第77話 1L=1000㎤
シャァァァァァァァァァァァァァ
俺が今日、日没より前に中身を確認する必要があった罠は、先ほど確認した1箱だけであった。
なので、俺は他の場所に設置された他の罠に今日はもう行く必要が無く、両親の家へと向かっているところであった。
村の中にある畦道を使わずに森の中を経由して両親の家へと帰る時のルートは、まず村長宅の近くにある出入り口から森に入り、最後は両親の家に近い別の出入り口から森を出る、というルートを通る。
そして、このルートで両親の家に近い出入り口を目指す時は、その道程に小川が存在しているのだ。
シャァァァァァァァァァァァァァ
少々、勢いの強い小川が。
俺は両親との契約で、独りでの外出ができるようになった。
それは、俺の行動範囲が両親の家や村長宅、その間の畦道だけでは無くなったということである。
それは同時に、俺が目にするものが格段に増えたということでもある。
つまり……
俺が能力を使うことのできる対象が増えた、ということでもある。
そして、その増えた対象の中の1つとして、俺は今目の前にある小川を発見した。
俺は、初めてこの小川を見た時……
遂に能力の限界を知ることができる、と確信した。
突然だが、水の量を量る単位で、「リットル(L)」という単位がある。
水1リットル(L)は1キログラム(kg)である、という常識もある。
この「水1L=1kg」という常識が定着し過ぎていて、知らない若しくは忘れている人がいるかもしれないが、リットルという単位は重さを表す単位では無く、体積を表す単位である。
1リットルは縦、横、高さがそれぞれ10センチメートル(cm)の1000立方センチメートル(㎤)の体積を表しているのである。
式に表すと
10cm(縦)×10cm(横)×10cm(高さ)=1000㎤(体積)=1L
なのである。
そして、水が1L=1kgであること、そして1リットルが1000立方センチメートルであること、この2つから考えれば、どれくらいの体積の水を能力で動かせるのか?を知れば、能力で動かすことができる水の重さを知ることができる。
つまり、この能力の最大出力を知ることができる、ということである。
そして、俺はこの小川を最初に見た時、能力の最大出力を遂に知ることができると確信し、検証へと行動を移すことにした。
まず、俺は小川に辿り着くまでに自分を歩かせるために能力を使っていたので、その分の回復を図って休憩を挟んだ。
休憩を終えた後、俺は実際に小川に流れている水に能力を使って検証を開始した。
能力の最大出力を量るための具体的な検証方法は、まず小川に流れている水を能力で汲み上げていく。
次に、汲み上げた水を立方体の形にして空中に浮かせておく。
そして、その立方体の形を大きくさせるために、また小川から水を汲み上げて、水をその立方体に組み込んでいく。
水を汲む、水を立方体に組み込む……これを能力の限界まで延々と繰り返し、水の立方体をそれ以上大きくできなくなった時、その立方体の体積を量れば、能力の最大出力を知ることができる、という方法である。
そうして、最終的に、もうそれ以上水を汲み上げることができず、それ以上浮かせることのできない水の立方体が完成した。
その水の立方体は、大きさが縦、横、高さがそれぞれ1メートル(m)より少し大きいくらいの立方体になっており、体積にすれば1立方メートル(㎥)より若干大きいくらいの立方体であった。
そして、1立方メートル(㎥)をメートル(m)からセンチメートル(cm)に直してから式に表すと
100cm(1m、縦)×100cm(1m、横)×100cm(1m、高さ)=1000000㎤(1㎥、体積)
となる。
1リットル(L)が1000立方センチメートル(㎤)であることから、1000000立方センチメートル(㎤)がその1000倍なので、1000000立方センチメートル(㎤)は1000リットル(L)であることが分かる。
式に表すと
1L:1000㎤=1000L:1000000㎤
となる。
そして、水1リットル(L)が1キログラム(kg)であることから考えれば、水1000リットル(L)は1000キログラム(kg)であり、より大きな重さの単位であるトン(t)で表せば、1トン(t)ということになる。
式に表すと
1000L=1000kg=1t
となる。
つまり、俺が能力で一度に浮かせることのできる水の量は1トン(t)よりも若干重いくらいであり……即ち、能力の最大出力は1トン(t)と少しであると計算できる。
ただし、もっと正確な部分に言及すれば、この小川に流れている水の中に入っている不純物の重さも水の立方体の重さに含まれているので、わずかな部分では誤差があるかもしれない。
だが、もし不純物が最大出力の測定に誤差を生み出しているとしても、その誤差は所詮"わずか"な誤差であり、検証結果の1tと少し、という数値を大幅に変化させるものではないだろう。
要するに、俺の行動範囲が広がったことで……
俺は前々から知りたかった能力の最大出力を遂に知ることができたのだ。
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