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資源が有ることで 余計なことをする奴ら

世間を無駄に揺さぶる人たちいますよね。

 時は昭和11年


 日本は世界恐慌の荒波を国内開発で乗り切り、さらに景気を上げていく。景気の良さは人々の生活に経済的余裕と心のゆとりを持たせた。

 そして、悪い意味で調子に乗る奴らも出てくる。


「日本政府は人種差別撤廃を訴え続けろ!」

「反対する国はけしからん!!」

「奴隷制の廃止にも力を入れろ!」

「反対する国はけしからん!!」

「人権を尊重しろ!」

「反対する国はけしからん!!」

「全ての国に普通選挙の導入を」

「反対する国はけしからん!!」


 国内で起こされたデモや集会での一例である。そして、かならず「反対する国はけしからん!!」と叫ぶ一派がいた。

 経済的に満たされた意識高い系の人たちである。

 特高が深くくらい地味で過酷な捜査に移り、思想警察のような邪魔をするものが居なくなった。軍事施設の周りでやると憲兵隊が来るので軍事施設の周りではやらないというこすさだった。

 そしてその一派は、海外へも出て行った。

 ニューヨークでワシントンでロンドンでパリでジュネーブで・・・

 彼らのやっていることは法律に違反することでも無く、取り締まりの対象には出来ない。海外でもきっちりとデモと集会の届け出を済ませてからの行為だった。外国政府も取り締まりが出来ない。

 そして結果は、賛成する人もいたが最初からそんな事は認めない人たちの方が圧倒的に多く、衝突が起こる。デモや集会の妨害だ。そしてお互いにエスカレートしていく。

 主張をより過激に叫び、妨害は投石などの暴力へと。

 デモや集会から外れた者も先に暴力を振るった側も警察が逮捕拘留などするのだが、それが余計に反対派を刺激する。警察は法に基づいて執行しているだけなのに、警察を批難し政府を弱腰だと批難する。

 背景には人種差別もあるが、何より世界恐慌から脱し切れていないどころか不景気真っ最中の国も多い。当然人心に余裕は無い。日本への批難をするようになる。




「都合の良いことをしてくれるな」

「全くだ」

「喜ばしいな。後は新聞とラジオで盛り上げよう」

「盛り上げるか。随分と殊勝な言い方だな」

「奴らには感謝しているのだよ」





 まだ各国政府はこの程度では内政干渉にも当たらないとの姿勢だったが、新聞社やラジオ局がこの問題を大げさに取り扱い始めると姿勢が変わっていく。

 各国政府は日本に対してこの一派の運動を辞めさせるように申し入れるが、法律に違反している訳でも無く取り締まりが出来ない。やむを得ずおとなしくして欲しいとお願いするが、ますます調子に乗ってしまう。

 日本政府は法改正で対応しようとするが時間が掛かってしまった。

 各国政府は好ましからざる外国人としてこの一派を扱いだした。ビザ発給の停止である。同時にこの一派を始め賛同者が行うデモや集会を規制し始めた。

 一派の国外活動は低調になったが、一部はこの一派で無いことを装いゲリラ的にデモや集会を実行した。

 規制できない日本政府への風当たりが強くなってくる。日本政府は法律にのっとり対応していると説明するが、早く騒ぎを収めろと言われることが多い。一部ではもっともだと考えているが時期尚早であると考えている。

 各国政府が先送りにしている問題を声高々にわめくのだ。賛同者も増えている。遂に内政干渉であると言い出した。

 それは外交の場でも日本が問題提起をした事項を反対されると言う事態にまでなる。国際連盟でも日本は孤立を始める。

 日本が独り占めしていると思われているゴールドのこともあって嫌味が厳しくなっていく。



 日が過ぎ昭和12年。


 この時期、政権を担当しいていたのは温泉(おんぜい)内閣だった。事なかれ主義で優柔不断で強い意見に影響されやすい人物だった。なんで首相になれたのか日本政治七不思議の一つとまで言われる。そして首相は摩擦回避のためと称して、事もあろうに国家備蓄の金3000トンを各国宛に割り当てて経済援助(実質寄贈)するという愚策をしてしまった。国外からは馬鹿にされ、国内でも馬鹿にされる。各地の温泉からは「うちは()()()()です。()()()()ではありません」とまで言われて迷惑がられる。

 当然内閣は倒れた。陛下も大激怒であった。せっかく沖縄で増やした国家備蓄の金を丸々差し出したのだ。

 推薦のあった首班候補から乳母日傘のお坊ちゃまを外し、冷徹な判断が出来ると考えられる人間を選んでいく。

 その間にも、日本を突っつけばもっとゴールドが出てくるとばかりに強気の外交に出る諸外国。


 

 昭和13年夏頃。


 業突く張りと衝突ばかりの外交に嫌気が差した日本は国際連盟脱退を宣言する。

 少し後にロンドン軍縮会議脱退も宣言する。

 各国は焦った。日本は怒ったと。しつこく迫りすぎたか。ここ数年、技術力と生産力の向上は目覚ましい。おまけに金も有る。日露戦争や先の大戦で背負った借金も繰り上げで完済していた。現金だけで言えばアメリカの次くらいに持っているかも知れなかった。

 もし戦争になれば、手強い相手になるだろう。しかも場所が悪い。あそこまで軍事力をもたらすことが出来るのはアメリカとイギリスくらいだ。フランスとオランダは一蹴されるだろう。


 しかし、それでもゴールドを無心する国は多かった。日本は対等な条約と人種差別撤廃に出来れば普通選挙の実施を条件として経済援助をすると宣言していた。

 ヨーロッパでは海外に植民地を持たない小国で基本的にほぼ白人種の国でフィンランドとかデンマークとかイタリアとかと、アジアではタイ王国と条約を締結し経済援助を行う。

 ヨーロッパの小国は政治的にも速い動きが可能だった。それだけ緊張感が高まっているのかも知れない。

 タイ王国は教育水準という点で普通選挙の早期導入は難しいとされたが、日本が公衆衛生と教育分野に多大の援助をすることになった。

 イタリアもバチカンが難敵で普通選挙は難しいとした。さすがにこれには文句を言えない。ムッソリーニにやる気が無いのかも知れないが。しかし、日本としてはヨーロッパにあって地中海の大国イタリアを味方に付けられれば御の字だった。


 それを苦々しく見ていたのは、アメリカ、イギリス、フランス、オランダ等海外に植民地(海外県や保護国という名の実質植民地も含む)を持つ国と人種差別が激しい国だ。また普通選挙制度も現状では都合の悪い国が多い。南北アメリカの各国やヨーロッパ各国は文盲の割合が低いとは言え人数的には多いのだ。字が読めなければ投票もおぼつかない。国内に複数言語を抱える国は多く、日本の識字率が異常に高いのは単一言語の日本だから出来ることで自国言語環境のせいでは無い。各国はそう考えて落ち着こうとした。


 ドイツ、いやヒトラーもまた苦々しく思っていた。温泉(おんぜい)は良かった。アレで国庫が一息付けた。しかしアレからゴールドは1グラムすら寄越さない。対日貿易収支はドイツ側の黒字でいいのだが金融収支だけ見ると逆に日本が資本投下した分の稼ぎを回収していく赤字だ。経済的には正しいのだが、ヒトラーは気に入らない。大分助かっているが、それとこれとは別だ。

 ドイツはスペイン、ポルトガルの開発特需でそれなりに活況を呈していた。日本からの投資もある。対日貿易は機械産業や化学産業の輸出が多く黒字だ。だからユダヤ人差別をしなければ、日本と条約を結び援助も得られただろう。

 しかし、ナチス党が苦労して議会最大勢力となったのは政治力もあるが、ヨーロッパで密かに存在するユダヤ人差別を公然と始め、それをナチス党以外の民衆も支持したからだ。

 日本の援助ほしさに政策の転換は考えられなかった。

 ただ、日本とイタリアと結んだ防共協定のせいか多少の経済援助は得られている。スペインとハンガリーも参加した。ハンガリーは日本とあの面倒な内容を含む条約を締結するようだ。




次回更新 11月08日 05:00


また出ました。1ドル紙幣の秘密。小説で良く出てきます。

国庫の金塊3000トンをなんてのは「トンデモ設定でトンデモ展開」ゆえに。普通は案が出た途端に潰されて終わりでしょう。


進展ですが12話で世相物語は終了。

戦争パートは13話からです。

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[気になる点] なぜ金塊を配る展開を作ったのかわからない
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