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思いは武器へ

二人は一斉に走り出す。

まるで心が通じているように。


しかし、二人の前には壁がある。

二人を妨げる巨大な壁が。



ワーウルフ……本によれば、そこらにいるウルフの上位互換…

今までのやつより強いはず…

でも…今更気にしてられない…!!



「マイナ!!」

「分かってる!あんたが補助だ!とっととやるよ!!」



ワーウルフとの正面衝突。

体がボロボロでも、ワーウルフとマイナの力は互角。

拳と拳がぶつかり合い、鈍い音が響き渡る。


そこに俺が乱入する。

水属性魔法で視界を奪い、ワーウルフの関節を手持ちの剣で攻撃。



ワーウルフはバランスを崩し、後ろへ倒れる。


マイナはその隙を見逃さない。

彼女はすかさず背後を取り、ワーウルフの脊髄に気持ちを込めすぎた拳を突きつける。



倒れかけたワーウルフは、倒れるのとは逆方向へ吹っ飛んでいく。



「クルーガ!次だ!!」

「応っ!!」



マイナの声かけに気合が入る。



「ほう…ワーウルフをその年で……なかなかやるようだが、これで終わりではないぞ…」



大男は再び魔獣を呼び寄せる。

ワーウルフが三体に、その他の魔獣が多数立ちはだかる。



マイナは先頭にいたワーウルフとぶつかる。

その力は互角…と言いたいところだが、流石に疲れが見える。

若干押され気味だ。



他の魔獣がマイナに迫る。



が、それは俺が許さない。

マイナとぶつかるワーウルフに、魔法で邪魔をしながら他の魔獣を相手にする。


ボールにして扱っていた水属性魔法を、できるだけ圧縮して魔獣に飛ばす。

弾丸のように鋭い水鉄砲の完成だ。


一体一体正確に…とはいかないが、それぞれの脳天を撃ち抜く。

同様にしてワーウルフにも撃つが、奴らの皮膚は硬く、弾かれてしまった。



魔獣の数は尽きない。

他二体のワーウルフがマイナに迫る。


マイナに三体を相手する余力はない…

それに…


現在マイナは防戦一方。

このままではこの壁を越えられない。



「…うっ……ぐっ………がはっ!!」

「マイナ!!」



マイナは防戦の結果、攻勢に出れず、殴り飛ばされてしまう。


吹き飛ぶマイナを追いかけ、体で受け止める。



「ふん…所詮その程度…お前達はよくやっている…早く楽にしてやろう。」



そう言うと、大男はお嬢様を地面に下ろす。



「マイナー!!クルーガー!!」

「……仲間を思いながら逝く最後も…悪くない。これで、本当に最後だ。さらば…優しい君よ。」



大男は、背中に携える大剣を持ち出し、お嬢様の背中を追う。



あの大男…ついに動き出したか…!

これ以上時間は掛けられない!



「マイナ…聞こえるか!もう余裕がない…道は俺が切り開くから…もう少し…耐えてくれ!!」

「はぁ…はぁ……あぁ、もちろん…お嬢様は……絶対にっ…死なせない!!」



マイナは全力で駆けていく。

その速さは先ほどとは比べ物にならない。


俺も後を追いかける。

出し惜しみはしていられない。


身体強化魔法に全魔力を集中させる。

そうでもしないとマイナに追いつけない。



マイナを追い抜かし、先頭のワーウルフと対面する。



俺はマイナの道を作る……

それなら……吹っ飛ばす!



俺は加速を止めず、先頭のワーウルフにそのまま突っ込む。

ワーウルフはそれに対応出来ず、腹部に俺の足が刺さった。

ワーウルフは、俺の勢いを受け継ぐように、そして後ろの魔獣を薙ぎ倒しながら大男に向け飛んでいく。



「まだ抗うか…小癪なガキめ…」



大男は大剣を振る。

その大剣は、いともたやすくワーウルフの体を両断する。



あの皮膚を一刀両断…とんでもない馬鹿力じゃねぇか…!

とはいえ、道は開けた…あとは…!



「マイナ!走れ!!」



マイナはひらけた道をただまっすぐ駆けていく。

しかし、そのマイナを見た残り二体のワーウルフが、マイナの背中を追いかける。


ワーウルフの速度はマイナより速かった。



「っ!」



一体のワーウルフの爪がマイナに迫る。



「させるかぁぁぁぁ!!!」



マイナに迫る攻撃を、俺が代わりに受け止める。



「クルーガ!!」

「う…大丈夫だっ!こいつらは俺がやる!!お嬢様を頼んだぞ!!!」



マイナとワーウルフの間に立ち、二体のワーウルフとぶつかり合う。



俺にはマイナほどの力はなく、正面から殺し合えば確実に負ける。

一体のワーウルフと攻防を繰り返す。

剣の刃は欠け、切れ味は悪くなり、次第に押されはじめる。



やっぱ…分が悪いか…!



十分距離を取りながら時間を稼ぐ。



俺だってマイナの加勢に行きたいのに…!

さっきの一撃が意外と深く、体が…もう……



どうにかして状況を変えようと考える。



あれ…もう一体どこに……っ!!



意識外から衝撃が走る。

受け身も取れず、人形のように地面、森の木へ叩きつけられる。



「う…ぐ…!」



死角からの攻撃……全く気づかなかった…!

くそっ……体がもう…!



ワーウルフが距離を詰めてくる。

その動きはゆっくりで、俺が動けないと分かっているかのようだ。



「マイナー!!クルーガー!!」

「お嬢様……!」



走るお嬢様が目に映る。

その姿は、俺達を心配しているように見えた。


それは本来、させてはいけない顔であり、俺達が不甲斐ない故に出る顔である。



そんな顔を見せないで…


あなたには…笑顔を見せてほしい…!

俺がみんなを守るから!!



あぁ……俺は…やっぱり……!








走れ……ただ走れ…!

クルーガの作った道を…無駄にしない!

お嬢様は……必ず助ける!!



身体強化魔法を重ねに重ね、すでに魔力は限界。

さっきクルーガが庇ってくれなかったら、私はもう…走れていない…


走りながら魔法を重ね、意識は遠く離れている。

強化魔法で筋肉は麻痺し、足に感覚はなく、身体中が悲鳴をあげていた。


だが、マイナにそれは聞こえない。



「マイナー!!クルーガー!!」

「…お嬢様……!!」



走るお嬢様が目に映る。

その姿は、恐怖に支配されているように見えた。


それは本来、させてはいけない顔であり、私達が不甲斐ない故に出る顔である。



あなたにそれは似合わない…!


あなたには…あの笑顔を見せてほしい…!

私が傍で守るから!!



あぁ……私の…この気持ち……!





一人は人間。

一人は獣人。


その両者が、過去の記憶を駆け巡る。



一方は居場所を守るため、もう一方は愛しき人を守るため。

その思いは同じ方向を指していた。




絶対にという意思が、二人に力を与える。




「「「………死なせない!!」」」





これは、心の奥から出た願い。



そして、世界に投げられた石である。





先人の言葉には、こんなものがある。



「神様は必ず我らを見ている。報われるその時まで、力の限り戦いなさい。」




大男は大剣を持ち上げる。



人間と獣人は手を伸ばす。

己の最大限をもってして。



「「「死なせるかぁぁぁ!!!!」」」



両者の思いは共鳴し、世界に大きな波紋を呼ぶ。



世界に、それが響いたのだ。



『世界に乱れを確認。個体名:カリエンテ・マイナ及び、リーベン・クルーガに“両翼の片割れオルデン・フリューゲル“を授けます。』



その瞬間、たくさんの情報が二人の脳内をかき回す。

そして、二人は理解した。

その力の使い方を。



獣人は影に沈み、人間は手をかざす。



大男は振りかぶる。



「っ!!貴様っ!」



大男の剣先は、突如目の前に現れた獣人に直撃する。



「ぐっ……!!」

「なぜ急に……今のはまさか!覚醒したか!?」



大男はもう一度大剣を振るう。



だが、それが当たることはなかった。



「っ!!消えただと!?」



大男は動揺する。

なぜなら…

その場に、大男の狙う対象はいなかった。




ただ、一人の人間を除いて……

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