第94話 低いのでは?
「それはお前の子か?」
男は村長にそう質問した。
「この家に入った時から、それがお前の横に控えていただろ?その時から気になっていてな……てっきり、俺の出迎えだけしてこの場には来ないと思っていたのに、ここにいるときた。それはお前の子ではないのか?」
どうやら、男はこの家に入って来た時から俺のことが気になっているようだ。
「いえ、私の子では御座いません」
村長は俺を自分の子では無いと答える。
「ん?では、それは誰なのだ?そして、何故それをこの場に同席させている?」
村長の答えを聞いて疑問顔になった男は、俺の誰何とこの場への同席の理由を村長に尋ねる。
「これはこの村に住んでいる者の子で御座います。これは農作物の収穫量の計算を手伝っているので、これも徴税報告の当事者として扱い、同席させております」
村長は男の二つの質問に答える。
「なに?それは真実か?」
しかし、男はその答えに全然納得がいっていないようで、確認するように村長へと尋ねた。
「はい。真実に御座います」
村長は本当のことであると答えた。
「…………」
しかし、男はそれでも納得し兼ねているようだった。
そして……
キッ
男は今までよりも強い視線を俺に向けてきた。
「お前。年はいくつだ?」
男は村長では無く、俺に直接質問してきた。
俺はその質問に対して……
「5歳で御座います」
丁寧に素直に答えた。
「……ほう」
俺の答えを聞いた男は一瞬面食らったような顔になったが、すぐに俺に感心するような表情へと変えた。
というか……そもそも、なぜ俺はこの徴税報告の場に同席しているのか?
その理由には、確かに村長が言ったように俺が収穫量の計算をしている当事者だから、という理由もある。
だが正確には「徴税報告の場に同席させてほしい」と俺から村長に頼み、それを村長が承諾したからである。
俺が収穫量の計算の仕事を手伝い始めたのは2歳の時なのだが、実は2歳の時の徴税報告に俺は参加していなかったのだ。
しかし、3歳になった時、俺も当事者として徴税報告の場に同席した方が良いのではないか?と俺は村長に助言したのだ。
実は、俺が2歳の時にした仕事の手伝いの内容はかなり薄いものであり、その内容は基本的に雑用ばかりで、収穫量の計算の仕事にはほとんど関わらせてもらえていなかった。
それは、2歳時点で村長が俺の計算能力にまだ信頼を寄せていなかったからであった。
しかし、3歳になると、村長からその信頼を獲得し、俺も収穫量の計算の大部分を担当できるようになった。
ちなみに、今では各世帯の収穫量の調査を村長が担当し、その調査を基に村全体の収穫量を計算する作業を俺が担当する、という形になっている。
そうなると、徴税報告の場で徴税官から質問を受けた場合、俺が担当した箇所の質問が来たら、村長は答えられないかもしれない。
俺はそのことを村長へと助言した。
そして、俺の助言を聞いた村長は、俺も当事者として3歳から徴税報告に参加させることにした。
つまり、そういう経緯で俺はこの徴税報告の場に同席しているのだ。
「ほう……」
俺の答えを聞いて、男は俺に感心の感情を抱いているようだった。
「……ん?5歳?」
しかし、その顔が疑問顔に変わった。
「…………」
男は、俺の足から頭を駆けのぼるような視線で観察してきた。
すると……
「お前、本当に5歳か?」
男はそんなことを聞いてきた。
「はい。間違い御座いません。私は現在5歳であります。」
俺は嘘をついている訳でも無いので、そう答えた。
しかし……
「…………」
何やら、男は俺の年齢に納得できていないようであった。
「本当にそれは5歳なのか?5歳にしては……背が低くないか?」
男は村長へと視線を戻すと、村長に対して俺の年齢の確認をした。
どうやら、男は俺の身長が低いことに疑問を抱いているらしい。
現在の俺の身長は約94センチメートル(cm)である。
この約94センチメートル(cm)という身長は5歳にしてはかなり低い。
大抵の5歳児の身長は100センチメートル(cm)を優に超えており、平均の5歳児の身長は110センチメートル(cm)弱くらいになっている。
それに対して、俺の身長は約94センチメートル(cm)という超低身長なのだ。
さらに、俺の5歳という年齢は、もっと正確に言えば、5歳と11か月くらいであり、もうすぐ6歳になるのだ。
それも含めて考えれば、俺の身長がいかに低いか分かるだろう。
男は俺の身長が年齢に比べて極端に低いことから、俺が本当に5歳なのかを疑っているようだ。
村長は男の質問に対して……
「はい。これが言うように、これは本当に5歳で御座います。ただし、これは成長が遅いのか、元々身長が低いのか……原因は分かり兼ねますが、現在はこのような身長になっております」
俺が本当に5歳であることを告げ、さらに俺が低身長である原因についても言及した。
「んん……お前もそう言うのであれば、そうなのだろうな」
男は村長からの答えを聞いたことで、渋々といった感じではあったが、ようやく俺の年齢と身長の差については納得したらしい。
「話が逸れてしまったな……では、それも徴税報告の当事者になるだな?」
男は村長へと質問する。
「はい。左様に御座います」
村長は肯定で返す。
「ならば、この場に同席することに問題は無いな……それでは」
男は俺の同席を認めると……
「徴税報告を始めろ」
徴税報告を始めるように、村長へと告げた。
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