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資源が有ることで 序二段

初めて大規模なぶつかり合い。



 序盤は軽い小競り合いに終始している。一気に大戦力を投入しても後が続かない。そのために準備の時間が必要だった。

 昭和17年前半の静かな時間は、お互いの軍備蓄積を図る時間になっていた。


 そして17年夏。

 アメリカ軍は意外な所へやって来た。トラック環礁である。西之島出現以前はトラック島を南方の一大拠点にする計画もあったが、西ノ島出現と沖縄絶対防衛策によって価値は大きく減った。

 日本関係では遠洋漁業の基地が一番大きい。そんな所だった。勿論飛行場など無い。飛行機はと言うと、たまに海軍の飛行艇が飛んでくるだけだった。海軍の部隊(哨戒艇1隻と基地部隊50名ほど)も漁業基地の隅に間借りしているような場末だった。

 当然抵抗など出来ず、南鳥島と同じ結果となる。

 アメリカ軍は大小の浮きドックを持ち込み、大規模な造成を行い飛行場も作って基地化しようとしている。

 サイパンから偵察に出した新司偵の偵察結果だ。


 

 昭和17年9月02日。


「叩くなら今だな」

「しかし、敵機動部隊の動向が定かではありません」

「環礁内に空母が2隻ほど常駐していると言うことだが」

「数度の偵察ですから、確実性は疑問です」

「浮きドックを沈めるだけでも作戦を行う価値はある」

「では、やるのですか」

「うむ。やる」

「時期はどうしますか。赤城と加賀がドック入りしています。出渠予定が‥少佐。いつだったか」

「はっ。赤城が9月08日。加賀が9月11日出渠予定となっております」

「では、加賀出渠二週間後の9月25日発動だ。それまでに準備を整えるように」

「「「「はっ」」」」



「なあ、ジャップは来るのかな」

「美味しい餌はあります。来なければ腰抜けでしょう」

「俺は腰抜けと思わんな」

「トーゴーの弟子であることを期待しましょう」

「来たら全部沈めてやる。やつらに新時代のロジェストヴェンスキーになってもらおうじゃないか」

「全くです」



 9月25日 西之島帯広湾


「壮観だな」

「連合艦隊全部ではないのが残念です」

「西之島と本土防衛に少し残したからな」

「長官。時間です」

「良し、発動だ」


 秘匿名称”さい ”部隊は錨を上げる。敵を砕けと名付けられたが、兵の間では砕をさいに変えられまつり部隊と俗称された。


戦艦

 大和 出羽 伊予 長門 陸奥 金剛 比叡

空母

 赤城 加賀 翔鶴 瑞鶴 飛龍 蒼龍 翔鳳 龍驤

巡洋艦

 利根 筑摩 最上 三隈 鈴谷 熊野 妙高 足柄 那智 羽黒

 阿賀野 神通 球磨 多摩

駆逐艦

 夕雲級8隻  陽炎級16隻  朝潮級8隻  秋月級6隻


以上の堂々たる布陣であった。

 


 トラックにいるアメリカ海軍35任務部隊は大部隊が出動したのは通信解析で分かっていたが、日本艦隊の動きを捉え切れていなかった。

 それが分かったのは西之島方面で哨戒中の潜水艦から通報があったからだ。そして


「哨戒機から入電「トラック島北北東450マイルに空母を含む大艦隊」」

「見えたか」

「陣容がはっきりしません。続報を待ちましょう」

「続報です「空母4隻と戦艦を含む大艦隊。迎撃されつつあり退避する」」


 カタリナ哨戒機はトラック島を飛び立ち危険な領域まで踏み込んでいた。サイパン島周辺200マイルは戦闘機や敵大型機と出会いやすくカタリナにとって危険な領域になっている。

 そして続報は無かった。


「なあ。奴らは好き勝手にこちらの状況を偵察できるのに、こちらが出来ないのは不公平と思わないか」

「あの双発高速機ですか。追いつけないのです。待ち構えるにしても高度が高すぎてキャットでは上がれません」

「陸軍機も上がれないようだな」

「P-40も上がれません」

「新型はまだ来ないのか」

「年末だそうです」

「そうか。では今の話に戻ろう。この距離で出してくるかな」

「無理ではないでしょうか。奴らも往復できないでしょう」

「この時間だと、交戦は明日か」

「そうなりそうですが、水雷戦隊の接近があるかも知れません」

「では少し引こう。トラック島の東50マイル程度の海域へ向かう」

「明朝の索敵はどうされますか」

「索敵は十分にする。攻撃機数が減ってもかまわない。とにかく見つけることだ」

「では三段索敵ですか」

「当然だな。夜明け前に各艦6機出せと伝えてくれ。36機で三段索敵だ絶対見つかるさ」

「了解」


 翌黎明。旗艦エンタープライズ、ヨークタウン、ホーネット、サラトガ、レキシントン、ワスプの6隻から各6機。索敵線12本を角度と時間をずらして3回。計36機もの索敵機を放った。

 アメリカ海軍の空母はレンジャーが搭乗員と空母要員養成用として東海岸にいる。ロング・アイランドは太平洋で航空機輸送任務に就いている。他には無い。

 アメリカ海軍空母部隊の全力だった。



 翌朝


 お互いにレーダーで見張っており奇襲はない。正面から力業で襲い掛かるしかない。まさか双方とも航続距離を気にして接近していたなど。だから索敵機が電探に映った途端に日本海軍は発艦開始をした。アメリカ海軍はデヴァステーターの航続距離が短すぎて日本海軍よりも遅かった。日本機の方が航続距離が長く先手を取れた。と言っても先に発艦できただけであった。日本の攻撃隊が敵艦隊に近づいた頃、アメリカの攻撃隊とすれ違った。

 敵の要撃方法も変わらない。遠くでちまちまと護衛機を引き剥がす。そしてある程度の機数で一気に襲い掛かる。



 ここで戦闘機の能力差が出た。良い方と悪い方に。

 日本攻撃隊の場合。

 運動性能は零戦が圧倒した。だがすぐに60発も無い20ミリ弾を撃ち尽くす機体が続出。

 後半は生き残って弾が残っている数機のF4Fが零戦の7.7ミリ攻撃を半ば無視して攻撃隊を蹂躙する。

 アメリカ攻撃隊の場合

 かなり数を減らされたものの、弾切れで攻撃できない零戦をF4Fに任せて艦隊攻撃へと。


 今度は雷爆撃機の能力差が出た。

 TBDはほぼ全滅の憂き目に遭った。低速で運動性も悪い機体は高角砲の良い的となった。せっかく投下した魚雷も速力が遅く回避されたり信管不良で早爆や不発も有った。それでも加賀と翔鳳に一本が命中。

 少数配備されたTBFは、迎撃と対空砲火をかいくぐり雷撃を成功させている。しかし、信管不良はここでも敵に味方した。

 SBDは、普通に飛び普通に急降下爆撃をした。降下角は九九艦爆よりも深い。爆撃針路に入ってから対空砲火で撃墜される機体もあるが、10発の命中弾と6発の至近弾を記録した。加賀に2発と翔鳳に1発が命中。大破と追い込まれた。飛龍2発命中で発着艦不能となる。金剛が小破。利根の後部指揮所を吹き飛ばし後部マストと航空機容収用デリックが倒壊。中破であった。朝潮が轟沈。涼月が大破。



 日本攻撃隊の場合

 直衛機が活躍したのは良いが戦闘機との戦闘に夢中になりすぎて、直衛任務を忘れる者が多数。さらに意外と頑丈なF4F相手に20ミリ弾を撃ち尽くす機体も多数。弾道特性が悪くションベン弾を修正しようと弾数を使ってしまった機体もある。

 直衛機の機数が少なかったせいも有るが、ほぼ裸になってしまった九七艦攻と九九艦爆はかなりやられる。

 それでも魚雷命中8本、爆弾命中12発、至近弾8発を数えた。


 上空で偵察していた新司偵(搭乗員と偵察員は海軍)によると戦果は

撃沈または撃沈確実

レキシントン級空母   1隻    横転沈没

ヨークタウン級空母   1隻    炎上停止 

ワスプと思われる空母  1隻    沈没

ブルックリン級軽巡   1隻    沈没

フレッチャー級駆逐艦  2隻    沈没

撃破

サウスダコタ級戦艦   2隻 

ノースカロライナ級戦艦 1隻 

ヨークタウン級空母   1隻

ブルックリン級巡洋艦  2隻

フレッチャー級駆逐艦  2隻


勝ちと言えるだろう。




次回更新 11月16日 05:00

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。

下手くそですが下手くそなりにこちらの方がと意図的に表現していることがあります。

その場合、ご指摘がありましても修正は行いません。

ご了承下さい。



初手はがっぷり四つからの寄り切りか。


しかし、アメリカ海軍のダメージコントロールは日本の想像を超えていた。


砕部隊編成

戦艦

第一戦隊 出羽 伊予 長門 陸奥 大和

第三戦隊 金剛 比叡

空母

第一航空戦隊 赤城 加賀 秋月 照月

第二航空戦隊 飛龍 蒼龍 涼月 初月

第五航空戦隊 翔鶴 瑞鶴 新月 若月

第七航空戦隊 翔鳳 龍驤 球磨 多摩 夏雲 峯雲みねぐも

巡洋艦

第五戦隊 妙高 足柄 那智 羽黒

第七戦隊 最上 三隈 鈴谷 熊野

第八戦隊 利根 筑摩

水雷戦隊

第一水雷戦隊 阿賀野 夕雲級8隻 陽炎級8隻 

第二水雷戦隊 神通  陽炎級8隻 朝潮級8隻

                  2隻は七航戦付に


 日本は守備範囲が西太平洋と日本周辺(台湾から小笠原、樺太・千島の三角形)に集中しているので、戦力の分散配置が起きていません。南方航路は海上護衛隊が活動。海軍主力の戦力を集中できます。史実だとこの時期、陸海軍とも日本勢力圏に全方位配置。


 大和は艦隊への引き渡しが昭和16年12月中旬から度重なる設計変更で17年4月末に延びいまだ練度に不安がある中、出羽と伊予は就役が16年10月と同11月で十分な練度に達しているとの判断で出羽が第一戦隊旗艦と砕部隊旗艦を兼ねる。 

 武蔵の竣工予定は昭和18年1月で変更は無い。実戦投入は夏以降の予定。

 出羽級3番艦4番艦の安芸と常陸は竣工したばかりで現在慣熟中。


 第七航空戦隊の球磨と多摩は従来の15センチ単装砲7門と水雷兵装に航空艤装を降ろし、短10センチ高角砲連装3基と単装2門に25ミリ三連装機銃11基を装備。防空艦として空母直衛とした。近接対空火力が期待できるが結果が芳しくなければ、天竜・竜田が務めている護衛戦隊旗艦に割り当てられる予定。


 阿賀野は空母の増加や航空機と電探の発達で思い切って航空艤装を撤去。浮いた重量を短10センチ高角砲連装4基と機銃多数の搭載に回した。


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