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第90話 3倍で20倍

 シャァァァァァァァァァァァァァ




 ()うるさい音を立てながら、小川(おがわ)が流れている。


 シュゥゥゥゥゥ…………


 その小川から、水が空中(くうちゅう)へと吸い上げられていた。


 浮かび上がった水は地上2メートル(m)付近で立方体(りっぽうたい)形成(けいせい)していた。


 その立方体は水を吸収(きゅうしゅう)しながら、より大きくなっていく。


 シュゥゥゥゥゥ…………ピチュッ


 やがて、小川から水が吸い上げられることが無くなった。


 ウィピとの戦闘から2日が経過(けいか)した。


 俺は今、森の中にある小川に来て、能力の最大出力の検証をしていた。


 俺の目の前に浮かぶ水の立方体は以前(いぜん)(くら)べて、格段(かくだん)に大きくなっていた。






 ウィピとの戦闘があった日の翌日(よくじつ)、ウィピとの戦闘が前日にあったのにも関わらず……(いな)、戦闘があったからこそ、休むことなく日課(にっか)の持久力検証と瞬発力検証をした。


 その結果は目を見張(みは)る……どころか、結果だけを見れば、目が飛び出すほどのものであった。


 まず、持久力検証はウィピ殺害前の記録(きろく)が約2500回ほどであったが、ウィピ殺害後は約6000回にまで一気に向上した。


 そして、殺害前の木の板と布の距離では木の板から発生する風が強すぎて、布が(あら)ぶるように()れてしまい、まともに角度が(はか)れなかった。


 なので、木の板と布との距離を離して検証せざるを()ず、今までの記録との比較(ひかく)(むずか)しくなってしまう……それほどの向上であった。


 俺はこの驚異的な能力向上を受けて、能力の最大出力にもかなりの変化が起きていることを確信(かくしん)した。


 なので、俺はさらにその翌日、森の中の小川へと行き、最大出力の検証をすることにした。


 そして、今に(いた)る。




 俺は今、目の前にできた最大出力検証の物差(ものさ)しとなる水の立方体の大きさを目測(もくそく)していた。


一辺(いっぺん)が前よりも、1.5……いやもう少しだけ小さい?多分……1.4倍かな?)


 俺は、現在の立方体の一辺と、ウィピ殺害以前(いぜん)に作った立方体の一辺、両者(りょうしゃ)の長さを脳内(のうない)比較(ひかく)した。


(立方体だから……1.4を三乗(さんじょう)して…………あぁ、もうむりっ)


 俺が立方体の一辺から立方体の体積(たいせき)を計算していると……


 ピチュチュ…………バジャァァァンッッッ!!!


 水の立方体が空中で形を(くず)し始めたと思った途端(とたん)、小川やその周辺の地面にぶちまけられた。


 最大出力を出した時の持久力が限界を(むか)えたためである。


「はぁ……はぁ……ふぅ」


 俺は息を(ととの)える。


(えっと、1.4メートル(m)を三乗すれば出るな……ええ……2.7立方メートル(㎥)くらいで、前は一辺が1メートル(m)と少しだったから、それも加味(かみ)して…………約3立方メートル(㎥)だな)


 俺は先ほどまで(おこな)っていた立方体の体積の計算を再開し、その結果を(みちび)き出した。


 今回できた水の立方体の体積は3立方メートル(㎥)である。


 以前の立方体の一辺が1メートルと少しで、今回の立方体の一辺が以前の立方体の約1.4倍であることから、今回の一辺は1メートルの1.4倍で1.4メートル(m)と仮定(かてい)する。


 次に1.4メートル(m)の三乗を計算すると、約2.74立方メートル(㎥)となる。


 式に(あらわ)すと

 1.4m(縦)×1.4m(横)×1.4m(高さ)=2.744㎥(体積)

 となる。


 最後に、以前の立方体の一辺が1メートル(m)と"少し"であることを加味して、3立方メートル(㎥)という結果を(みちび)いた。


 そして、3立方メートル(㎥)をリットル(L)に表すと、3000リットル(L)である。


 水の3000リットル(L)は重さにすると3トン(t)なので、能力の最大出力は3トン(t)に向上したことが分かる。


 つまり、俺の最大出力はウィピ3匹の殺害によって、以前の1トン(t)と少しから約3倍に(ふく)れ上がった、ということである。


 この3倍という向上幅(こうじょうはば)圧倒的(あっとうてき)に過去最大である。


 ウィピ殺害以前に能力が向上した殺害の中で、最も大きな向上を見せることになった生物は体長(たいちょう)40センチメートル(cm)、体高(たいこう)20センチメートル(cm)、体重5キログラム(kg)の齧歯類(げっしるい)であった。


 姿(すがた)はカピバラに似ていたが、カピバラよりも小さく、カピバラよりもずんぐりむっくりな体形(たいけい)であったので、例えるなら「小さくて丸いカピバラ」といったところであった。


 その小さくて丸いカピバラを殺害した時の向上幅が、ウィピ殺害前の中で最も高い向上であった。


 その向上幅は持久力が150回上昇(じょうしょう)、瞬発力がさらに約1.5度布が(ゆか)から平行(へいこう)(かたむ)くほどの上昇、最大出力が100リットル(L)大きくなる上昇で、重さで言えば100キログラム(kg)の上昇であった。


 つまり、今回の上昇がウィピ"3匹"の合計であったとはいえ、それまでに起きた最大の能力向上幅よりも約20倍向上したということである。




 そして、今回のウィピ殺害による超大幅な能力向上の幅と、小さくて丸いカピバラや黒い奴、ネズミを殺害した時の能力向上の幅を比較(ひかく)すると、俺が以前に提唱(ていしょう)した向上幅の法則(ほうそく)(かん)する仮説(かせつ)確定的(かくていてき)になってくる。


 その仮説とは、能力の向上幅は生物の規模(きぼ)比例(ひれい)して変化する、というものである。


 その生物の大きさが大きいほど、重さが重いほど、その生物を殺害した時に向上する能力の向上幅がより大きくなるのではないか?という仮説である。


 今回ウィピという俺がこれまでに殺害してきた生物の中で最も大きくて重い生物を殺害した時に発生した能力向上は今までで最も大きかった。


 そして、ウィピの大きさや重さに比例(ひれい)するように、その向上幅は今までの向上の中で格段(かくだん)に大きかった。


 このことから考えれば……




 俺が提唱(ていしょう)した仮説は、能力向上における法則として確定的な説になったと思う。

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