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新天地

「おぉ…でっけぇ…」



空いた口が塞がらない。

ミステリア領を出立してから、およそ二時間。

いよいよ目的の王都が見えてきた。


俺たちの住んでいるエイレーネ・アタラク王国は、建国当初から幾度となく他国からの侵攻を防いできた不動の王国。

他国との境界線ではまだその戦火は止まないが、この王国の中枢を担う王都、アタラクではその気配も感じさせないほど賑わっているらしい。


見た目の感想は…壁が高い。

遠くからでも分かるあの重厚感。

そこにあるだけで圧倒的な存在感がある。


あの壁に加えて、馬鹿みたいに強い騎士団がいるって…そりゃ、誰も落とせんわ。あんな壁見たらやる気失せちゃうよ。



「クルーガ、なんか言った?」

「あぁ、いえ…王都が予想以上に大きかったので、思わず口に出てしまいました。」

「ふーん…クルーガ!私も上に連れてって!」

「危ないですよ。中からは見えないんですか?」

「少ししか見えないわよ!そっちの方が景色良さそうなんだもん!少しくらいいいじゃない!」



確かに、少し窮屈そうか。そろそろ別の景色を見たいのだろう。そんなお嬢様の気持ちに応えたい気持ちはある。しかしだね…ここまでマイナが一言も話してないんだよ。言葉にしていないだけで、何か思ってるに違いない。さっきから、俺の座るちょうど真下から無言の圧力を感じるんだよな…



これは、愛しのお嬢様のお願いだ。

少しぐらいならいいだろうと考えた俺は、ウィズちゃんとの試験で発覚した俺の“存在証明(カラー)”、≪両翼の片割れオルデン・フリューゲル≫でお嬢様を移動させる。

移動するのはお嬢様だけだと思っていたら、ご学友のナコさんも一緒に釣れた。

そして、同じ名前の“存在証明(カラー)”を持つマイナも、お嬢様の影から出てきた。


俺の憩いの場はあっという間に満杯である。

同時に、マイナからの冷たい視線がとても痛い。

俺は逃げるようにマーラブさんの隣に座る。



そんなこんなで、みんなで景色を楽しんでいたら城門に辿り着いた。

門では検問が行われており、馬車の大行列ができている。

大分時間がかかるようだ。

今日は入学式というのもあり、いつもより人が多いんだろう。


お嬢様と歳の近そうな女の子に、マイナと同じ種族の獣人。

他にも、背が低い割に腕が太いドワーフなど様々な種族がいる。

まさに漫画で見た光景、期待が高まるには十分すぎる待ち時間だった。


待機中とても暇だったので、検問所前で下を向いて座っていた男に話しかけたが無視された。

少しショックだった。

少し…うん、少しだけ。

なんか暗そうだったから話し相手になろうとしたんだけど…俺にはまだレベルが足りないらしい。

王都にはこういう人が多いのかと心配になったが、そんな考えはすぐに消えた。


検問をしている騎士のお兄さんはとてもフレンドリーで、某ネズミの国のキャストなのかと間違えそうになる。

騎士のお兄さんは、馬車の屋根の上にいるお嬢様たちに驚き、それがミステリアの名を持つ令嬢だと知り腰を抜かす。

フレンドリーに接しすぎたことを謝られ、頭を上げてと説得する。

それを聞きつけた騎士様の上司が現れて、部下を許してくれと頭を下げる。

お嬢様は何度も説得するが、騎士たちの声の大きさに負けてしまう。


このやりとりが意外と長引いてしまい、検問所でのちょっとしたイベントになってしまった。

面白そうだったので、怯える騎士たちを「お嬢様はあのミステリア家のお方である!このことが宰相様に伝わったら一体どうなることやら!!」と脅すと、彼らは見てて気持ちいいぐらい震え始め、お嬢様はさらに困った。

そんな騎士たちに追い討ちをかけようとしたら、マイナに殴られ、叱られてしまった。

お嬢様をアピールするいいチャンスだと思ったんだけどな…あとマイナはいい加減、力加減を覚えてほしい。

毎度毎度壁に埋まっていたら俺の身がもたないよ。



そんなこんなで無事検問を抜け、門をくぐる。


焦らしに焦らされ、期待一杯の景色がどんなもんか目を見開いて見渡す。

そこには、視界いっぱいに街並みが広がっていた。


ミステリア領とはまた違う風景。

家々は石で建築され、馬車の通る大きな道も石畳。

主に石とレンガを基調にした街並みだった。


道の脇には屋台が並び、そこら中で人の声がする。

真隣で話さなければみんなの声が聞こえないくらいに騒がしい。

でも、この騒がしさが癖になる。


行列の待機中、いくつかの屋台を楽しむ。


肉に、パンに、これは焼きそば…こりゃ、お祭りだな。この屋台の数…先が見えない。道は人で溢れ、陽気な音楽に包まれながら楽しめる…元の世界でのお祭りと似ているようで少し違う…みんな、楽しそうだ。それに、これだけ人がいれば犯罪なんて起こらないだろう。こんな人の目がある中で犯罪する奴は馬鹿だ。ということで俺は屋台巡りに出掛けよう。元の世界にはない屋台があるかも…


遊びに行くため自分にそう言い聞かせ、口一杯に食べ物を頬張りながら馬車から離れようとする。

その時…



「ハッハー!よく聞け、愚民ども!!俺の名はオイガ!“目玉収集家”のオイガだ!俺は先日!ついに…ついに悪魔の輪(デビル・リング)への加入を果たした!これは加入してから最初の一歩!この一歩を俺は誰よりも偉大なものにする!そして!俺は情報を得た!なぁ!いるんだろ!?王女様よ!!手始めに…てめぇからぶっ殺してや…」



突然何かが始まったかと思えば、それは突然終わった。

屋根の上で演説をしていた男の体が地面に埋まっている。

その男は、見覚えのある人物が沈めていた。

騎士団長、赤髪である。



「皆の者!騒がせたな!!今日は他領地から来る者も多い!そのため、こいつのような馬鹿も現れる!しかし、安心せよ!今は潜んでいる阿保も!機を伺う間抜けも!我ら王の軍団(キング・レギオン)が必ず捕える!故に!!皆は羽目を外さぬ程度に楽しめ!今日という日を存分に満喫せよ!!」



男を沈めた爆発で注目を集めた赤髪は、その目線に彼女らしく応えた。

赤髪の言葉が終わると、鼓膜が破れるほどの歓声が巻き起こる。

ミステリア領にいる時はそれほど名前を聞かなかった赤髪は、ここではとても有名なようだ。


国民に慕われている赤髪を見るのは初めてだ…感情なんてなさそうに見えるのに、意外としっかり団長をしている。印象が変わるなぁ…おっと、目が合っちゃった。馬車に戻ろっと。


手当たり次第に買い込み、馬車に戻る。

馬車に戻って屋根上の女性方に献上すると、もう一回行って来てとお使いを頼まれる。

俺もゆっくりご飯を食べたかったが、お嬢様のためなら仕方ない。

馬車から飛び降り、お使いに走る。


現在、道は渋滞中。

列は長く、まだまだ時間がかかりそうだ。


せっかくなら、この屋台全部制覇してしまおう。

そう決意し、ミステリア家の財力を見せつけるため屋台の方々と交流を図る。



いや…みんな、タダでくれちゃった……


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