説得の末
「なぁガキ……お前、どう死にたい?」
大男は小さなお嬢様に問いかける。
あの大男には倫理観というものがないらしい。
「しーぬ…?」
「あぁ、そうさ。お前は死ぬんだ。しかし、俺は優しいからな。特別に死に方を選ばせてやる。」
ローブの二人はお嬢様に集中している。
あの二人に気づかれないように、お嬢様を連れ出すには……
「じゃあねー、たかいたかいしてー!」
お嬢様…なんと無邪気な…
「ふむ、落下して死にたいか……本当は苦しみながら死ぬのが望ましいが…いいだろう。俺は優しいからな、その望み叶えてやる。」
大男はその大きな両手でお嬢様を抱き上げる。
あの男…そのままお嬢様を空に投げるつもりか…
だが、それなら好都合……お嬢様が地面に落ちる前に拾えばいいだけ
あいつがあのまま投げてくれれば…
「いいのぉー!やったぁー!おじさん、優しいねぇー!!」
「やさ…しい……?」
お嬢様の声を聞き、大男の動きが止まる。
そして……
「うぐ…ふぐぅ……」
突然、大粒の涙を流し始めた。
あの大男……泣いているのか…!?
なぜ……つくづく理解ができない…
なんなんだあの男!?
目の前の状況に戦慄する。
頭の理解が追いつかない。
「ふぐ……そうか…俺は優しいからな。お前がそう言う気持ちも分かる……。そして…そう言うお前も優しいことが…俺には分かった…。」
隣にいる小柄な男も困惑している
「よし、やはりやり方を変えよう。お前には落下による死ではなく、抱擁による死を与えてやる。」
そう言うと、大男はお嬢様を抱きしめた。
抱擁による死……?
まさか…そのまま…!
「神は私に素晴らしい役目を与えてくださった……。今日、この日にお前という存在に出会えたこと…感謝しよう。では……さらばだ、優しい君よ…。」
「ま、待て!!」
目の前のそれを止めるために、慌てて木陰から飛び出る。
くそ、そのまま投げてくれれば…どうする……ここから…
大男と目線が合う。
「…貴様、いつからそこにいた?」
「今すぐお嬢様を放せ!そのお方をどなたと心得る!!」
必死に思考を巡らせる。
お嬢様を救うにはあの二人を倒さねばならない…回避できればそれでいいが…
「それくらい知っている。お前は誰だ?まさか、ミステリア家の者か?」
「私はマイナ…そのお方のメイドです!早く放しなさい!!」
「メイド…尾行されたか。……まぁ、いい。貴様一人で何ができる?今すぐに立ち去れ。」
「何が目的ですか!?金ならいくらでも出します!」
ただの賊の可能性を考えて、説得を試みる。
だが、こいつらが賊ではなく悪魔の輪なら……
「そんなもの必要ない。我らが求めるのは破壊による平等。全てのものへの災いだ。そのための一歩としてこいつを殺す。見たくなければ、早く消え失せろ。」
やっぱり……説得は無理か…。
「で、では、私の命で…」
「必要ない。いいか?俺は優しいからもう一度だけ言う。“早く消えろ”。」
「ひっ……!」
大男の言葉に体がすくむ。
何か…他に説得する手段は…
「…で、でも…」
「全く…これだから獣人は嫌いなんだ。……もういい。せっかく温かな感情に浸っていたのに……おい、あいつを殺せ。このガキの前で、できるだけ無惨にな。」
「よっしゃ!やっと俺の番だ!」
小柄な男が前に出る。
説得の道はもう消えた…この男達に…なんとか勝つしかない…!
全身が強張る。
もう…やるしかない!
「さーて、女ぁ…てめぇは一体…どんな声で鳴くんだろうなぁ?」