表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/149

第98話 バックアップは大事

 俺は虚偽(きょぎ)報告によって発生した本当の収穫量との不足分(ふそくぶん)を、虚偽報告をしていない世帯(せたい)の収穫量を改竄(かいざん)することで(おぎな)い、虚偽報告を是正(ぜせい)する方法をすることにした。




 では、その方法をするために、具体的(ぐたいてき)にはどのように改竄(かいざん)したのか?


 それは、能力を活用(かつよう)するのである。


 村長は各世帯(かくせたい)の収穫量を聞き取りに行く時に木の板を持っていき、そこに収穫量(しゅうかくりょう)記録(きろく)していく。


 俺は各世帯の収穫量が書かれたその木の板を村長から受け取り、そこに書かれている収穫量の数値(すうち)(もと)に計算をすることになっている。


 そして、俺は村長から受け取ったその木の板に能力を使うことで、改竄(かいざん)(ほどこ)すことにした。


 具体的(ぐたいてき)には、まず村長が木の板に元々(もともと)書いていた数値(すうち)(きず))を能力で綺麗(きれい)消去(しょうきょ)する。


 次に、村長の筆跡(ひっせき)真似(まね)るようにして、能力で新しい数値(傷)を書く。


 最後に、その新しい数値を(もと)に村全体の収穫量の計算をする。


 このような方法で俺は改竄をしている。


 この方法によってできた改竄後(かいざんご)の木の板は一目(ひとめ)どころか、どれだけ見たとしても、改竄前(かいざんまえ)の数値(傷)の痕跡(こんせき)を見つけることは100%不可能、と断言(だんげん)できるほど、改竄前の数値(傷)は跡形(あとかた)も無く()()っている。


 なので、この方法であれば、改竄前の痕跡(こんせき)が残っていたことで気づかれる、というバレ(かた)(ふせ)げる。


 しかし、改竄前に書かれていた数値(すうち)のバックアップを村長が別の木の板などに取っていればバレる可能性がある。


 だが、村長はそういったバックアップを一切(いっさい)取っていないので、そのバレ方に関しては問題無い。


 ただし、村長が全てのバックアップを持っていない訳では無い。


 村長には記憶(きおく)というバックアップがある。


 村長が改竄前(かいざんまえ)数値(すうち)記憶(きおく)していれば、村長は改竄後の数値と改竄前の数値を比較(ひかく)することができるようになる。


 そうなると、村長が改竄に気付いてしまう可能性がある。


 なので、俺は村長が記憶する可能性の高い世帯(せたい)特徴(とくちょう)を知ることにした。


 俺は村長の記憶に残る世帯の特徴を知るために、村長にそれとなく聞くことにした。


 そのために、俺は仕事の手伝いを始めた最初の収穫期に改竄(かいざん)はせず、村長の記憶に残る世帯の特徴を村長から聞くことに従事(じゅうじ)した。


 そして、俺は村長が収穫量を記憶している傾向(けいこう)の強い世帯の特徴を知った。


 まず、虚偽(きょぎ)報告をしている世帯は3割くらいの確率(かくりつ)(おぼ)えている。


 次に、直近(ちょっきん)で収穫量が極端(きょくたん)上下(じょうげ)してしまった世帯は7割くらいの確率で覚えている。


 最後に、(なに)かしらの特別な理由がある世帯は8割くらいの確率で覚えている。


 最後の「何かしらの特別な理由がある世帯」の理由は何でも良くて、その家にハプニングがあったとか、村長が懇意(こんい)にしている世帯だとか、色んな理由がある。


 (よう)するに、「何かしらの特別な理由がある世帯」とは、その世帯の収穫量の数値が村長の記憶に残るような理由を持つ世帯のことである。


 俺はこれらの世帯は除外(じょがい)して、それ以外の世帯の収穫量を改竄(かいざん)することで、村長からバレる可能性を排除(はいじょ)した。




 ところで、そういった特徴(とくちょう)を持つ世帯を除外するためには、その世帯がそういった特徴を持つことをそもそも知らなければ、その世帯を除外することができない。


 だが、そういった世帯は結構(けっこう)簡単(かんたん)に知ることができる。


直近(ちょっきん)で収穫量が極端に上下してしまった世帯」に関しては、俺は村長が調べてきた各世帯の収穫量を全て見ることができるので、前期(ぜんき)前々期(ぜんぜんき)の収穫量と比較(ひかく)すれば、すぐに分かる。


「何かしらの特別な理由がある世帯」に関しては、こんな田舎の村に住んでいればハプニングとなれば自然と俺の耳に入ってくるし、もし入ってこなくても村長から話を聞けば良い、そのくらいのことであればただの世間話にしかならないから(なん)ら不自然には思われることも無いし、ましてやそこから俺の改竄(かいざん)に気付くはずも無い。


 さらに、村長が懇意(こんい)にしている世帯も村長に直接聞けばいいし、そうでなくても俺は数年も村長と交流(こうりゅう)しているのだから分かることである。


 もし、他の特別な理由があったとしても、俺も徴税報告(ちょうぜいほうこく)当事者(とうじしゃ)であることから、大抵(たいてい)の事は村長と情報が共有されている。


 なので、村長だけが知っていて俺が知らないことはあまり無い。


 (ゆえ)に、「何かしらの特別な理由がある世帯」を知ることに(かん)する問題はほとんど無い。


 ただし、それでも見逃(みのが)してしまう世帯(せたい)があった時のために、保険(ほけん)をかけている。


 それは、能力を使って改竄(かいざん)する時に、全ての数値(すうち)(きず))は消さないで、利用できる数値(傷)は残すという方法を取ることである。


 例えば、1580(ここでは表記上(ひょうきじょう)アラビア数字を使っているが、実際は村長や両親が使っている言語(げんご)の数字を使っている)という数字を改竄(かいざん)する時に、「1」「5」「8」「0」の4つ全ての数字を改竄するのではなく、15"6"0のように、1つの数字だけ改竄するという方法である。


 こうすることで、改竄後の数値(傷)を見た村長が自分の記憶の数値と比較(ひかく)しても、なるべく違和感(いわかん)が起きないようにしている。


 これは、改竄されていない数字に関しては正真正銘(しょうしんしょうめい)村長の()であり、村長からすれば最初から改竄があることを知らなければ、改竄を見抜(みぬ)くことなど不可能に近い。


 例えば、自分がノートに書いた数字を1週間後に見せられた時、その数字の中の1文字が消し(あと)も無く消えていて、その(うえ)改竄後の数字は自分の筆跡(ひっせき)とほとんど同じであった場合、自分は改竄の事実を事前(じぜん)に知らない、さらに改竄前の数値を正確(せいかく)には覚えていない、そんな条件下(じょうけんか)で改竄に気付くことができるか?


 ほぼ不可能だろう。


 つまり、村長からすれば、この改竄方法に気付くことは、無理であると言える。




 だから、俺は能力を使ったこの改竄方法を取っているのだ。

「面白かった!」


「続きが気になる!」


「この作品を応援している!」


と思ったら


下にある【☆☆☆☆☆】から作品への応援をしていただけるとうれしいです!


あなたのお好きな☆の数で大丈夫です!


ブックマークもいただけると幸いです。


よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ