悪魔の輪
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
太古の昔、世界には二柱の神があった。
一柱は、世界を創る創造者。
一柱は、世界を破滅に導く破壊者。
二柱は創造と破壊、その御力をもって世界に均衡をもたらさんとす。
アンノウンより引用。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お屋敷の本にはそんな逸話が書いてあった。
ただ、この話には続きがある。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
破壊者たる一柱は、生きる全ての生物に試練を与える。
よって、世界の生物は半分となる。
創造者たる一柱は憤慨し、破壊者たる一柱を封印す。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この事件を機とし、破壊神の勢力は消え失せたらしい。
しかし、最近破壊神の復活を目論む組織が現れたのだ。
それが“悪魔の輪”である。
そしてもう一つ、妙な噂がある。
それが、白髪には創造者の魂が宿る…というもの。
ただの噂話で、根拠も何もないはずだが……それを信じる頭のおかしい連中があの“悪魔の輪”だ。
奴らは創造者を目の仇にしているらしく、白髪を探しては殺すやばい組織らしい。
そのため、お嬢様が巻き込まれるんじゃないかと旦那様が特に警戒している。
ちなみに、白髪の生物を保護しようという“天使の輪”という巨大な組織もあるらしいが…今はどうでもいい。
そんなやばい奴らが、お嬢様を誘拐しているということのが重要だ。
旦那様が危惧していたことが今目の前で起こっているのだ。
どうにかして、お嬢様をお連れしなければ……。
「なぁ、このガキもいつも通り殺すのかぁ?」
「そう焦るな。今回は少しやり方を変える。いつものやり方だとすぐに死んじまうから…」
「なぁ!これでいいだろ?俺の仕事は終わりだ!さっさと解放してくれ!早く家族に会わせてくれよ!!」
家族?
あの騎士は仲間ではないのか…?
「……まぁ待てよ、兄ちゃん。やることやったらな?もうすぐだから…」
「ならさっさとしてくれ!!俺は…俺はもういやなんだ!こんなこと!!」
仲間割れ……
お嬢様の前でやって欲しくないが…
「こんなこと…貴様、本当にそう言っているのか?」
「あぁ、そうさ!こんなの馬鹿げてる……だって、そうだろ!?こんな幼い子を拐えだの…この子を目の前に殺すだの…正気じゃないぞ!人として……最低だ!!」
「……口を慎め、反逆者が。この行為にどんな意味があるかも知らず…」
「意味だと?!意味があったら人を殺していいのか!?いいや…いいや!いいわけない……いいわけない!!」
あの騎士……さっきとは別人かと思うほどに荒れている
ローブの男達に何かされたんだろう
静寂と共に、緊張が走る。
「……人は…時に間違える生き物だ。理性が一時の感情を抑えられていないのだろう。……どうだ、1分待ってやる。それまでに今までの全てを撤回すれ…」
「うるさい!!もうこんな茶番はこりごりだ!お前らも変な噂を信じるのもうやめ…うっ!」
大男が、騎士の首を掴む。
「まだ話している途中だろう…いつから頭まで犬に成り下がったんだ?撤回せよ。私は優しいからな……まだ待ってやっても…」
「が…はっ…こんなこと……間違え…て…」
反論する余地もなし。
静かな森に首の折れる音が響いた。
幸いにも、お嬢様はよく分かっていないようだ
「あーりゃりゃ、兄貴やっちゃったんすか?スパイにするのも大変なんすよ?」
「反逆者に慈悲など必要ない。また探せばよかろう。それより炙っておけ。この者には消毒が必要だ。」
「へいへい、分かりましたよ。そのガキはどうするんすか?」
小柄な男は騎士を運び、何もないところから炎を生み出す。
騎士の男は炎に巻かれた…
あの小柄な男…魔法使いなのか…
奴らの矛先がお嬢様に向く。
「なぁガキ……お前、どう死にたい?」