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竜と共に。  作者: MIO
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第三話 無情と憐憫

騎士剣を持った男がヴェガルに斬りかかる。

「──斬ッ!!」

ヴェガルが受けようと構えると、辺りに金属音が響き渡る。

(そこそこな斬撃…竜鱗化させてなかったらワンチャン腕飛んでたな…)

竜鱗化とは名前の通り、ヴェガルの体の一部を竜鱗化させることができる。竜鱗は半端な攻撃では砕けず、尖っているため攻撃性能も高い。今回は腕を竜鱗化させて攻撃を受けた

「何だとっ……」

咄嗟に相手は後ろに下がる

「おいおい…アイツの腕、ちぃとめんどそうだぜ?どうするよ。兄弟」

「魔術なら何とかなるかもしれない…ネーフェ!」

「はいっ!」

そう言うと空中と地面に大袈裟な魔法陣が展開される

「我が真紅の──」

「──斬ッ!」

恐らく詠唱かなんかの隙間を埋めるためか、また剣士が斬りかかってくる。が、竜鱗に防がれる

「はぁぁぁ───ッ!!!」

普通の人なら目で追えないレベルの斬撃が連続でヴェガルを襲う……が、全て片手で防がれてしまう

「ハァ…ハァ…」

剣士は後ろに下がり、膝を地につける

「おいおい大丈夫か兄弟?…コイツはァちぃとめんどそうだな…」

「あぁ…少し能力(スキル)を連発しすぎた…」

(今の能力使ってたのか…親父…もしかしてこれに負けたのか…?)

ヴェガルは父の実力を低く見ているようだから補足するが、ヴェガルが強すぎるだけである

「──滅べ!死竜!!!」

翠巌之審判(エレメント・ジャッジ)!!」

そう言った刹那、地の魔法陣から大量の鎖が召喚され、ヴェガルの足や体を捕らえる

「うぉっ……」

(ちょっとヤベェな…)

次に不可視の風刃が全方位からヴェガルに襲いかかる

「よしッ!いけるッ!!」

誰かがそう言い放った。ただ、その希望は一瞬にして打ち砕かれる

もう少しで風刃が当たる。その時に突然ヴェガルの体が爆発を起こす

「「うぉっ!?…」」

爆風と煙が一斉に薙ぎ払われるとそこに立っていたのは無傷のヴェガル

「なん……」

「魔術もダメか…!クソッ…どうすれば…」

「なぁ、死竜さんや…もうこんなのやめねぇか…?俺らだってやりたくてやってるわけじゃぁねぇんだ」

「ハイン………」

「ハインさん……」

その時、その場のヴェガルを除く全員がハインの企みに気付いた

「おっ…やっと分かってくれたか…!」

「あぁ…だからよぉ…こっち来てくれ。仲直りって言っちゃああれだが、握手でもしようぜ?」

そう言い、ハインは右手を差し出す

「おう!そうだな…!」

そう言い、ヴェガルは無防備で近付く。2人が握手した時、ハインがつま先で地面をトントンと2回叩く

「「うぉぉぉぉぉ───ッ!!!!」」

その直後、全員が剣を構え、ヴェガルに襲いかかる

「はぁっ!?」

ヴェガルは離れようとしたがハインの力が強く、引き剥がすのに苦戦する

「ぁがッ…!!」

ヴェガルの腹や首、足に剣が刺されていく。銀一色の刃はたちまち真っ赤に染まっていった

「ハハハハハハ!!!死竜さんや!そう簡単に俺を信じちゃダメだぜぇ!!!」

剣は次々と刺されていく。心臓、鳩尾、そして頭、人体の急所の部分をどんどんと刺されていく

「カハッ……」

ヴェガルはどっぷし血を吐いてその場に跪く

「ハハッ!いい気味だぜ」

そう言ってハインはヴェガルを蹴り飛ばす

「ガハッ!……」

ヴェガルの背中側に刺さってた剣が衝撃でより深くまで刺さる

(クッソ……体が…動かね…)

この時を待っていたかのように剣士がスタスタと歩いてくる

「死竜。お前は厄災だ。災害だ。今、騎士アレンがこの手でお前を斬るッ!」

アレンと名乗る剣士は剣を振り上げる。それは無情にも振り下ろされ、左半身をズバッと切り裂いた

臓腑が溢れ、少し赤黒い液体がドバドバと体外に放出される

「皆さん、もう安心してください。死竜を討伐しました!我々の手で!これで今度こそ!西の死竜は討伐です!」

そう剣士が誇らしげに血の付着した剣を上にあげると沢山の歓声が辺りに響き渡った

「ハイン!ネーフェ!よくやってくれた!お前たちがいなかったら…」

「いやいやぁ、あそこで咄嗟に合わせてくれた兄弟たちのおかげだよ」

「私はほぼ何もしてませんので…」

「それと、現地の皆さん!ご報告ありがとうございます!私らエルグラントがいち早く辿り着けたのも、あなたたちの───」

気が付けば、アレンの腹から竜鱗化している腕が貫通していた

「痛ぇんだよ……クソ野郎…」

先程までの歓声は悲鳴へ変わる。腰を抜かす者もいれば逃げ出す者もいた

「大丈夫かぁ!兄弟!!」

ハインがすぐさま駆けつけるが、ヴェガルの蹴りが綺麗に炸裂。そのまま30m程ぶっ飛び、木に頭をぶつけて気を失った

明らかにヴェガルは死ぬ傷だった。腱も切れているから立てるはずなかった。脳、心臓、鳩尾。急所に剣はこれでもかと言うほど刺さっていた。それなのに、それを持ってしても生きていたのである

「死………竜…だと………」

その言葉を最後にアレンはその場に力なく倒れる

「おい、お前はネーフェって言ったか?」

「ぁ………ぁ……」

恐怖で声が発せないのか、返事は返ってこない。まぁ無理もないだろう。死体同然の竜人がさも何も無かったかのように動き、今、仲間の腹を貫いたのだから

「…まぁいい。このアレンとか言う奴、治療してやれ」

「……ぇ?」

「二度は言わねぇ。早くしねぇと死ぬぞ」

そう言うとヴェガルは森の方へゆっくりと歩いて行ってしまった

「はっ…はい…」

(な…何がしたいの……この人…)

ネーフェからしたらヴェガルの行動は理解が出来なかった

少年が落としたオロボの実を届けに追いかけたら大量の剣を向けられ、一方的に攻撃を受け、騙し討ちまでされた

それなのに─────

(あ、大動脈と大静脈は無事なんだ…)

あまりにも優しすぎる。ネーフェはアレンの斬撃を意図も容易く受け止めた時点で自分のパーティー以外はほとんどが死ぬのではと思っていた。なんなら(ドラゴン)になってれば全滅まで有り得たかもしれない。それなのに、彼女は〝受ける〟という選択肢を取った。攻撃でも、逃走でもなく。ただひたすらに攻撃を受け続けた。恐らく理解して欲しかったのだろう。誤解を解いて欲しかったのだろう

それでも、()()という固定概念に毒され、全員牙を剥き続けた。彼女の心には元々殺そうなんて考えは無かったんだ。たとえどれだけ傷つけられようが、いつかは辞めてくれると信じていた。だからこそ、ハインのあの騙し討ちは心底傷付いただろう。単純な考えをしてると悟ったハインが取ったあの非人道的な作戦。善良な心を踏みにじったあの作戦。そして即座に これは罠だ… と気付いてしまったネーフェ達

(…あの人…もしかして()()の可能性………私は………)

(…一体どっちが悪なんでしょうね…)

その後、アレンとハインを治療し、罪悪感に塗れたまま、ネーフェは一日を過ごすのだった


◇◇◇


「いつまで寝てんだ寝坊助」

「&/!?!mpv")〜…」

「……」

(ん?そういやこれ…)

ヴェガルはカツラギの近くに置いてあるサイダーを手に取る

(んだこりゃ。どうやって飲むんだ?………あ、これ回せばいいのか)

そう思いながらキャップを開けた瞬間、サイダーからプシュッ!と強い音を立てる

「おわっ……キモ…」

(匂いは……ほぼしねぇな………)

(…ちょっとくらいならバレねぇよな…?)

飲み口に口を近付けてグビっと一気に飲む

「どわっ!?んだこれ!?」

思わず2度見してしまった。んだこれ超うめぇぞ…とでも言いたげな顔でしばらくペットボトルを見つめる

(ま、まぁ?ずっと置いてる方が悪ぃし?アタシが貰ったって良いよな?…)


んーっ……ぁぁぁ…寝すぎた………そういやサイダーとかあったな。そろそろ飲まなきゃ炭酸が…ってあれ?サイダーどこだ?

体を起き上がらせ、サイダーを置いたであろう方向を向くとそこにはサイダーをがぶ飲みしているヴェガルの姿があった

「っておい!?何やってんだヴァカタレエェ!!!」

俺の怒号にピクっと身体を震わせこちらを振り向く

「んぇ、あぁ悪ぃ悪ぃ…美味くてな…つい飲んじまった」

「飲みすぎだよアホ!少しだったら許してたけど全部飲んでんじゃねぇか!!」

「あー、少ねぇ方が悪ぃんだ」

「おめーが悪いんだよバカ」

はぁ…少しの楽しみ(忘れてた)だったのに…まぁいいか

「はぁーあ……ってあれ…?」

「んぁ?どした?」

なんか…血腥い(ちなまぐさ)…?ヴェガルからか?

「ヴェガル…ちょっといいか?」

「ん、別に良いけど…」

「サンキュ」

俺はヴェガルの体に鼻を近づけ、匂いを嗅ぐ。傍からすればただのド変態だが、ここは俺とヴェガルしか居ないからセーフ

「うわ…んだよ気持ち悪ぃ…」

「やめて?それ傷付くから…」

「お、おぅ…」

…やっぱり…ヴェガルから死ぬほど血の匂いがする…なんか殺したのか…?

「…なぁヴェガル」

「…ぁんだよ」

「お前…俺が寝てる間に……誰かと会ったか?」

「──ッ!!」

「図星…だな。人でも殺した───」

「違う」

「…ぇ?」

俺の言葉を遮るように否定すると、ヴェガルはボソボソと呟き始める

「アタシは殺してなんかない殺してなんかない…ただ土手っ腹に風穴を開けただけで殺してはいないんだ……」

あー…なんか…触れちゃダメだったのか。それにしても今聞いちゃいけない言葉が聞こえた気がするけど…まぁ気のせいだヨネ?

「……な、なんかゴメンな…?そんな触れちゃいけない事だったとは…」

「…………いや、良いんだよ。アタシから血の匂いして誤解しねぇ方が少ねぇし。」

「そ、そうか…」

その後、なんかないかと怯えていたが特に何も無く一日が終了したのであった

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