表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/149

第65話 静かに開けて、静かに歩こう

 ザッ……ザッ……ジャ




「はい、到着(とうちゃく)


 俺の(そば)を歩いていた村長がそう言うと、立ち止まった。


 俺はいつもの村長宅からの帰り道を歩き、今は両親の家の前に丁度(ちょうど)着いたところであった。


「ありがとう、またね」


「うん、ばいばーい」


 俺は村長に礼と別れを()げると、村長からの返事を背に受けつつ家の玄関へと向かっていった。


 …………


 そして、玄関に辿(たど)り着くと、その(とびら)を開けて中へと入った。


 今日の帰宅はいつもよりかなり早く……玄関に入る時に開いた扉からは音が(まった)くしていなかった。




 …………


「…………」


 俺は、扉の開閉音(かいへいおん)や自分の足音、服の衣擦(きぬず)れの音、あらゆる音を殺して玄関へと入ると……3歩目で立ち止まった。


 そして……


(1……2……3……)


 頭の中で数を(かぞ)え始めた。


(……8……9……10)


 そして、10秒を数え終えると、俺は体の向きを家の中ではなく、先ほど入ってきた玄関の扉の方向へと向き直した。


 …………


 そして、俺は玄関の扉を開けた。


(……よし)


 再度開いた扉の向こうの景色(けしき)では、既に村長がこの家から背を向けて歩き出していた。


 俺はその景色を確認すると……


 …………


 外へと足を踏み出した。


(村長の迅速果断(じんそくかだん)()りには礼を言わないとな)


 俺は踏み出した足を、村長宅へと向かう正面の畦道(あぜみち)……ではなくその反対、家の裏側へと向けて()を進めた。


 無断外出(むだんがいしゅつ)である。




 …………


 俺は自分の服と(くつ)を能力で動かすことで、歩いている、と見えるようにしている。


 そして、今回はそれに(くわ)えて、浮かす力を強めることで、地面には触れる程度の力しか掛けていないのにも関わらず、周りから歩いていると見えるように移動した。


 そして、その移動先は……


 家の裏側の外壁(がいへき)から3メートルほど離れた場所であった。


 そこは、家の(まわ)りで踏み固められたであろう固い土と、(たがや)すことで(やわ)らかくなった畑との境界(きょうかい)に位置する場所であった。


 さらに、この場所の周りには雑草や低木(ていぼく)などが()(しげ)っており、それらはこの場所を取り囲むような配置になっていた。


 俺は、草木(くさき)によって周囲からは見えづらくなっているこの場所の地面を見た。


 すると……


 モシッ……モシモシ……


 地面に亀裂(きれつ)が生まれた。


 モシモシモシッ……ボッ、ボボボッ……ボモッ!


 さらにその亀裂は広く大きくなり、最終的に地面を割った。


 そして……


 フワッ


 割れた地面から、1枚の木の板が飛び出してきた。


 飛び出してきた板は、その形が少し……いや、かなり変だった。


 木の板には、その中央に向かうように(しず)(くぼ)みがあり、その窪みの終着点……つまり板の中心には1つの穴が開いていた。


 さらに、木の板の今見ている面とは反対の面を見ると、こちらには先ほどの面から空いた穴が貫通してできた穴があるのが見て取れる上、その穴から()れ下がるように布が付いていた。


 その布は、長さが5センチメートル(cm)ほどで、両側に穴が開いた円柱状(えんちゅうじょう)の形であった。


 布の片方の穴は木の板の穴に()まるようにして木の板に付いており、もう片方の穴は自由に垂れさがっていた。


「…………」


 俺は木の板に一瞥(いちべつ)だけくれると、木の板が埋まっていた土を見た。


 そこには、穴があった。


 その穴は縦横たてよこがそれぞれ10センチメートル(cm)ほどの四角形で、底までの奥行(おくゆ)きが20センチメートル(cm)ほどであった。


 そして、穴に関する情報の中で最も目立(めだ)つのが……


 ウネウネウネ……

 ガサガサッ……

 カサカサカサカサ……

 ウネッ……カサッ……

 ガサガッ……ウネネネ……

 カサッ……

 ガササッ……

 ウネウネッ……ウネウネッ……

 ガササササッ……

 ウネネッ……カササッ……

 カササッ……カサカサカサカサ……

 カサッ……ウネウネウネッ……

 ガサガサ……


 大小(ふく)めた黒い奴が十数匹も入っていることであった。


「…………」


 俺は穴の中身を確認すると……


 カッ……バキッ!ギキキキ……


 すぐさま、先ほど能力で浮かせた木の板を、穴が(ふさ)がっている状態の、縦横10センチメートル(cm)ほどの四角形の形に変形させた。


 そして、木の板の変形が完了したことを確認すると、俺は先ほどまでその木の板が()まっていた場所……地面に空いている穴を(ふさ)ぐように動かした。


 キッ…………


 木の板がピッタリと地面に()まるのを確認した俺は……


 ギキキキキキキ…………


 木の板を穴の底まで一気に押し込んだ。


 ギャジャジャジャビビジジビジッ…………


 押し込んでいる途中で、穴の中から、色々な音が混じり合った音が聞こえてきた。


 ……………


 しかし、木の板を穴の底まで辿(たど)り着かせると、何も聞こえなくなった。


 何も聞こえなくなったのも(つか)の間……


 モモモッボボボボボ……


 穴の部分の土が盛り上がり……


 ……ボゴッ!


 穴から……(いな)、"穴"が飛び出してきた。


 穴の正体は縦横がそれぞれ10センチメートル(cm)、高さが20センチメートル(cm)の……




 木の箱であった。

「面白かった!」


「続きが気になる!」


「この作品を応援している!」


と思ったら


下にある【☆☆☆☆☆】から作品への応援をしていただけるとうれしいです!


あなたのお好きな☆の数で大丈夫です!


ブックマークもいただけると幸いです。


よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ