第93話 部屋に入るのも一苦労
「こちらでございます」
村長はそう言って廊下の奥を手で示した。
タッ……タッ……
そして、村長はそのまま廊下の奥の方向へと回れ右をして、自分が手で示した方向へと歩き始めた。
「…………」
それを見ていた俺も……
タッ……タッ……
村長に付き従うようにして、歩き始めた。
タタッ……タタッ……
そして、村長と俺に付いてくるように、最初に入って来た4人と最後に入って来た男も歩き始めた。
タッ……タッ……タタッ
十数秒ほど歩くと、村長はこの村長宅にある一室の前でその足を止めた。
ガチャッ……
そして、その部屋の扉を開けた。
ただ……
「此方で御座います。どうぞお入りください」
村長は扉を開け放った姿勢を維持したまま、男たちが先に部屋に入るように言った。
「…………」
タタッ
俺はそんな村長の傍に控えるようにして立ち、男たちが部屋へと入るのに邪魔にならないようにした。
タタッ……タタッ……
村長の言葉を聞いた男と4人は、全員が部屋の中へと入室するわけでは無く、4人の内の2人だけが部屋の中に入っていった。
「?」
2人だけが部屋へと入り、男と4人の内の残り2人が部屋へと入らないことに村長が少し疑問を浮かべたような顔になっていた。
すると……
ガタッ、ダダダッ……ガダタッ……
部屋の中から足音では無く、家具を直接動かしたような音が聞こえる。
というより、部屋の中を覗くと、先に入っていった2人が本当に家具を動かしたり、持ち上げたり、ひっくり返したりしていた。
(何をやって……ああ、そういうことか)
俺が部屋の中に視線を向けていると……
「思うところはあるだろうが、少し待て。俺はいつもの奴とは少し"立場"が違うのでな。もう少ししたら入る。」
男が疑問顔の村長にそんなことを言った。
「…………っ!畏まりました」
村長は男の言葉に少し考え込むような顔をするが、すぐに何かに気付いたようで、男へと了承の返事をした。
部屋の中で2人が何かをして、部屋の外で俺と村長、男と2人が待つという状態になった。
「問題御座いません。どうぞ」
1分以上経ったその状態は、先に部屋の中に入った2人の内の1人が部屋の外にいた男に、そう話しかけることで終わった。
タッ……タッ……
男はその言葉を受けると、遂に部屋の中へと入っていった。
タッ……タッ……
その男に続いて部屋の外に残っていた2人の内の1人も部屋の中へと入っていく。
「入れ」
2人の内のもう一人は部屋の中には入らず、俺と村長に部屋の中へと入るように言ってきた。
「畏まりました」
タッ……タッ……
村長はそう言って会釈をすると、部屋の中へと入っていった。
タッ……タッ……
俺も村長に続いて部屋の中へと入る。
タッ……タッ……
部屋の中には、縦150センチメートル(cm)、横50センチメートル(cm)、高さ50センチメートル(cm)ほどの大きさの長机が部屋の中心に置かれていた。
そして、その長机の傍には向かい合うように置かれた2つの椅子があった。
1つは長机と同じくらいのサイズで、ベンチのような椅子であった。
その椅子は、部屋の扉から見て、部屋の奥側に置かれていた。
もう1つは人一人が座れるだけのサイズの椅子であった。
こちらの椅子は、部屋の扉から見て、部屋の手前側に置かれていた。
この部屋はこの村長宅の応接室である。
奥側のベンチの椅子には既に男が座っていた。
そして、4人の内の2人は男が座る椅子の後ろで控えるようにして立っていた。
この部屋へと入ってきた4人の内のもう1人は、手前側の椅子の後ろで立っていた。
タッ……タッ……
その中で、村長は手前側の椅子へと歩いていき……
「失礼致します」
タッ……ススッ
村長は男に一言断りを入れると、その椅子に座った。
タッ……タタッ
そして、村長に付いてきた俺はどこにも座ること無く、村長が座っている椅子のすぐ横に控えるようにして立った。
すると……
バタンッ
部屋の外にいた4人の内の1人が、部屋の扉を外側から閉めた。
俺はその様子に……
(1人は外で待機するのか)
そう内心 で呟いた。
「ん、んんっ」
村長は扉が閉まったことを確認すると、咳払いを1つ。
そして……
「御忙しい所御足労頂き、有難う御座います。ようこそ御出でくださいました」
改めて、村長は男へと歓迎の挨拶をした。
「ああ」
男は村長の挨拶に一言だけ返事をする。
そして……
「早速徴税報告を始めたい、のだが……」
男は村長から"俺"に視線を向ける。
「それはお前の子か?」
俺について質問をしてきた。
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