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第08話 寒い

 ……ッ……タ……タッ……




 足音が、この部屋に近づく。


 ……タ……タタッ


 足音が、部屋の前で止まる。


 ガチャッ……キィィィィ


「dsfhqweiu、sui」


 母親が、部屋へと入ってきた。


「sui、asydoiua…………???」


 母親が、疑問の声を漏らす。


 ……タ……タ……タ……スッ


 母親が、部屋の壁際へと行くと、何かを、拾い上げたようだ。


「sdia?……gayoeaiueoaeuse?」


 母親が、疑問の声を漏らしていると……




「ばっばぁ!」




 俺は、部屋全体に響くように、声を発した。


「!……sdyfoeie、sui……sui?」


(気づいたか……寒いんだ、早くしてくれ)


「?……???」


 母親は、疑問顔を浮かべたまま、固まっている。


「ば!!」


「!!……asdyoieaw、sui……」


 タッ……タッ……


 もう一度、俺が声を出すと、母親が、ようやく俺のもとへ向かって歩き始めた。


(早く、こっちに来て布を掛けてくれ。寒くてかなわん)




 ……タ……スッ……ササ


 俺の元へやってきた母親は、先ほど拾い上げた布を、俺に被せる。


(ふぅ……あったかい)


(……ん?)


 不意に、俺は、母親の右手指に、目がいってしまう。


(母親の指が、やけに黒い……いや、あれは)


 母親は、黒い物体を掴んでいた。


(黒い奴、じゃないか。若干、潰されているな)


 先ほどまで、俺と激闘?を繰り広げていた黒い奴が、母親に、捕縛(ほばく)されていた。


(…………)


 俺は、何とも言えない気持ちを抱えながら、その光景を見た。


「……sdfyoiasdoe、sui」


 タッ……タッ……タッ…………ガチャッ……キィィィ……


 母親は、黒い奴を掴んだまま、部屋を出て行った。


(……掴めるもんなんだな)




 ━━時間は少し(さかのぼ)




「ばぶ」

(さむ)


 俺は、目の前で起きた、布が独りでに飛翔(ひしょう)する、という現象に目を丸くしたまま、固まってしまった。


(な……なんっ……な…………は?)


 俺は、目の前で起きた出来事を、うまく()み込めなかった。


 だが、その前に……


(これは……どういう…………それより、寒いな!)


 俺は、体がめちゃくちゃ寒いことに、気付く。


(掛布団がない……ん?これは、背中の感じも、もしや敷布団もか?)


 俺は、体を包んでいた敷布団と掛布団が、俺のもとから無くなっていることに、気付く。


(もしや、さっき、飛んで行ったのって……)


(俺の敷布団と掛布団か?)


(そうか。さっき、飛んで行ったのは、俺の敷布団と掛布団か……)


(いや、いやいや。おかしいだろ、普通に考えて。なんで、俺の布が、勝手に飛んでいくんだ?)


(いったい……なにが?)


 すると……


 ブルルッ!


(寒い!寒い!)


 俺は、体が動かないはずなのに、思わず、体を震わせそうになってしまった。


(さむいさむいさむい!)


(飛んで行った布が俺のなのか?とか、その原因はなんなのか?とか、そういったことは、とりあえず後だ。今は、この寒さを解決する方が、先だ)


「ふぅぅぅぅ……」


 そして、俺は、大きく息を吸って……


「んぎゃああぁあ!!!!!ぎゃあああああ!!!!!ばああぁあぁぁ!!!!!」


 泣き声を、盛大に、響かせる。


 俺は、泣きわめいて、両親に、寒さの救難を求めることにした。


 この時……俺は、黒い奴のことなど、すでに忘れていた。




 ━━母親が部屋を出ていった、今に戻る




(……掴めるもんなんだな)


 母親が、黒い奴を掴んだまま、部屋を退出した。


(ふぅぅ……あったかい)


 俺は、先ほど感じていた寒さを退けた、布のありがたみを知る。


(さて……)


 そして、温まってきた頭で……




(布が飛翔した……あれは、いったい何なんだ?)




 先ほどの、奇怪な現象について考える。

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