第67話 独りの瞬間
俺はこのもんどり式の罠を外に設置することに決定した。
俺はこの罠を外へと設置するために、自分が唯一外に出られるタイミングである、村長宅への行き帰りを利用することにした。
まず、村長宅へ行く時だが……この時は村長が家まで俺を迎えに来るか、両親が村長宅まで俺を送るので、俺が独りで外にいられる時間は一切無い。
そして、それは帰りも大体同じであった。
では何時、俺が独りになれるのか?
それは、行き帰りの道では無く、家に帰った瞬間である。
そして、その瞬間が生まれるのは帰りに村長が俺を送る時である。
村長は大体の行動が迅速果断であり、その故に俺を村長宅からの帰りに送る時、村長は俺が家の中に入ると、すぐに回れ右して、自分の家へと歩き出してしまう。
そして、村長が俺を帰りに送る時、色んな都合が合わさって、両親は俺のことを玄関で待っていることもあるし、待っていないこともある。
つまり、村長が帰りに送る時と、両親が俺の事を玄関で待っていない時……この2つが重なった瞬間だけ、俺が誰にも見られていない独りの瞬間になる。
俺はこの瞬間を利用して、外へと罠を仕掛けることにした。
具体的には、まず村長が俺を帰りに送る日を選び、その日はあえて早めに帰ることにする。
そうすると、両親の都合が合わないのか、両親が俺のことを玄関で待っている確率が格段に下がる。
次に、家へと帰ってきたら、玄関の扉を"静か"に開閉する。
この家の玄関の扉はどのように開閉しても、甲高い音を立ててしまう。
もし両親が家の中にいる時にそれを聞かれれば、俺が帰ってきたことが両親にバレてしまう。
なので、俺は能力を使って、扉全体に力を入れて開閉する。
普通に取っ手を掴んで開閉する場合は、取っ手にしか力が入っていないから、その力が別の場所で限定的な作用点として放出されることで、そこだけに力の負荷がかかってしまい、音が鳴ってしまう。
それを、扉全体に力を掛けて開け、扉全体を力点にすることで、作用点に掛かる力を分散させる。
これで、玄関の開閉音はある程度マシになる。
しかし、これはマシになる程度なので、扉の周りの空気も動かして瞬発力検証の時に作る振動させた圧縮空気と同じものを作ることである程度発生してしまった音も、そこでシャットアウトする。
これで、扉を"静か"に開閉して、両親に気づかれることが無くなる。
そして、両親に気づかれることなく玄関へと入ることができたら、10秒を数える。
村長が回れ右して村長宅へと帰り始めるのを待つための10秒である。
そして、10秒数えたら外へと出て、村長が背中を向けていることを確認したら、次の場所へと向かう。
次に向かうところは、家の外壁の一部……俺がいつも居る部屋がある辺りの外壁である。
その外壁には、俺がいつも利用している、部屋の中と外を繋げる隙間があった。
その隙間の前には、潰れたような形の平べったい木が転がっていた。
それは、事前に用意していたもんどり式の罠に改造した木の箱であった。
ただし、この箱はこの隙間を通れるように、潰したものであった。
俺は部屋の中からこの隙間を通して、この箱を外に出しておいたのだ。
俺は潰された箱に能力を使って拾い上げると、潰された状態から元の罠の形に復元した。
そして、俺はその箱を持って、家の裏へと向かった。
俺が到着した場所は、家の裏の外壁から3メートルほど離れたところで、そこの周りには雑草や低木が生い茂っていた。
俺はこの箱を外に持ち出すよりも前に、既に一度、独りになれるタイミングを利用して、家の周りを探索していた。
その時に、雑草や低木に周りを囲まれているせいで周囲からは見えない、という都合の良いこの場所を発見した。
俺はそこに到着すると、まずそこの地面に対して能力を使い、箱より少し大きいくらいの穴を作り、そこへ箱を放り込んだ。
次に、その箱の中に離乳餌作戦で使った時と同じ餌を入れ、その餌の水分が無くならないように餌をその場に固定するように能力を使いその固定を延長させる。
そして、もんどり式の罠の機能を持った穴が開いている蓋で閉める。
最後に、箱の周りを土で覆うようにし、穴だけが見える形で箱を土の中に埋める。
これで作戦準備は完了である。
そして、今日は2日前に仕掛けたその罠に獲物が掛かっているのかどうかを確認しに来ていた。
俺は箱の蓋を開けて、見事に掛かっていた黒い奴らを見ると……
(やっぱり掛かっていたか)
俺は"確信"を確認していた。
しかし、考えるのも束の間、蓋を開けたことで箱の中にいる黒い奴らが逃げ出す前に、俺は奴らを殺害することにした。
殺害方法は、蓋に開けた穴を無くし、それをもう一度箱を塞ぐように閉める。
そして、そのまま蓋を箱の底へと押し込んでいき、箱の中にいる黒い奴らを圧殺するだけである。
そして今、俺は黒い奴らを圧殺するために箱の底まで押し込んだ箱の蓋を取って、箱の中身を確認していた。
「……………………」
俺は黒い奴らのミンチっぷりに、何とも言えない気持ちになっていた。
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