vs騎士団長①
「マイナ!!危ない!!!」
赤髪の剣先がマイナを襲う。
マイナは、咄嗟のことで動けずにいた。
俺は急いで、マイナとお嬢様の二人を近くへ移動させる。
「っ!」
赤髪はマイナが消えたことに一瞬戸惑う。
しかし、その標的が移動しただけだとすぐに気づき、移動させただろう人物を強く睨む。
「……貴様も…同じ力を持つのか?」
「マイナ、大丈夫か!?」
「え…えぇ…。」
「おい!急に何なんだ!あんた今殺す気だっただろ!?」
マイナは放心状態。
代わりに俺が叫ぶ。
何なんだ、急に!?
マイナが移動した瞬間、切りにかかりやがった…!
俺が移動させなきゃ首が吹っ飛んでたぞ!
睨む赤髪を睨み返す。
「…殺す気はない…ただ、職務を全うしようとしただけだ。…たった今、もう一つ増えたがな。」
職務!?
こいつ殺し屋かなんかか、こいつ!?
「答えろ。貴様も…アーティストか?」
「アーティスト………?」
何だアーティストって…
芸術家……この世界でもいるのか?
いや、何で急にそんなこと…
「話さないか…まぁいい。二人まとめて捕らえてくれる。」
「い”っ!」
赤髪が何かを呟いたと思えば、再び大きな爆発が起こる。
赤髪はその爆風に乗り、一気に距離を詰めてくる。
先ほどマイナに向いていた剣先が、次は俺に向いていた。
爆速で迫る剣先を何とか躱し、お嬢様とマイナを安全な場所へ移動させる。
赤髪は俺の休憩を許さない。
躱した剣が再び襲いかかる。
全力の身体強化魔法をもってしてギリギリ避けれた。
何か方法を考えるため、距離を取る。
この女、早すぎる!
今の動きは俺の全力だぞ!?
それをああも余裕で繰り出すなんて…
「…諦めろ。お前がいくら足掻こうが私には勝てない。少しは動けるようだが…まだまだ温い。それともどうだ…先ほど使ったお前のカラーで、私を殺してみせるか?」
カラー?
さっきから何言ってんだこいつは…
俺はアーティストでもねえし、絵の具も持ってねぇ……訳が分からん…。
だけど、赤髪が攻撃してくる以上応戦しないきゃいけない。
見た感じ、赤髪が使うのは剣と…爆発?
あれも魔法なのか?
赤髪自身があの爆発を利用してあれだけの推進力にしてるってことは…俺が食らったらぶっ飛ぶな…。
このまま距離をとって戦うしかない…
爆速を利用した赤髪の進行路は全て直線。
俺に向かってまっすぐだ。
それならやりやすい…赤髪が飛んだ瞬間に魔法を放つ。
まるでガンマンの早打ち勝負だ。
迫り来るだろう赤髪に対し構える。
目と目を合わせ、決してその焦点はずらさない。
「……水性銃弾!!」
赤髪が踏み込む。
同時に、先ほどと同じく爆発が起こる。
同時に、俺の魔法が放たれる。
水性銃弾はまさに銃弾であり、その軌道を目で追うのは不可能だろう。
念の為、2、3発余分に撃っておく。
放たれた水弾は、赤髪めがけて飛んでいく。
水弾の進路は完璧、タイミングも同じく完璧。
これは当たったと確信した。
……が、
「……は!?」
こいつ、爆風で自分の進路を変えやがった!
俺の水性銃弾が見えてんのか!?
進路から逸れた赤髪は、再び爆風に乗り接近する。
俺は水性銃弾で対抗するが、当たる気配はない。
「……くっそ…!」
赤髪と距離をとりながら応戦する。
どうする…このまま逃げ続ければ時間は稼げる…
でも……倒せねぇ…!!
水性銃弾は俺の使う魔法の中で最も速い魔法だ。
それを躱すなら、魔法を当てるのは…厳しいか…。
なら拳でやるか…?
いや、あの女は騎士団長とか言っていた。
戦闘においては確実に俺より強い…!
距離をとって戦わなきゃ決着はすぐに着く…。
魔法で何とかしなきゃか…?
爆風で空を飛ぶ赤髪を眺める。
まずはあの機動力を潰さなきゃ…魔法も何も当てられない。
この開けた場所はこいつの長所を伸ばしてる…
あいつの自由を潰すには…進路を塞ぐしかない…!
地面に手を添え、言葉を込める。
「岩の都!!」
地面から無数の岩の柱が立ち昇る。
俺が身を隠すには十分の高さ。
これであいつはこの柱を避けながら攻撃しなきゃいけない。
そして、これに加えて…
「ふん、小賢しい。こんなにも荒い合間…通れないわけが……ん?」
柱の間にはぷかぷか浮かぶ水の玉。
それは、目を奪うほど綺麗だった。
「これは…」
「炸裂しろ!設置型水性爆弾!!」
「…!!」
水の玉は輪郭を震わせ破裂する。
それだけでは終わらず、大きな水玉から全方位に水性銃弾が放たれる。
設置型水性爆弾は機雷のようなもの。
赤髪と接触すれば破裂し、中から水性銃弾が放たれる。
仮に触れなかったとしても、遠距離操作による起爆が可能。
設置したのはこの一つだけじゃない。
柱の間にいくつも漂わせた。
今の水性銃弾が当たってくれればいいんだが…
赤髪は空へ舞う。
見た感じ…深い傷はない。
外れたか…まぁいい。
退けることはできた。
今のを見せれば、安易にここへは来れないだろう。
赤髪の機動力を奪い、俺の身を守りながら攻撃する。
魔法を当てれないなら、魔法のある場所におびき寄せる。
俺を捕らえたい赤髪にとって、この罠は間違いなく邪魔。
つまり、このフィールドでは俺が有利…!
「考えたな…私が攻めにくい地形を作ったか…。しかし、これは時間稼ぎでしかない。貴様の魔法では私を殺せんぞ?私が捕まえるその時まで、そうやって引きこもる気か?」
「うるせぇよ!てめぇだって俺に一度も当てれてねえじゃねぇか!!」
赤髪の言葉に言い返す。
確かに、赤髪の言うことは正しい。
水性銃弾も設置型水性爆弾も当たらない以上、そもそもダメージを与えられない。
あいつから見れば、この状況はひっくり返せる盤面なのかもしれないし、あの言葉はただの強がりなのかもしれない。
…だが、これでいい。
俺の強さは他にある。
今は…“あいつ”が来るのを待つ。
もうすぐで…来るはずだ…!
この地形を赤髪が攻めにくいと思っているのは事実だ。
なら、追い込まれる時まで擦り続ける!
「かかって来い!口だけ女ぁ!!」
「言われなくとも…!」
爆風に乗り、空から直角移動する赤髪が迫る。
場所を移動しながら設置型水性爆弾を起爆。
加えて、立てた柱を横、斜めに向きを伸ばす。
逃走しながら、できるだけの妨害。
赤髪からすれば、何もなかった進行路に突如障害物が生まれているようなもの…。
普通はこの全てに対応できるわけがない…!
なのに…赤髪は避けれている!
一体どんな動体視力だよ!!
様々な妨害も虚しく、赤髪との距離は着々と埋まっていく。
このままじゃジリ貧…
「鬼ごっこは終わりにしよう。久々に…やりごたえがあったぞ。」
そう聞こえると、一回り大きな爆発が起こる。
くっ…!詰められる!
急いで妨害工作を施す。
しかし、赤髪の速さはこの速さを上回っていた。
「これで終わりだ……!」
赤髪の剣先が迫る。
くそ…!間に合わな……
急接近する赤髪に、応戦する手段がない。
もはや終わり…その言葉が脳裏をよぎる。
だが、その考えは一瞬で覆る。
いや、間に合った!!
「来い!マイナ!!」
「なっ!!」
接近した赤髪は、突如現れたマイナに吹き飛ばされた。




