お嬢様の行方
怪しい……
お嬢様を連れているあの男…
自身のことは騎士だと言っていたが…胡散臭すぎる。
私とお嬢様はお屋敷にて魔法の勉強をしていた。
そんな中にあの男がやって来た。
なんでも、西の森での駆除作業に関して、ミステリア家の意見が聞きたいからついて来て欲しい…とのこと。
私はなんでお嬢様なのか?を問いただしたが、当主様に言うほどのものではなく、来てもらえればすぐ終わるかららしい。
怪しすぎると思った私は、もちろんこの話を断った。
しかし、あの男が困った様子で粘っていたので、お嬢様が興味を持ってしまった。
その結果……
「いいよー!ルナが行くー!」
「しかし、お嬢様…」
「だって困ってるんでしょ?ルナがなんとかしてあげなくちゃ!!」
お嬢様の正義感を利用されてしまった。
私はまずいと思ったため誰かに助けを求めたかったが……奥様は現在不在、クルーガに関しては私がお嬢様に魔法を教えたいがために、いつもの勉強の時間とは違う時間を教えてしまっていた。
そのため、あいつも不在。
しかもあの騎士とやら…私には付いてくるなと言ってきた。
さすがにありえない。
でも頑なに譲らないため、私がお嬢様に諭されてしまった。
だが私だって譲れない。
お嬢様を一人にするわけにはいかない。
お嬢様はあの騎士に連れて行かれたが、私も二人を追うことにした。
頼れるのは自分のみ…もしお嬢様に何かあったら、この身に代えてでも返してもらう。
お屋敷を出て、後を追う。
人目を避けたいのか、早く森へ行きたいのか…どちらにせよ、なにかやましいことがあるのだろう。
人通りの少ない道を選んでいる。
特別、近道という訳でもないのに…
心なしか歩くのも速くなっている。
お嬢様が転びそうになっているではないか、あの野郎。
そもそも手を繋がないで欲しい。
お嬢様のふわふわの手が悲鳴をあげているぞ…
そんなことを考えていると、二人は森に着き、入っていった。
正面玄関ではなく、森を囲う塀を越えて。
あの男、4メートルはある塀をお嬢様を抱えて飛び越えやがった……
騎士とはそんな人間離れした生き物なのだろうか?
それを見た時は少し困惑したが、再びお嬢様を追う。
私は獣人。
身体能力には私も自信がある。
4メートルの壁なんて小石も同然。
軽々と塀を飛び越える。
騎士とお嬢様は森の奥へと入っていく。
この辺りに他の騎士は見えない。
やはり、あの男は誘拐犯なのだろうか…?
二人は奥へ、さらに奥へと入っていく。
周囲は大分暗くなってきた。
一体どこまで行くつもりなのか…そろそろ夕食の支度をしなければならないのに。
二人を追うことに若干飽きてしまっていた頃、ついにその時は来た。
騎士が動きを止めたのだ。
突然の出来事に緊張が走る。
騎士は何かを待っているようだ。
木の影に隠れながら様子を伺う。
すると、二人…黒いローブに身を包んだ者が現れた。
大男と小柄な男…
あれも騎士なのか…?
さっぱり分からないが、怪しいのは確かだ。
少し近づいて、聞き耳を立てる。
「はぁ、はぁ…連れて…きました。これがミステリア家のガキです。」
「……その白髪…確かに、間違いないな。」
「こいつ…魔力もそこそこありますねぇ…意外と本当に転生体なのかもなぁ。」
転生体…?
まさか、こいつら…“悪魔の輪”の連中か!