不穏な空気
「お嬢様ー!お嬢様ー!!」
おかしい…この時間はいるはずなのに…
いつも部屋にいるはずのお嬢様がいない
またかくれんぼをしているのか?
「お嬢様ー!出てきてくださーい!お勉強の時間ですよー!」
出てこない……これは相当自信のある場所に隠れているな?
よーし、絶対見つけてやるぞー
「ここ!」
…いない。
「ここだ!」
…いない。
「じゃあ……こ…」
………いないだと⁇
ここにもいないとは…想定外だ
まさか、ここまで上達したなんて……
「お嬢様…私はとてもうれしく思い…」
「あら、クルーガ。一体何をしているのかしら?この時間はルナと勉強ではなくて?」
かくれんぼに夢中になっている間に、奥様が背後にいたようだ
奥様お付きのメイド長は俺のことを見て肩を落としている
「奥様……それがですね、お部屋にお嬢様がおらず、またどこかに隠れているのかと探していました。」
「ルナが部屋にいなかった?……誰か、ルナがどこに行ったか知っているものはいる?」
「あ、私さっき街の方で騎士様と一緒に歩くルナ様を見かけました。」
一人のメイドが手を挙げた。
「ルナが騎士と…なぜかしら?」
奥様も知らないっぽい
「そこの方、お嬢様と騎士様はどこに向かったか知っていますか?」
「えーそうですねぇ……絶対とは言えないですけど、今日は西の魔の森で騎士団による魔物の駆除が行われるはずです。騎士様とご一緒ということはそれ関連ですかね?」
「西の森…お嬢様には誰か付いていたのですか?」
「んー、私が見た時はお一人だったので流石に声をかけようとしたんですが、離れた位置でマイナさんが見ていたので大丈夫だと判断しました。」
マイナが…あいつまさかお嬢様を独り占めしようとしているな?
許せん、許せんぞ
「西の森……」
奥様はまだお考えのようだ
魔物の駆除…確かにそんなのあったな
でも、お嬢様を連れて行く必要があるのだろうか?
そんな危ない所に?
それとも……お嬢様のお世話をしてみたかったのか?
……気持ちは分からんでもないな
でもだめだ
お嬢様は俺が世話をする
俺も西の森に行ってみよう
「クルーガ…もしかして西の森に行こうとしているの?」
……バレた
「……本当は止めた方がいいんでしょうけど…今回はちょっと怪しいわね…。」
「というと…?」
「西の魔の森は魔物が出るから、騎士団に依頼して駆除をしているの。この駆除に関して、我々は何も口を出していないわ。彼らのやり方があるからね。駆除してくれるならそれでよし。何かあるなら伝えてって言ってある。ただ、今までも騎士団から来て欲しいなんて要請はなかった…なのに急にルナを呼んでいる。私や旦那様ではなく…」
んー、怪しさ満点ってこと…
「では、急ぎ向かった方が良さそうですね。」
「えぇ…お願い。マイナが見てるならしばらくは大丈夫だと思うけど…もし見つけたら無理にでも連れてきなさい。騎士団には私から言っておくわ。」
「かしこまりました。お任せください。」
お嬢様を連れて行った奴は、お嬢様と遊びたい変態か……それとも、お嬢様を狙う誘拐犯か
どちらにせよこの状況は危ういようだ
その場を後にして、西の森へ向かう。
変態ならまぁ、きもいで済むが……もし、我がミステリア家に…お嬢様に仇なす者なら…
とにかく急ごう