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ガキンチョエルフの考え

「主もそこまでじゃ。」



体を襲う重圧と止まらない爆発。

その声は、それらを一瞬で消し去った。


体が一気に楽になる。

空になった肺に酸素を流し込む。



「学長……邪魔をしないでください。」

「んー?いやじゃ。」

「理由は?」

「こやつらが死にかねんからの。」

「職務による衝突の末の死は許されている。この類は私の領分。私のやり方に口を出さないでもらいたい。」

「それはできん相談じゃ。戦う意志のない者をいじめて何になる?それに我から見れば、今回悪いのは主だと思うがの?」



二人は互いに意見をぶつけ合う。

一歩間違えればさっきの続きが始まりそうな雰囲気。

息を殺して事の行く末を見守る。



「学長……これは命令だ。…口を挟むな。」

「断る。いくらお主といえど度が過ぎている。これ以上は許さぬぞ。」



次第に語気が強くなる二人。

言いたいことを言ったようで、この場に静寂が流れる。

言葉にできない戦いが、今目の前で行われているようだ。



「………はぁ、分かりましたよ。確かに…急に襲いかかった私が悪い。しかし、この二人を見逃せないのも事実。学長も私の職務を知っているはずだ。この二人がアーティストであるなら、私は二人を捕える必要がある。」

「分かっておる。我に任せよ。こういう時こそ我の出番よ。」



赤髪が折れ、緊迫した空気が緩くなる。

ガキンチョエルフは赤髪を説得すると、自信満々に話し出した。



「さて、クルーガとマイナだったか?まず先に言っておこう。ローズがすまなかったな。こやつもいつもはこんなではないんじゃが…最近どうも王都の治安が悪くてな。少しピリピリしとるんじゃ。故に手が出てしもうた。すまんの。」

「い…いえ、僕たちも配慮が足りませんでした…すみません。」

「いやいや、主らは正しかったと思うぞ。それに、主らの戦闘…実に見事だった。ローズ相手にあそこまで戦える者は王都でも中々おらん。やるではないか。」

「学長…私はまだ…」

「本気ではないんじゃろ?分かっておるて。普段からその調子なら可愛いものを…無理に成りきろうとするな。何度も言っておるじゃろ?もっと気楽にやれ。」

「簡単に言うな…私だって考えてるんだ…」

「そのままでいいと思うんじゃがなぁ…まぁそれはそれじゃ。主ら二人の可能性は見えた。我の知らぬ魔法を見ることもできたし、我は満足じゃ。」



ガキンチョエルフは赤髪の頭を撫でながら話す。



「しかしじゃな、一つ問題がある。主らはアーティスト…カラーという言葉を知っておるか?」

「し…らないですね。」

「そうか、では説明しよう。発言者(アーティスト)とは、存在証明(カラー)に目覚めた者のことを言う。その身に存在証明(カラー)を宿し、この世界に石を投げる者達…それが発言者(アーティスト)じゃ。」

「石を投げる…」

「うむ。ここにおるローズや…この我も、それに該当する。これは自慢ではないが…我々発言者(アーティスト)はめちゃくちゃ強い。ただ存在するだけで国家戦力と重宝されるぐらいにな。故に、主らがローズと戦えていたのを見て驚いたわ。まぁ、我が止めるがもう少し遅ければ、確実に主らは死んでいた…危なかったな。」



ガキンチョエルフは自信満々に胸を張り、先の戦いの感想を述べた。


確かに、赤髪はまだ力を隠していた…あれが本気でないと言うなら、俺たちを捕まえようとしたってのもあながち間違いじゃないのかもしれない。まだ戦ってないのに「あれは死んでいた」とか言われるのは少し癪だけど、あれ以上の力で来られると思うとゾッとする。ただでさえ、あの重圧も耐えられるものじゃないってのに…



「とにかく、今は我ら発言者(アーティスト)がそれだけの力を持っていると覚えておけばそれでいい。そして、この大きな力のことを我々は存在証明(カラー)と呼んでいる。存在証明(カラー)とは、持ち主の人生の軸じゃ。こうしたい、こうありたいという強い思いが、この世界に概念として現れたもの。どこからともなくその身に宿るため、女神に授けられたものだと考えられておるぞ。」



ここまで謎だった言葉が次々と明らかになっていく。


俺のこの力も…急に現れたという点では全く同じ。お嬢様とマイナを守りたいという思いに沿った力でもある。国家戦力になれるほどの力があるのかは知らないが…



「この力は様々なことに利用しやすい。便利であり、そして危険でもある。もしこの力が犯罪に使われようものなら、それこそ国は一瞬で滅ぶじゃろうな。それを防ぐために、我らが王様は考えた。発言者(アーティスト)を監視下に置こう…と。そのため、騎士団はパトロールを欠かさない。まだ未発見の発言者(アーティスト)を捕えるためにな。それが、今回ローズが主らを襲った理由じゃ。こやつは、主らが発言者(アーティスト)だと考えておる。主らが発言者(アーティスト)である場合、無理にでも王都へ連れて行かねばならんのだ。そこで聞きたい。」



ガキンチョエルフは一呼吸おいて疑問をぶつける。



「主らは存在証明(カラー)に該当する力を持っておるのか?」



質問の答えに詰まる。


俺らはこの力のことをよく知らない。説明を聞いている限り、この力が存在証明(カラー)なのは間違いないんだろう。ガキンチョエルフは色々知ってそうだし…正直に言って話を聞きたい気持ちはあるんだよな…。しかし、無理矢理王都に連れて行かれるってのが引っかかる。まるで犯罪者を連行するみたいなニュアンスだ。それに、連行されるならお嬢様と離れ離れになるということ。それだけはなんとしても避けたいことだ。


本当のことを言うか、嘘を言うか。

色々な可能性を考える。



「俺は…」

「ここだけの話、我は主らを発言者(アーティスト)ではないと考えておる。そして、もし主らが発言者(アーティスト)でないと言うなら、王都に連行する必要もない。ローズの予想は外れ、この話はここまでじゃ。我はこのまま素敵な気分で帰れるんじゃ。是非とも、そうしたいのぉ……。」



ガキンチョエルフは俺の言葉に割って入ってくる。

不自然にも、あまり上手くないウィンクをしながら。



「俺は…」

「はぁあ〜。このまま最っ高の気持ちで帰りたいのぉ…。どうすればこのまま帰れるんかのぉ…?」



再び遮ってくる。

ウィンクの主張が一層強くなった。



「俺…」

「あの力は主らの創作魔法(オリジナル・マジック)なんじゃろ?きっとそうなんじゃろ??ただの魔法ならいいのぉ…そう言ってくれるとありがたいのぉ…?」



このガキ…話させてくれねぇ。それに、明らかな誘導じゃねぇか…。なぜか知らんが助け舟を出してくれてんのか?どちらにしろ、お嬢様と共にいるには嘘をつくしかなさそうだし…ガキンチョエルフがどうする気かは知らんけど、従うしかなさそうか…



「あれは…俺たちの創作魔法(オリジナル・マジック)です…存在証明(カラー)とは別物だと思います。」



俺はガキンチョエルフに従った。

少し間を空けて、ガキンチョエルフは話し出す。



「ほお!そうかそうか!!あれは主らの創作魔法(オリジナル・マジック)か!!いやはや見事な魔法じゃったぞ!ほら、ローズ!やはり存在証明(カラー)でないではないか!主が疑ったこと、二人に謝るがいい!!」

「…それで押し通せると思うのは学長だけだ…本当にいいんだな?」

「いいも何も、本人達がそう言っておるからの。信じるしかあるまいて。」

「……もう、いいや。責任は学長が取ってくださいよ。そこの二人、疑ってすまない。判断が早急すぎた。」

「ふむ、それでいい。ミステリアのもそれで良いな?」

「よくはないと思いますが…まぁ、いいでしょう。この瞬間だけは頭を悪くすることにします。」

「ナッハ!話が早くて助かる!そういえば、主もこっち側じゃったな。」



口を挟む隙もなく話が進む。

どうやら彼らの中で話がまとまったようだ。



「では、この話はこれで終わりじゃ。主らは発言者(アーティスト)ではなく、捕える必要もない。皆の言質も取り、仲良く共犯になったことじゃし、ゆっくりと話を聞かせてもらおうか?主らの…存在証明(カラー)のことをの?」

「学長…切り替えが早すぎる。それに、見逃すのは今回だけだ。学長が面倒を見るから見逃すんだ。次、何かあれば…その時は王に報告させてもらうぞ。」

「分かっとる。そんなことは起こらんと思うがな。主も見たじゃろう?こやつらの手綱を握る者は既に居る。何も心配は要らん。…まぁ、主の杞憂は分かる。じゃが、安心せえ。そうならぬよう、こやつらは我が教育するさ。ナッハ!久々に、『特例課』を設けることにしようか。」

「『特例課』!?!?」



黒髪メガネの女教師が驚き声を上げる。



「あ…ごめんなさい…。」

「…さて、まずはルナじゃ。そなたは先の試練で大きな可能性を示して見せた。ここで言うのは違うかもしれんが…ミステリア・ルナ、主がいいのであれば是非とも我が学園に招待したい。そなたは合格じゃ。」

「…ありがとうございます…!!」


「次に、クルーガとマイナ。本当のことを言えば、主らの魔法を見るまで、我は主らを我が庭に入れないつもりでいた。しかし、気が変わった。このまま牢に入れるのは勿体無い。故に、我が直々に育ててやる。学園に、主らの席を設けてやろう。このチャンスを手にするか、はたまた棒に振るうのか…それは主らの自由じゃが、ローズの剣幕を見ればその答えは二つに一つ。……さぁ、選べ。」



二つに一つ…ここで断れば、さっき嘘をついた意味がなくなり、赤髪に連れて行かれる…。それに、この状況にならなければお嬢様と一緒に学園に行く計画も破綻確定だったとは…運がいいのか悪いのか。まぁ、今の話なら俺に断る理由もない。その提案…乗るしかないね。



「我々の生きがいはお嬢様でございます。お嬢様のそばに居れぬ生活など想像もしたくありません。どうか、よろしくお願いします。」

「私も…お願いします。」

「うむ、よいぞ。どうじゃ、これで良いか、ローズ?」

「……分かりました。」



赤髪は半ば諦めつつ納得する。

騎士団長の座でも、ガキンチョエルフには勝てないようだ。



「さ、話を戻そう!主らの存在証明(カラー)のことを教えるのじゃ!さぁ、早く!!」



ものすごい勢いで問い詰められる。

さっきまでの大人びた雰囲気はどこに置いてきたのか…。

そう疑問に思いながら、一つ一つ答えていく。


こうして、俺の魔法探究の旅に少しのスパイスが加わった。

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