうやって動かしてんだろうな。足を動かすみたいに簡単に出来る事なんだろうけど普通に気になる。尻よりも少し上の辺りに長いピロピロしたものがあんのか…
なんかキモそうだし服とかも考えると尻尾が人間に生えなくて良かったとしみじみ思う
「おい、出来たぞ」
そう言い、ヴェガは綺麗に加工された木のナイフ…厳密に言えば短剣の持ち手を差し出してくる。普通に切れそうな剣だった
「あー…結構本格的だな、…もっとこう、練習用みたいに切れない物かと」
「実際に切れねぇと良く分かんねぇだろ?」
「そう…なのかなぁ…」
やっぱり、さっきから視線感じるな…気のせいか?……「うし、それじゃ教えてくぞ。とは言っても基本しか知らねぇけどな」
「お、おう」
そこから鬼みたいな指導が始まった。姿勢から力の入れ方、気持ちの入れ方などなど。とにかく何もかもを指導された
◇◇◇
「も、もう無理…」
腕は筋肉痛、足は乳酸が死ぬほど溜まっててしんどい状況。5時間に渡る特訓で俺は限界だった
「ま、始めた頃よかマシになったな。日も落ちてきたし帰るぞ」
「ちょ…待ってくれ…もう動けん…」
「おう、そうか。じゃあアタシだけで帰るか」
「ちょちょちょちょ!!!」
俺の反応を見てヴェガはクスッと笑う。
「冗談だよ。アタシが竜になるから背中乗れよ。」
「お…まじ?……助かるわ…」
「おう、ちょいと待っとけよ」
そう言いヴェガはダッシュで俺から離れ、竜化を始める。なんで離れたかと言うと近くに居た状態で竜化を始めると普通に俺が潰されるからである。ちなみにヴェガの竜状態の時の体長はだいたい76mだった。全然50mじゃねぇ
竜化が終わり、烈火のごとく赤い竜が姿を顕にする。少し頭を動かすだけでも圧が凄い
竜化ってのはこういう物なのか。少し離れなければ…か
変身が終わると竜は俺の方を向いて慎重に掴み、首元付近に置く。首元にあるちょうどいい具合に生えてた出っ張りを掴み、合図を出すと翼を動かし始め、上昇を始める。
体が冷たい空気の壁を押し出し、押された空気は元に戻ろうと必死に抜けようとする。その元に戻ろうとした空気が体全体にぶつかり、いろいろ疲れた体を労ってくれる。しかし、この体は少し特殊だな…随分と疲れが溜まるのが早い。それに、あんな何の変哲もない人種は初めて見た。新種か?
にしても、上空から見る大陸もまぁまぁ綺麗なものだな。基本的に草地だが、所々の小国や、国の端っこあたりが見えたりなどなど人工的なところもある
うつ伏せになり、目を閉じる。ひんやりとした感触が体全体に伝わってくるのがわかる───────
◇◇◇
目が覚めれば、俺は切り株に寝っ転がっていた。外は真っ暗で、明かりが無いと歩けないくらい暗く、都会育ちの俺からしたらまるで信じられない光景だった
何かないかと剣でそこらを突っつくも、地面の感触しかしない
と、とりあえず…帰る…?いや、下手して動いたらダメか?
理解ができなかった。俺は夢でも見ているのか?きっとそうだそうに違いない。頬を抓れば簡単な話じゃないか〜いや〜なんで気づかなかったかな〜
──いっでででででで!?!?
ちゃんと痛かった。現実だった。いやいや…だとしたらおかしいだろ!?俺はさっきまでヴェガと一緒にいた筈なのに…最初っから俺が1人みたいな…
その時、俺の頭の中にヴェガのあの発言が過ぎった
(そういや最近、めんどくせぇ事に夜棲獣っつー奴がこの辺に来やがったから夜は外出んなよ)
まさかとは思うが…これが夜棲獣だったり?いやだとしたらクッソ厄介じゃねぇか!仲間から強制隔離。それで相手はⅢのドラゴン級に強いだって?1人じゃ到底勝てっこねぇだろ!俺なら尚更だし…って誰が弱いだって!?
………まぁいい……何もせず喰い殺されるよか、少しくらいは抵抗した方がマシだ。腹を括ろう
遠くから、アオ───ン…という鳴き声が聞こえる。
ヘッ…まるで狼だな
僅かな静寂の後、狼と虎が合わさったような獣が前方から歩いてくる。その中でも最前線を歩いてるやつは一回りでかい。恐らくこのグループの長なのだろう
目視で7体……戦力は天と地の差…か
俺は短剣を構え、剣先を夜棲獣と思わしき奴らに向ける
「来いよ……主人公はちぃとしつけぇぜ?」
そう言うと長らしき奴が「お前なんて一人で楽勝だ」とでも言いたげな感じでのさのさと歩いてくる。
「ガルルルル…」
随分と舐めてくれるな…まぁ、しょうがねぇか。上裸で木の短剣しか持ってない俺を見て舐めプするなと言うほうがムズいか
いつでも動けるように足を作っておく。それとほぼ同時、奴が俺に高速で接近する
「グルルラオォ!!」
「────来るッ!!」
◇◇◇
ふぅ〜…着いた着いた
「おい、もう着いたぞ」
しかし、返事は帰ってこない
あぁ〜…そういや竜の時に喋っても聞き取れねぇんだっけな?…めんどくせぇ奴だなぁほんと
手で慎重にカツラギを掴み、地面に降ろす
カツラギが無事に降りたことを確認してから竜人に戻る
「ふわぁ〜ぁ……眠…」
「アタシ、ちょいと寝てくるわ〜…」
なんか今日は妙に眠ぃな……アタシ別に疲れることしてねぇよな?…まぁ、別にいいか
巣に戻り、岩を背中にし目を閉じる。決して快適とは言えないが、今までずっとこんな所で寝てきたため、逆に安心感がある。いつもは寝付くのに30分ほどかかるが、今日は頭が疲弊してたのかすぐに寝付いた
おっと……随分離れたな。まぁ、大丈夫だろう。奴らなら負けはしないか
さっさと戻るとしよう────
先程までカツラギだった〝ナニカ〟は獣に姿を変え、カツラギ達が特訓していた所に向かうのだった───
分かりづらくて申し訳ないです…




