第66話 もんどり
(もっと良い方法があるはずだ)
3週間続けていた離乳餌作戦の中止を決定した俺は、その作戦とは異なる、もっと効率の良い殺害のできる作戦があるはずだと考えた。
そして、俺は離乳餌作戦と同じように、罠を使う作戦にすることを結論付けた。
罠を使うといっても、その方法次第で、その結果や過程は千変万化する、それ故に俺は罠という作戦形態は変更しないことにした。
ただ、罠を使う作戦に決めたが、具体的な作戦は何も決まっていなかった。
なので、俺はとりあえず、この家を探索してみることにした。
両親は俺が歩けることをもちろん知っているし、俺が1歳半になったことで俺がいつも居る部屋の扉の取っ手に手が届く身長になったことも知っている。
なので、俺が部屋を勝手に出て、家の中を歩き回れないように、俺がいつも居る部屋の扉にはロックが掛けられている。
これでは、俺が部屋の外に出て、家の中を探索することはできないと思うかもしれない。
だが、両親が俺の傍にいる時だけは、家の中を歩くことを許可されている。
なので、俺はその時間を使って、家の中を探索することにした。
もちろん、この部屋の扉に掛かっているロックなど、能力を使えば簡単に開けることのできる簡易的なものでしかないから、能力を使って勝手に家の中を探索することもできる。
だが、それをしないのは……別にそれをする必要が無いし、それをしたことで発生するリスクを背負う気など一切無いからだ。
そして、俺は家の中を両親の監視付きで探索している時、1つの箱を発見した。
その箱は、大量の埃が積もっていることから、明らかに年単位で使われていないものであることが分かった。
それに、以前家の中を探索した時にも、その箱を見たことがあるが、今と変わらない位置と姿勢で置かれていたことを覚えている。
俺は両親が俺から目を離すタイミングを見計らって、その箱を両親から見つからない場所に隠した。
先ほど、能力を使って部屋の扉を開けて、勝手に家の中を探索する必要が無いと言ったのは、両親が俺から目を離すタイミングくらい、いくらでもある上、それを見計らうことくらい容易だからということである。
そして、俺はその箱を隠したまま1週間ほど放置し、1週間後に箱が変わらぬ姿で隠されていることを確認した。
俺はその箱が両親から全然使われていないことを確信し、それを罠として使うことを決めた。
その箱は、縦横がそれぞれ10センチメートル(cm)、高さが20センチメートル(cm)ほどの、蓋付きの箱であった。
俺はその箱を改造して、もんどり式の罠を作ることにした。
もんどり式とは、籠や箱に獲物が入れるような穴を作り、その穴の構造が外からは入れるが中からは出られないようにする、というものである。
もんどり式は罠の中では、代表的な仕組みの物になっている。
そして、俺はその箱をもんどり式の罠にするべく、まず箱の蓋に蓋の中心へと向かっていくような窪みを作る。
次に、その窪みの中心……つまり蓋の中心に蓋を貫通する穴を作る。
最後に、蓋の窪んでいる方とは反対の面から、先ほど貫通させた穴に布を取り付ける。
布の形は円柱状になっており、両端の円の部分に穴が開いていることで、布に一つの貫通した穴ができている構造であった。
さらに両方の穴の大きさは同じでは無く、片方は小さな穴になっていた。
そして、その小さな穴の方が垂れ下がっていた。
これで、もんどり式の罠の完成である。
蓋の窪んでいる方の面の穴から獲物が入り、反対側の面から穴を出ると、次は布の中を通り、最後は箱の中へと入る。
そして、もう一度出ようとしても布の穴は、木で作られた蓋の穴とは違って不定形であり、さらにその穴が入って来た方の穴より小さくなっていることから、外に出ることは容易では無くなる。
そんな仕組みになっていた。
そして、この罠を仕掛けるのであれば、外でなくてはならない。
家の中に置いたら、両親に見つかる可能性があるし、そもそも獲物が掛かりづらい。
俺はこの罠を外に設置することに決めた。
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